1、さよなら、平穏な日常
ご覧になって頂きありがとうございます。
この話は中編ぐらいで考えてます。
タイトル通り彼氏は話が進むと増えていく予定です。
「ねぇ、昨日の蒼イレ見た?」
「うん、やっぱりあの展開熱かったよね」
「それに、あの声いつ聞いても最高」
蒼メモとは、昨日テレビで放送していたサッカーアニメだ。ちなみに正式名称は蒼のイレブンだ。
私が今1番はまっているアニメだ。
原作漫画も勿論全部持っているし、Blu-rayも予約済だ。
私の名前は古河あかり。
上記の会話からもお察しのとおり、いわゆるオタクである。アニメ、ゲーム、漫画色々好きなものは多い。
いつも友達との会話はこんな感じだけど、私は運がよかった。高校に入って同じ趣味の友達が出来た。
中学の時は同じ趣味の友達が居なくて、浮いていていつも1人だった。
休み時間は友達がいないせいか、いつも勉強していたから成績だけはよく、気づいたらこの辺で1番レベルが高い高校に入っていた。
高校に入学したとき、誰にも話しかけることが出来ず、友達作りに乗り遅れていた私だったが、隣の席の美咲の鞄を見てテンションが上がって話しかけた。
なんと、蒼イレのキーホルダーが鞄についていたのだ。
オタバレして浮くかなと不安に思ったものの、美咲と話が合い、2年になっても運良く同じクラスになり今に至る。1年の時は美咲しか友達は居なかったけど、2年になってから愛華と優奈が増えた。
4人で毎日楽しくオタトークを沢山している。
おかげで高校生活は毎日が楽しい。
「そういえば、アレ持って来たよ。昨日届いたんだ。見て見て」
「これが世界に3つしかない喬様の限定アクリルスタンドか」
「凄いよね、雑誌のプレゼント葉書100枚も書いたんでしょ」
「雑誌で見たとき一目惚れしたんだよ。絶対当てるって頑張ったもん」
「あかりは喬様が1番だもんね」
「うん。喬様はこの世の中で1番好き」
蒼イレの主人公前園喬は私の好きな萌要素が全て持っているまさに理想のキャラだった。
イケメン、金持ち、カリスマ性、銀髪、メガネ、さらにアニメは好きな声優。
私はこの世に喬様よりいい男なんていないと本気で思っている。
「あっ、でもさ、うちのクラスの藤森くんは?」
「藤森くんねぇ・・・。同じクラスになって半年もたつのに一言も話したことないし、別世界の人間じゃん」
「まあ、それはあかりの言うとおりだけど、藤森くんは眼福だよね。毎日見れるだけでも幸せだよね」
今話題に上がった藤森智春くんは、学校1イケメンだ。
学校内イケメンコンテスト前代未聞の2連覇。
1年で優勝したのは藤森くんが初めてらしい。
ちょっとした伝説となっているみたいだ。
彼女が切れたこともない。
告白も数えられないぐらいされてるらしいし、机や靴箱には誕生日でもないのにプレゼントが溢れていることもしばしば。
確かに美咲の言うとおり眼福だけど、私は1度も話したことないし、別世界の人間だと思っているから興味もなかった。
学校行事もあったが、特に用もなかったから、積極的に話そうとも思わなかったし、気がつけば半年が経過。
さらに、席が近くなったことがないのも理由かな。
ふと教室の真ん中の集団を見る。
女子も男子も沢山いる。中心は勿論藤森くんだ。
いつも楽しそうで、笑いが絶えない。
「ねぇ、昨日彼女と別れたって聞いたよ。私と付き合ってよ」
「いや、俺今は傷心中だから無理」
「嘘ばっか。1週間しか付き合ってないくせに」
「期間は短いけどな」
「えっ?1週間ってマジ?モテる男はいいよな。次々告白されて」
「でもストーカーみたいについてくるのとかいたり、メール1日100通送って来たりとか結構どうしていいかわからないときあるよ。はっきりその都度迷惑だとは言うけど」
「うわ~」
たまたま藤森くん達の会話が聞こえて、モテる男は大変なんだなと少し思ったのだった。
*******
放課後。日直の仕事を終えて、教室に入ろうとしたら、声が聞こえた。
「藤森くん。好きなの。彼女にして」
「昨日別れたばかりだから、ちょっと今は考えられないし」
「私のこと嫌い?」
「嫌いじゃないけど・・・」
「じゃあ、好き?」
「好きではないかな」
・・・これいつまで続くの?
今日は早く帰りたいのに。鞄は教室だしな。
どうしても早く帰りたい私はドアを空けた。
藤森くんと女子の目線が私に向いたけど、何も言わず自席に向かった。
「ちょっと、空気読んでよ?邪魔しないで」
告白していた女子が私に怒った口調で話しかけてきた。
「えっ?邪魔なんてしてないけど。それにここはみんなの教室でしょ。私だって用事があるし早く帰りたいから。私にかまわず続きどうぞ」
「・・・藤森くん。また明日返事聞かせて」
恥ずかしくなったのか、去ろうとする女子。
「いや、だからお断りだって」
・・・2人会話が噛み合ってないし。
これは付き合っても上手くいかなそうとか思った。
それが伝わったのか、振られたのは私のせいだと思ったのか、女子は私を睨みながら去った。
こわっ。
恋する女子こわっっっ。
「ありがとう。古河さん、助かったよ」
「別に私何もしてないけど」
「まあ、そうだけど、実際助かったし、御礼言わせてよ。でも古河さん、変わってるよね。あの場面で教室入って来るなんてなかなか出来ないよ」
「今日はどうしても早く帰りたかったから」
「何?用事?」
「蒼イレの発売日」
「・蒼・・イレ?って、何?」
「蒼イレは漫画のタイトル。今日は漫画の発売日」
「えっ?用事ってそれ?別にそんなに急ぐことなくない?」
「バカ。1分1秒でも早く買って帰って読みたいんだよ。じゃあ、私帰るから」
「・・・」
私は鞄を掴み、走って教室を出た。
足取りは軽い。
頭の中は蒼イレを買うことでいっぱいだった。
*******
休み時間、いつもと同じく4人で話していたら、藤森くんがこちらに向かって来た。
「古河さん、ちょっといいかな?」
「・・・へ?」
美咲、優奈、愛華は驚いた表情で私を見る。
・・・いや、1番驚いてるの私なんだけど。
話の内容はわからないけど、イヤな予感がしたから藤森くんについていくことにした。
向かったのは人気がない階段下。
私の方を向いた藤森くんは信じられない台詞を言った。
「あのさ、俺の彼女になってよ」
えっ?私今告白されたの???




