甘い朝?
外伝です!
時期的にフェリシア(エリアナ)がマンティーノスに戻って二ヶ月後。
暦でいうと1月くらいのお話です。
ただただ甘くほのぼのしたお話だと思います。
「部屋がお寒い? エレーラよりも随分暖かいですよ」
ビカリオ夫人が暖炉に薪をくべながらぼやく。
マンティーノスへ帰還し早や二ヶ月。
温暖なこの地も本格的な冬を迎えていた。
フェリシアの故郷エレーラよりは南にある分、暖かいがそれでも冬は冬だ。朝晩は冷え込んでしまう。
今朝も寒さで目が覚めてしまった。
私はゆっくりと体を起こし、両手で腕をさする。
「エレーラよりは暖かいけど……。体がマンティーノスに慣れてしまったのよ。ねぇ、ビカリオ夫人。お茶淹れてもらえる? ちょっと熱めで生姜とシナモンも入れてほしい」
「生姜とシナモン? 風邪でも引かれましたか?」
「うん、そうかも。最近ずっと体がだるいの」
「それはいけませんね。結婚式まで日にちもありませんし、体調は整えておきませんと。……かしこまりました。朝食と一緒にお持ちします」
ビカリオ夫人はフェルトのガウンを私に着せ、
「フェリシア様、無理をなさり過ぎなのではないですか? 朝から夜まではマンティーノスの復興に尽力されて、夜は夜で子爵様のお相手をなさっておられて……。いくらお若いと言っても体に負担がかかりすぎです」
「ちょっと……夫人……」
思わず赤面する。
暗にレオンとの関係を揶揄されているのだから。
悔しいことにビカリオ夫人の言うことは間違ってはいない。
マンティーノスに戻ってきてから、夜はレオンと過ごしている。
式こそ挙げていないだけで、ほぼ夫婦とかわらない生活だ。これは館に勤める者は皆知っていることだった。
まぁそれはいい。
事実なのだ。
だけど。
(もう、あからさますぎるのよ……)
朝一番に部屋で聞きたい言葉ではなかった。
ビカリオ夫人はフェリシアの不遇時代から唯一仕えてくれている。
親代わりと言っていい存在ではある。
ただ、私がウェステ女伯になってからは遠慮というものをしなくなっていた。
マンティーノスの使用人たちと交わるうちに、田舎の人間に感化されて図々しくなったというのか……。なんというか。心強い味方ではあるのだけど。
親しい仲でも度をすぎることもあるのだ。
さすがに嗜めないとと口を開きかけた時、私の隣でもそりと山が動いた。
「はぁ。聞き捨てならないね。僕がフェリシアに無茶をさせてるって?」
気だるそうにレオンが身をおこす。
夜着の前身がはだけ胸元が丸見えだ。
上流階級になれば夜会や付き合いで怠惰な体つきになってしまう男性も多い中で、無駄な脂肪のない胸元はすごく魅惑的ーーーーだが、ビカリオ夫人にすればみっともないだけらしい。
不快そうに眉を歪め顔を背ける。
「これは子爵様。まだいらっしゃったのですか。日が昇る前に自室へ戻られるのが紳士だというものだと思っておりましたが、私の認識は時代遅れとなってしまったのでしょうか」
「僕を誰だと思っているんだ? ビカリオ夫人。この館の主人はフェリシアと僕だ。僕たちが是と言えばそれが正しいんだよ」
ビカリオ夫人の嫌味にもレオンは負けていない。
レオンは体を捻り、見せつけるように私の唇にキスをする。
「フェリシアの隣は暖かくてね。離れられない。わかるだろう? 彼女は僕の全てだ。愛おしい人とは1秒でも長く過ごしたいと思うのが間違っているとは思わないな」
甘い。朝から甘い。
嬉しいことは嬉しい。
でも。
なんなのだ、この茶番。
(一体、何と勝負してるの……この二人は……)




