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第五話 覚醒


 セシル達と共に泣いた後、僕は食事を摂って眠りについた。


 翌日、起きてリビングに向かうと、大きく口を開けてパンを齧るキルハ·ブランドンが居た。


 「狂牙!? 何でここに!?」


 「何でって、お前が復活するまでここに泊まらせてもらってたんだよ」


 パンを齧ってスープをスプーンで飲みながら狂牙キルハは僕にギラついた視線を向ける。


 「本当に大丈夫そうだな。廃人みたいになった時はどうしようかと思ってたけどよ。復活したなら俺と勝負しようぜ!!」


 獰猛な笑みを作り、スプーンを僕に向けるキルハ。


 「勝負? ···君と戦う理由がありません」


 「はぁ!? 俺達は敵だったんだぜ? それだけで理由になるだろうが!! 何の為にここで時間を潰したと思っているんだ!!」


 「そう言われても···」


 困惑する僕を見て、キルハと食事をしていたセシルが眉間に皺を寄せながら口を開く。。


 「こいつにはアルジュナとの戦いの際に脱出するのを助けてもらった借りがある。それにお前と戦うまでここに居着くと言っている。ここにずっと居られても嫌だし戦ってやってくれ」


 あの戦いで、僕が気を失った後何があったかは聞いていた。


 弓王の命令でキルハが僕達に手を貸してくれた事も知っている。


 キルハに借りを作っている状態は確かに嫌だし、戦うしかないか。


 「···わかりました。戦いましょう」


 「本当か!?」


 「ただし、殺しは無しです。戦闘不能になるか、負けを認めた時点で戦いは終わりです。このルールでなら勝負します」


 「なっ!? そんなの勝負じゃねぇ!!」


 「なら戦いません」


 「ぐぬぬっ」


 キルハは僕を睨んで威圧しているけど、僕は折れる気はない。


 それを感じとったのかキルハは悔しそうに顔を歪める。


 「···わかったよ。そのルールで戦えばいいんだろ!!」





 渋々了承したキルハと僕は朝食を食べ終わった後、シュライゼムの外の草原へとやって来た。


 戦いの見届け人はセシルが務めてくれる。


 「準備はいいか?」


 セシルの声に武器を構える事で応えるキルハと僕。


 僕とキルハは睨み合い、戦いの合図を待つ。


 「始めっ!!」


 睨み合うこと数秒、セシルの合図で同時に動く。


 「豪斬流豪斬裂波!!」


 地面を切り裂きながら大剣を振り上げるキルハ。


 地面は抉れ、土とともに斬撃が僕目掛けて放たれる。


 相変わらずの馬鹿力だ。


 僕は後方にバックステップして回避するけど、流れるようにキルハは大剣を僕の頭目掛けて振り下ろす。


 「豪斬流鋼割!!」


 僕はキルハの大剣の腹に剣を当て軌道を変える。


 軌道をずらされたキルハの大剣は地面にめり込み亀裂を走らせる。


 その隙をついてキルハの首目掛けて剣を横薙ぎに振るうけど、それを右の義手で防ぐ。


 「ははっ、便利だろこの金属の腕。思うがままに動くし、これに関しちゃユルゲイトに感謝だな!!」


 僕の斬撃を金属の右手で防ぎ、左手で大剣を振り上げる。


 キルハの斬撃をバックステップで回避して距離をとる。


 「おいおい、あの光迅化ってやつは使わないのか? 出し惜しみするなよ」


 「別に出し惜しみしてるわけじゃありません。まだ身体が本調子じゃなくて。申し訳ないのですが、エンチャント無しで戦わせてもらいます」


 「ちっ!! 後悔すんなよっ!!」


 キルハは自分を軸にして大剣を使って独楽の様に回る。


 「豪斬流奥義大独楽斬り!!」


 回転する事によって斬撃のスピードも威力も桁違いに上がっている。


 剣で防ごうとすれば剣ごと斬られるだろう。


 キルハの大剣は物凄いスピードで僕の胴を斬らんとしている。


 なのに僕の頭は冷静だ。


 オルファーストの遺跡での戦いの時、無我夢中で弓王を斬った感覚が頭に残っている。


 あの感覚通りに動けば勝てると僕の身体が告げている。


 僕はあの感覚に身を任せてジャンプし、キルハの大剣を踏み台にして空中で身体を前転させてキルハの後方へと回り込み、キルハの首に剣をつける。


 キルハは驚いた顔で僕を見つめる。


 「勝負あり!! 勝者ルートヴィヒ!!」


 セシルの声で戦いは終わった筈なのにキルハは釈然としていない。


 「···今のはまぐれだ。あんな動き二度も出来る筈がねぇ!! もう一回勝負だ!!」


 これは納得するまで勝負する事になりそうだ。


 そう思いながらも、僕もあの感覚が偶然じゃないのを確認したくて再戦を了承した。


 僕とキルハは八回戦い、八戦とも僕が勝った。


 戦えば戦うほどあの感覚が身体に馴染んでいく。


 自分が急激に強くなったのを感じる。


 僕の動きを見てキルハだけじゃなくセシルも驚いているけど、一番驚いているのは僕だ。


 あの弓王との死闘が、ステラを救いたいと思ったあの瞬間が僕に力をくれたのだ。


 そんな僕を見てキルハが悔しそうに口を開く。



 「くそっ、わかったよ。私の完敗だ。なんで急激に強くなってやがる。今のお前なら十二星王とも渡り合えるんじゃねぇのか?」


 「どうでしょうね。でもこの力はステラの身体を奪ったあいつを止めるのには役立ちそうですね」



 そうだ。ステラの身体を奪ったアルジュナは多くの人々を殺そうとしている。


 そんな事、ステラの身体でさせる訳にはいかない。


 絶対止めると心に誓いながら僕は拳を握りしめた。

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