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殺された女伯爵が再び全てを取り戻すまでの話。  作者: 吉井あん
第5章 失われ、再び全てを取り戻す。
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100話 第八代ウェステ女伯爵フェリシア・セラノ・ヨレンテ。

「伯爵様のご帰還だ! 皆の者、迎えよ!! 伯爵様のご帰還だ!!」



 到着を告げる御者の声が暁の空に響く。


 夜を徹し進み十日。

 ひどく冷える早朝にマンティーノスの館へ到着した。


 当初の予定とは異なり、二日遅れての出発、そして荷馬車を二十台近く引き連れての帰還となっていた。



(仰々しいことね)



 出発が遅くなった分、最小限の休息だけの強行軍でマンティーノスに向かったために、身体中が軋む。


 私は寒さに手を擦り合わせながら、馬車を降りた。



 昇り始めた朝日を浴びてオークの古木が凍える空気の中で威風堂々と佇んでいる。

 いつも見る、いつも見ていた光景がそこにあった。


 私は目を細める。

 まるで主人(わたし)の帰還を祝っているかのように感じる。


 私は大きく息を吸った。

 冷え切った空気が体に染み込む。温められた体が一気に冷め、実感が湧いてきた。


 この瞬間、この喜びの為に、ここまできたのだ。

 苦労などなんともない。



 ーーーー戻ってきた! マンティーノスに!!



「やっと帰ってこれたわ」



 懐かしい我が家に!

 エリアナが殺されてわずか数ヶ月しか経っていない。というのに、もう何年も過ぎたかのようだ。



(長かった。本当に長かったわ)



 神の奇跡に縋ってまでに戻ってきた場所だ。

 私の生きている理由、いや生かされている理由が果たされようとしている……。



「わぁ。外は結構寒いね」



 能天気な声とともにレオンが馬車を降りてきた。

 この人はどこでも変わらないらしい。呆れるが、不思議と安心する。



「温暖だけどマンティーノスも冬だもの。でもこの寒さが大切なのよ。寒気は土地を肥やすって言われてるの」

「へぇ。農業は温暖なだけじゃダメなのか。知らなかったな。それより」



 風邪を引いちゃいけないからね、とレオンが私の後ろからケープを肩にかけた。



「もうきみはきみだけのものじゃないんだからね。マンティーノスのために体は大事にしないとね」

「……確かにそうね。ありがとう」

「あと僕のためにもね」

「あなたのため?」

「ひどいなぁ。僕はきみの夫だよ? 夫婦なんだからさ、健康は何よりも大事だろ?」

「……結婚式は挙げていないんだから、まだ夫婦じゃないわ」



 顔を背けながら私はケープを体に巻きつけた。




 結局。


 騎馬でマンティーノスへ向かうことは警備上難しく断念せざるをえなかった(というか、レオンもサグント家も許さなかった!)


「過酷な行程を身分のある女性が騎馬でなんて許されることじゃない。行くのなら出来るだけ支援できるように整えた方がいい」という尤もな理由を突きつけられ、私は頭を縦に振るしかなかったのだ。


 悔しいことに支援者を切り捨てることができるほどに私も強くはなかった……。


 押し切られる形での帰郷となってしまい、……迅速に領民に寄り添いたい……そんな思いに反した大人数に、最初は納得がいかずに戸惑うばかりだった。


 旅の最中でさえも大袈裟すぎるとレオンに抗議するも、レオンは「ちょうどいいくらいだよ。費用対効果は最高だ」と軽くあしらわれて終わりだったのだ……。



 けれど。

 実際にこの場に立ってみるとこれはこれで正解だったようだ。



「領主様!!!!」

「ウェステ女伯爵様!!!!」

「おかえりなさいませ!!!!」



 御者の呼び声に、館に待機していたのであろう使用人たちが、この明け方にあらゆる場所から駆け寄ってきたのだから!


 あっという間に私とレオンは使用人たちに取り囲まれた。

 彼らの顔には笑顔が溢れ、私に対する思慕と期待に溢れている。


「僕の言った通りでしょ?」とレオンが顔を寄せ小声で言う。


 レオンの推論によれば……。


 溢れんばかりの食品や資材を荷台に積み、胴体に大きくヨレンテ家とサグント家の紋章の記された荷馬車が街道を行く姿は、災害に見舞われた領民にとっては衝撃を与える。


 瞬く間に人口に膾炙し、マンティーノスの領都に着く頃にはフェリシアは英雄となっているはずだ。


 多少出立が遅れたとしても、『ヨレンテの真の継承者がオヴィリオの悪政を覆し、新しい時代が来た!!』とアピールする方が今後のためになる。



(レオンの言った通りだわ。悔しいけど)



 正直レオンの思惑通りに進むのは癪に触る。

 だが、これはエリアナとフェリシア()の経験の差からくるものだ。


(経験は積めばいい。時間はたっぷりあるんだから)




「領主様。お待ちしておりました」



 使用人たちを掻き分けて、見覚えのある中年男性が駆け寄り私の足元に跪いた。


 エリアナが健在の頃からヨレンテに仕えてくれていた執事だ。

 オヴィリオの暴政にも耐え、そして私がヨレンテの主人となるまで辛抱強く現場を支えてくれた恩人でもある。


 私は執事の手を取り立たせると、



「苦労させたわね。今までマンティーノスを守ってくれてありがとう」


「……いいえ。とんでもございません。フェリシア様。長らく、本当に長い間お待ちしておりました。正当なヨレンテの主人が戻ってこられるのを、住民共々お待ちしておりました」



 ほろりほろりと執事の瞳から涙がこぼれる。

 周りからも鼻を啜る音が聞こえる。


 民は待ち望んでくれていたのだ。

 私がウェステ伯爵となりマンティーノスに戻ってくることを。


 胸が熱くなる。


 でも。


 感慨に浸るのはもう少し後だ。今は見なければならない現実がある。

 私はレオンの腕を取り、執事に、いや私を取り囲むマンティーノスの住民に笑顔を向けた。



「さぁ、館に案内してちょうだい。朝食を食べながらこれまでの報告を聞かせてくれる?」




 戻ってきた。

 エリアナ・ヨレンテは第八代ウェステ女伯爵フェリシア・セラノ・ヨレンテとして。

 全てを取り戻し、そして再び作り上げるために。



 このマンティーノスに。

読んでいただきありがとうございます!

100話です!!

そして終話です。


取り戻すまでのお話なので、一応ここまでなのですが、エリアナとレオンのラブラブなのが書きたい熱がたくさんあったりします。

そしてこのお話も描き直したい熱も……。


時間をみて修正していこうと思います。

とりあえず一度完結させたいなと!!


これまで読んでくださりありがとうございます!!!!

ブックマーク・評価・いいね!本当に嬉しかったです。

みなさま、大感謝です!!!!!


では次回もまたお会いしましょう!!!!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 後日談とか、閑話とか、読みたいです。
[良い点] 本編ラスト更新お疲れ様です。 此処まで紆余曲折···いやその言葉だけでフェリシア(エリアナ)とレオンを取り巻いていたモノを語るにはちょっと足りない感じですが、それでも最後はきちんとハッピ…
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