3、オタクと部活動
「ねえ、あの子でしょ?今度の藤森くんの彼女って」
「本当にあの子?今までと違って顔が普通じゃない?」
「あの子、オタクって噂なかった?」
廊下を歩いていると、注目されていると思ったけど、噂広まるの早いな。
まだ付き合って(仮)で1週間目なんだけどな。
まあ、噂広めるべく毎日藤森とお昼一緒だけどね。
彼女の容姿は普通、しかもオタクだし、すぐに別れるだろうってまわりにも思われているようだ。
次は私とか、私の方がかわいいでしょって感じで藤森への告白は減らないようだ。
結局、私は彼女の役目を果たしているとは言えないと思っているけど、藤森からまだ別れようの言葉はない。
飽きるまでっていつまでなのか、本当に喬様のアクリルスタンドは返ってくるのかそれだけは心配だけど、まあ人間って慣れる生き物なんだろう。
藤森の顔も直視出来るようになってきたし、ぎこちなかった会話も最近は普通だ。
それは、私が藤森を意識しなくなったからだろう。
気を使うのに疲れてたし、たまにムカつくしで、話し方も最近は雑になっている。
呼ぶのも、今では藤森だ。
藤森くんなんて、くんづけは止めた。
仕方なく今日も藤森とお弁当を持って屋上へ行く。
今日は珍しく藤森は男子の5人の輪になっている方に向かった。
「みんな来てるな」
「ああ」
「この子が例の」
「意外と普通だな」
私の目の前で意味不明な会話が繰り広げられていた。
・・・例のって何?
集まっている男子をよく見ると、イケメンばかりだ。
よく見るとみんなキラキラしてる。
イケメンの友達がイケメンって最高に萌えるな。
現実の男子には興味ないけど、眼福だ。
よく見ると、同じクラスの宇野克雅くんもいた。
宇野くんとは1、2年と2年間も同じクラスだ。
宇野くんは私みたいな女子にも優しく、誰にでも気軽に笑顔で話す。
藤森のまわりに笑い声絶えないのは、宇野くんのせいもあると思う。
「古河、藤森と付き合って苦労してない?」
「めっちゃしてる。すぐにでも別れたい」
「いじめとかは大丈夫?」
「まあ、藤森が今まで彼女コロコロ変えてるせいか、すぐに別れるだろうと思っているせいかよく言われてるいじめはないかも。ってか、誰?この人達?」
「・・・俺達のこと知らない?結構有名だと思うんだけど」
イケメン集団の1人が話かけてきたけど、有名って何で?
・・・かっこいいから・・・か・・・?
「宇野くん以外知らないけど。人の噂とか、現実の人に興味ないし」
「俺達、サッカー部なんだ」
藤森が説明してくれたけど、
「ふーん」
興味ないから、適当に返事を返した。
「いいな」
「面白い」
「安全、安心って感じ」
安全安心って何が?
「・・・さっきから何?人のことジロジロ見て、観察されるの気持ち悪いし、さっきからの意味不明な会話気分悪い」
少しの沈黙の後、藤森が口を開いた。
「古河って帰宅部だよな?サッカー好きだよな?サッカー漫画見てるもんな。ってことで、サッカー部のマネージャーやれ」
確かに、やりたいこと沢山あるから帰宅部だけど。
「・・・漫画が好きなだけで、サッカー好きとは違うよ。しかもマネージャー?無理だよ、やりたいこと沢山あるのに」
「ってか、もう入部届出したから、今日からよろしくな」
「はっ?何勝手に出してるの?!おかしいでしょ?!私今日は蒼イレのアニメの日だから早く帰りたいんだけど」
「どうせ、録画してるんだろ?」
「当たり前じゃん。でも生でも見たいんだよ」
「もし今日帰ったら、例のアクリルスタンド半分に割るから」
世界にたった3つの喬様のアクリルスタンドを半分に割る???
「鬼!悪魔!!正気かお前!!・・・って、何で私がマネージャー?!そんだけイケメンばかりなら、他にもやりたい女子沢山いるでしょ?」
「マネージャーをやりたい女子が沢山いるのは事実なんだけど、ここ1年で20人ぐらいは変わって辞めてるんだよね」
「・・・20人ぐらいって、おかしいでしょ。サッカー部がブラックなんじゃない?」
「いや、言いづらいんだけど、藤森や俺達目的で入部して仕事しなかったり、ちやほやされたくてマネージャーしても相手しないとなんか違うと辞めたり、恋愛でゴタゴタして辞めたり、朝練辛いからって辞めたり」
「・・・いや、だから私もしたくないんだけど」
朝練とか私も嫌だよ。
早起きとか苦手だし。
「でも、古河なら安心だよな。まず俺達に興味ないから恋愛のゴタゴタはないだろ?」
「・・・そんなのわからないじゃん」
「勘違いするなよ。もう決定事項だから。放課後よろしくな」
・・・私の意思は聞き入れられそうにないみたいだ 。
行きたくはないけど、喬様のアクリルスタンドを半分にされるのは絶対嫌だから、仕方ないから行くけど。
ふと宇野くん達を見ると、可哀想にって顔で私を見ていた。
・・・誰か助けろよ。
やっぱり、イケメンは嫌いだ。




