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どうしようもないほどに。

最終話となります!

実はアップするの忘れていました。


 夫と侍女の板挟み?


 冗談じゃない。

 ビカリオ夫人もそうだが、レオンも大概子供っぽすぎる。



 私はビカリオ夫人と侍女が着替えの準備を終わらせたのを見届けて、全員部屋から追いやった。

 これでレオンと二人きりだ。



(毎回朝を迎えるたびに、ビカリオ夫人と騒動が起こるのは勘弁して欲しいもの)



 使用人に対して主人が気を使うなんてことは天地がひっくり返るようなものだ。

 ただ、ビカリオ夫人は私の側近。マンティーノスにいる以上、手元に置いておきたい人材だ。大切な人同士の諍いは見たくない。



「あれ、フィリィ。どうした?」



 レオンが私の機嫌を取るように後ろから抱き締めた。

 耳元で聞こえる低く甘い声に、下腹部が疼く。



「……レオン。ビカリオ夫人に対してもう少し寛容になれない? 彼女は大切な使用人なの。朝からあんな態度取るなんて、あなたらしくないわ」


「色々言われて癪に触ったんだ。ただね」



 ビカリオ夫人を庇うなんて妬けるよねとレオンは口を尖らせた。



「ビカリオ夫人の言い方だとさ、まるで僕が背徳者のようじゃないか。マンティーノスに来てからは、ほとんどの夜はきみと過ごしているけど別に強いているわけじゃないだろ?」



 そう。最初からそうだ。

 レオンは無理強いをすることはなかった。

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(こういうところ、ずるいよね。ほんと……)



 経験値の差なのか、レオンに上手くあしらわれている。

 私の自由にさせているようで思うがままに操るのだ。レオンはそういう男だ。


 私は息を吐きレオンの腕を払った。



「嫌なら嫌だって言ってるわ。……レオンだって分かってるでしょ」

「……まぁね」

「あなたのことは愛してるし、誰よりも優先してる。だからあなたにも私の大切なものを慈しんでほしいの」

「きみが望むなら努力するよ」

「ありがとう」



 さぁ話はここまで。

 そろそろ支度をしなくては。

 ビカリオ夫人が朝食を持って来るまでに着替えだけでも済ませておかないと、またお小言を喰らうことになる。



「それより着替え手伝って。侍女を呼んでないから、コルセットが止められないの」



 脱がすのは得意なんだけどなとぼやきながらも、レオンは慣れた手つきでコルセットの紐を閉めていく。

 教えてもないのに出来るのは、まぁそういうことなんだろう。

 複雑だ。



「きみにはコルセットなんて必要ないんじゃないか? 十分細いよ」


「何言ってるの? フェリシアからウェステ女伯になるためには必要なのよ。う……レオン、ちょっと締めすぎ……」


「あぁごめん」



 コルセットも化粧も自分を支えるためのアイテムだ。

 見た目も武器になるのならば、全力で磨かねばならない。


 そんな意を汲んでビカリオ夫人の用意してくれたドレスは私好みの飾り気の少ない落ち着いたデザインだ。

 シンプルなデイドレスはきちんとした姿勢と体格であってこそ映える。

 窮屈なコルセットも我慢し甲斐があるというものだ。



「レオン、私ずっとね」

「ん?」



 一瞬動きを止め、私を見つめる。



「レオンに謝らなきゃいけないって思ってたことがあるの」



「僕に?」と訊き返しながらレオンは夜着を脱ぎ捨てシャツに腕を通した。



 今日のシャツもまたレオンの体格にピッタリと合い仕立ての良さが際立つ。作り込まなくともここまでスタイルがいいとは、羨ましい限りだ。


 私はレオンの正面に立ち、首元のボタンをかけた。



「マンティーノスの為にあなたの鉱山を手放すことになったでしょう? 鉱業ってサグントの基幹産業じゃない。申し訳なくて……」



 私が我が子を王家に引き渡すことを拒否したせいで、サグント侯爵家は資産を失った。

 侯爵家いやレオンが言うには個人資産だというが、どっちにしろ負った損失はかなりの額になっている。



「今更、王家に譲った鉱山のこと? なんて事ないよ。気にしなくていい」

「気にしなくていいって??」



 喉が乾いたとサイドテーブルの水差しから水をグラスに注ぎレオンは一気に飲み干した。



「確かに手放したけどね。僕は損はしてない」

「損してない??! そんな。鉱山よ?」



 技術の発展は著しい。

 特に最近は新しい技術が日々生まれている。

 技術の革新は新しい産業を産む。鉄鉱石は最重要な資材であり鉄鉱石の採れる鉱山は金のなる木だ。


 レオンは意味深な笑みを口元に浮かべる。



「これ、極秘だけどさ。あそこ、ここ数年採掘量が落ちて来ててね。専門家によれば十年以内で枯れてしまうんじゃないかって言われているんだ。新たな鉱脈もあるにはあるんだろうけど、既存の鉱山開発には膨大な費用がかかるしさ。さすがの僕でも手に余るんでね。近いうちに売ろうと思ってた」


「ええ?? ちょっと待て。それって……」



 私は声を失い、口元を両手で覆う。


 王家に不良物件を押し付けた。

 言い方を変えれば、詐欺を働いたということだ。

 バレれば大罪になるだろうが……。



(政財界の重鎮サグントに逆らう者などこの国にはいないでしょうね)



 レオンは肩をすくめる。



「タダほど高いものはないってことさ。まぁ後数年は普通に採掘できるし、完全な嘘でもない。陛下もその程度のリスクは覚悟なさっているはずだ。それにもう正式に譲渡された。何があっても後の祭りだ」


「……ほんと抜け目ないのね」


「ひどいな、きみの愛しの夫君(パートナー)に向かって。商売上手って言ってくれないかな?」


「全く、あなたって」



 ーーーー最高だ。



 レオンは商売人としてずる賢い、いや、外道だ。そんなところも嫌いじゃないなんて。


 嫌いじゃない?

 いや違う。


 どうしようもないほどに好きなのだ。

 手のひらで踊らされていたとしても構わない。



(私もどうかしているわ……)

読んでいただきありがとうございます。

久しぶりすぎる更新です。


何故かアップするのを忘れておりまして、数ヶ月ぶりの更新と完結となります。


このお話、個人的にとても好きです。

書いてて苦しい事は一つもなくて、楽しいだけでした。

理不尽なざまぁもひどい悪役もいなくて、甘いヒーローがいるw

私、スパダリ溺愛ヒーローが好きなんですよ。

またそんなヒーローが出てくるお話書きたいです。


感想、評価、いいね、ありがとうございます。

とても励みにさせていただきました。


ではまた次回お会いしましょう。

皆様に多謝を。


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