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殺された女伯爵が再び全てを取り戻すまでの話。  作者: 吉井あん
第5章 失われ、再び全てを取り戻す。
85/102

85話 二人にとって必要なことだった。

あっさり通常運行です!

「例えひとつ屋根の下で暮らしているとしても! 結婚を誓った仲だとしても! 節度はもたねばなりません!!」



 ビカリオ夫人が腰に手を当て声を荒げる。



「驚きました。朝の支度に伺ったのに部屋はもぬけの殻。どこに行かれたのか、とても心配したのですよ。それが子爵様の部屋から出ていらっしゃるなんて……。悪い噂でも立ったらどうなさるおつもりですか。そもそも……」



 お小言が続く。

 くどくどと終わる気配は微塵もない。


 私は項垂れてただ静かにやり過ごした。

 母代わりで育ててきてくれた夫人のことだ。実の娘のことと思ってくれてのことだろう。



(もしもお母様が生きていたら、こんな感じなのかしら)



 エリアナとフェリシア。

 両者とも身内ーー母親ーーには恵まれない。


 幼くして母を亡くし、乳母や侍女に育てられてきた。母の愛情など、よくわからない。

 ちょっぴりうざったいと思うのは一般的なことなのだろうか。


 どっちにしろビカリオ夫人の金切り声は勘弁してほしい。



「もうわかったから。私が悪かったわ。ビカリオ夫人。そこまでにしてくれる?」



 私はこめかみを押さえた。




 あの後。


 目覚めるともう日は昇っていた。

 夜明け前に自室に戻るつもりが、うっかり寝過ごしてしまったのだ。


 穏やかに寝息を立てるレオンを残し、慌てて部屋を出たところ、私を探していたビカリオ夫人と廊下で鉢合わせしてしまった。


 それからずっとこの調子だ。



「夫人。私はレオンといずれ結婚するのよ。おかしなことではないわ。それにサグント家内でのことが外に漏れるわけないでしょう。噂なんて立ちようがないわよ」


「フェリシア様は甘いですよ。人の口に戸は立てられません。どこからか漏れるかもしれませんよ。そもそも結婚前の若い娘が夜這いなんぞするのが間違っているのです」


「ちょっと夜這いって……。他の言い方があるでしょう?」


「さぁ存じません。それ以外にあるのなら教えていただきたいです」



 確かに。

 見方を変えれば深夜に男の部屋に押しかけて関係を持ったことには間違いない。

 ビカリオ夫人は正しい。



(でも絶対に必要なことだったもの)



 思い切ったことをしたとは思う。が、後悔はしていない。

 二人の関係を固めるために、お互いの楔とするために必要だったのだ。


 ……と格好つけてみるものの、心の中では今まで知らなかった喜びで満ちていた。


 レオンのことを深く愛おしく感じる。こんなこと初めてだ。



「レオンが本当に好きだったから、そうしただけよ。ビカリオ夫人だけには理解してほしいわ」


「フェリシア様が子爵様を思われる気持ちは、知っております。本物だと思っておりますよ。ただ肉欲は我慢せねばなりません。淑女としては失格です」


「淑女ね……」



 清く正しく貞淑。品格がある女性……。

 私は当てはまるのか?



(違う)



 私には品格などない。

 人を陥れて喜び、身内の死刑を望む人間だ。

 レオンに身を委ねる前から、人としては下人だ。



「さぁ、お説教はここまでにしましょう。いい加減、朝食を召し上がっていただかないといけませんからね」



 ビカリオ夫人は明るい口調でカートに掛けている布をまくり、暖かいスープと白パンをトレイに乗せて私の目の前に置いた。


 昨夜の疲れもあり、あまり食欲は無い。

 だが、ビカリオ夫人の手前、食べないわけにもいかず、スープとパンを交互に口に運び無理やり流し込んだ。



「フェリシア様、入浴の準備もできておりますよ。今日は午餐会の予定がございますので、支度は念入りにしないといけませんからね。お急ぎくださいね」


「午餐会?」



 私は食事の手を止める。



「聞いてないわ。招待状なんていつ届いていたの?」

「それが今朝、朝一番に使いが来たのです」



 午餐会やティーパーティの招待は三日前までに申し込むのがマナーだ。

 当日になっての誘いは非常識だと忌避されるのだが……。



「それ、断れない? 今日はパーティって気分じゃないの」



 全身を包む疲労と倦怠感。合わせて身体中も軋む。

 できればゆっくり休んでいたい。



「断れるお相手ではございませんよ」


 ビカリオ夫人は給仕をしながら、ため息をつく。

 ビカリオ夫人にとっても気楽な相手からではないようだ。

 となればサグント侯爵からか、もしくは……。



「午餐会の主催は王妃様でございます。国王様もご都合がつけば出席されるそうですよ」

「なんてこと……」



 これは這ってでもいかないといけない催しだ。欠席は許されない。

 昼間からヘビーなパーティになりそうだ。



「ゲスト、他にいるでしょう? 誰か聞いていない?」

「サグント侯爵夫妻とルーゴ伯爵と聞いております」



(なんてメンバー。もうこれ午餐会じゃないわね)



 ーー尋問だ。



 おそらく……いやヨレンテ相続とレオンとの婚約についてを突き詰めるため、だ。

 それしか無いじゃないか。

 鳩尾がぎりぎりと音を立てる。



「招待されたのは私だけなの?」

「いいえ。アンドーラ子爵もと伺っておりますよ」

「レオンも……」



 伸るか反るか。

 勝負が決まる。

読んでいただきありがとうございます。


今回書く上でどうしようかと悩んだシーンがありました

前回からの流れで、まぁぶっちゃけるとベッドシーンのことです。

物語上ではそのシーンですが、実際に描くのはどうだろうと……。

悩んだ末にベッドシーンはなし&場面転換ということにしました。


『婚約を破棄された悪役〜』のお話でもR18でしょう??と言われたくらいですので、明らかなのは避けたほうがいいのかなと。


この作品は色々なサイトに転載しているので、官能シーンが許容されるサイトには、いつか書いて載せたいなと思っています。

※こっそり別サイトに書きましたw(2022.8.2追記)



次回もお会いしましょう!!

では!

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんばんは。 愛し合ってる二人なんだから、遅かれ早かれ『そういう関係』にもなりますよね···むしろ今回はおめでとうございます? でも周りの目を気にしなさいという夫人の忠告も最もですよね、…
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