10、まさかの
小田切護くん。
サッカー部副部長。
成績は常に上位ベスト3位までにはいる。
私は学年上位の成績表が貼り出されても見たことはなかったけど、前回のテストは2位だったようだ。
サッカー部だけでなく、生徒会役員補佐までしているらしい。
観察したけど友達多いし、みんなに頼られていて、いかにも陽キャって感じで私とは正反対だなと思った。
「ふーん、今日もいるんだ」
小田桐くんが朝練に来ている私を見て声を掛けてきた。
相手にしたら負けのような気がして私が無言で抵抗するも、構ってくる。
生徒会もやっているから、練習はたまにしかいないけど、今日は生徒会関係の仕事はないらしい。
意地悪なことを言ってくるから、最近は心の中で小田切くんのことを心の中で小姑と呼んでいた。
私のことが嫌いなのはわかるけど、嫌いなら構わなければいいのに。
朝から藤森と廉くんは毎日のように家に来るし、さぼることは出来ない。
最近は二人と母の仲は深まり、朝からリビングで笑い声まで聞こえる。
母は毎日癒やされると、生き生きしている。
私の知らないうちに周りを固められているようで、いい気はしない。
仮にケンカしたとしても、母は実の娘より藤森達の味方をしそうだ。
母の前での藤森の猫かぶりは私も驚くほど、爽やかで好青年だ。
確かに私も藤森とつきあう前はそんな印象だった。
私とつきあってから、何故か私には毒吐くし、冷たいし、命令するしで何様なんだろうって思ったし。
廉くんも女嫌いだが、同世代から年がある程度離れていれば大丈夫みたいだ。
同学年の女子みたいにギラギラしていないからって理由らしい。
確かに私のお母さんからみたら、息子みたいな年齢だし、実際そんな目で見るわけがないけど。
次の授業の移動時間、廊下を歩いていると、小田切くんと目があった。
___が、慌てて目を逸らされた。
同じ部活だし挨拶ぐらいしようかなと思ったけど、諦めたのだった。
やっぱり私は小田切くんに嫌われているようだ。
仲良くするのは諦めよう、無理に話すことはないって思っていたんだけど、
部活になると話しかけてくるのだ。
「もっとうまくボール磨けないの?」
本当に、何だろうこの二面性。
やっぱり姑みたいだと心の中で毒づいた。
だけど言われるだけなのは腹が立つから
「文句あるなら、自分でやってよ」って言いかえした。
すると小田切くんは見本見せてやると、私の隣に座ってボールを磨き始めた。
意地悪なことをいうわりには、今みたいに優しいこともあって、小田切くんのキャラが掴めないでいた。
会話もなく二人で黙々と磨き続け、。沈黙が続いた。
私は社交的ではないから、会話しようとも思わなかった。
会話のスキルもないし。
だけど小田切くんが沈黙が嫌なのか、
「なにか話してよ」といってきた。
こういう言い方ってずるいと思う。
会話スキルゼロの私に委ねようとするなんて。
「なにか。はい、言ったよ」
「・・・古河さんって、俺のこと嫌い?」
「好きではないかな。意地悪なこと言うし、学校では無視されるし。まあ小田切くんも私のこと嫌いでしょう。だから、お互い様ってことで」
嫌いって即答したいところだったが、直接的な言い方は避けた。
まあ、意味は同じだけど。
私はMではない。好きになれる要素があるわけない。
「・・・俺は古河さんのこと嫌いじゃない」
???
嫌いじゃない=(イコール)好きでもないけど、普通ってことかな?
「じゃあ、なんで意地悪なこと言うの?」
「・・・それは、俺のこと見てほしいっていうか気にしてほしいっていうか・・・。だって、古河さんの周りには藤森に宇野、五十嵐が常にいるし」
「・・・それってかまってほしいみたいな???友達になりたいってこと?」
「ちがっっっ、いや、ちっ、違わないけど。やっぱり違うから」
顔を赤らめ、と去っていった。
いやいや、どっち?と心の中で突っ込みながら、普段まじめでクールなかんじなのに、可愛いところもあるんだ。
これがギャップ萌ってやつかな?
リアルギャップ萌って心に急にくるせいか、ギュンとくるんだな思った。
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放課後、マネージャーの仕事で顧問の先生と打ち合わせ後、職員室から出て歩いていると、生徒会メンバーと歩く小田切くんがいた。
どうせ無視されるだろうしと歩き出すと正面から、女子が「小田切くん」と叫びながらこちらに来るのが見えた。
「鍵落としたでしょう?かわいいキーホルダーついていたから覚えてたんだ。この猫かわいいよね。何処で買ったの?私も欲しいなって思って、おそろいにしたいかなみたいな」
さりげなくおそろいにしたいアピール。
積極的な女子って凄い。
私そんなにぐいぐいいけないし。
小田切くんのまたかわいい一面がきたなと、猫のキーホルダーを見た。
「いとこがお土産に買ってきたやつだから詳しくわからないんだ。ごめんね」
さりげなく謝る小田切くんに、私は目が点になり、思わずにやけてしまった。
あの猫は一見普通のかわいい猫に見えるけど、某美少女系アニメの猫だ。
オタクだから私にはわかる。
ふと、藤森の言葉がよぎる。
『たぶん小田切は古河と同類だ』
もしかして、同類ってまさかのオタク趣味の方?
まだ信じられないでいるけど、仲間なのかと思ったら、にやにやが止まらなかった。
小田切くんはそんな私を見てひきつった笑顔で私を見た。




