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第二話 それでも!!


 ――セシル視点。


 突如として空中に現れたアルジュナは世界中を混乱させた。


 我が母国ヨルバウム帝国も例外じゃない。


 俺達は、アルジュナがステラと瓜二つである事から、城に呼び出されて事の経緯を説明する事になった。


 十二星王のイルティミナ様とパラケルト様が居たので、俺達の話は信じてもらえたが、本来なら突拍子もない話だ。


 皇帝陛下は眉間に皺を寄せて、ヨルバウム帝国の大臣達の中には頭を抱えている者も居た。


 厳しい表情の皇帝陛下が口を開く。


 「現在、オルファースト王国に居る筈の執政官と連絡がつかない状況だ。おそらくオルファースト王国は、あのアルジュナという者の支配下に置かれたのだろう。信じたくはないが」


 「いくら私達との戦いで弱っていたとはいえ弓王を倒す程力を持っているのは間違いないのね。オルファースト王国を滅ぼしたと言われても納得するのね。ここは、早急に世界最高議会の開催をするべきなのね」


 「あたしもパラケルトの意見に賛成べさ。先程も説明した通りアルジュナはダンジョンコアの力も持っているべさ。加えてユルゲイトと傭兵王があちらには居る。世界最高議会を開いて十二星王の招集をするべきべさ」


 「父上、イルティミナ様とパラケルト様の言う通りにしましょう。この一大事、世界中の力を結集しなくてはなりません」


 クルトもイルティミナ様とパラケルト様に同調するが、第二皇子のテルナー皇子が待ったをかける。


 「お待ち下さい、父上。たかが小娘一人にこやつらは大袈裟過ぎです。私に一軍を預けて頂ければ、あの様なペテン師などすぐに倒してみせます!!」


 テルナー皇子は胸を張って主張するが、皇帝陛下はそんなテルナー皇子を見て溜息を吐く。


 「テルナー、大局の見えていないお前に大事な兵士達を任せる事はない。引っ込んでおれ」


 皇帝陛下の鋭い眼差しを受けて狼狽えるテルナー皇子。


 「イルティミナ殿とパラケルト殿の言う通り、世界最高議会を開くことにする。至急各国へと伝えよ!!」


 皇帝陛下の命により、世界最高議会が開かれる事になった。


 俺は謁見の間を出た後、城の応接室にてクルトと話す事となった。


 「···ルートヴィヒの様子はどうだ?」


 クルトの問いに俺は首を横に振る。


 「駄目だな。ジアスのおかげで身体の傷は癒えたが、相変わらず魂が抜けた様に覇気がない」

 

 ルゥが相変わらずの様子だと分かってクルトは深い溜め息を吐く。


 「俺だってステラが死んだ事はショックだ。未だに死んだ事が信じられない。だが、あの映像とお前達の話を聴けば信じるしかない。だからルートヴィヒの気持ちは痛い程分かってしまう」


 「ああ、俺も分かるさ。幼い頃からステラとルゥと一緒に居たんだ。自分の命よりも大事に思っていたステラが死んだのだから、ルゥの喪失感は計り知れない。だけど、ステラの身体を奪ったアルジュナを放って置く事は俺にはできない」


 「···そうだな。ステラの身体で好き勝手されるのは許せない。だからステラの為にも俺達でアルジュナを止めよう」


 「だな」


 

 クルトと話を終えた後、家に帰ってルゥの様子を見るが、相変わらず上の空。


 まるで廃人の様に見える。


 俺はそんなルゥに話しかける。


 「···ルゥ、ショックなのは分かる。だが食事だけでも食べてくれ。皆が心配している」

 

 ルゥは遺跡での戦いの後、目覚めてから五日経つが食事を食べていない。


 頬はこけ、顔は青白い。



 ローナとジアスが必死に食事を食べさせようとしているが未だに食べようとしない。


 「ルゥ。お前がステラをどれだけ大切にしてきたかは分かるつもりだ。だが、お前はステラの身体を奪ったアルジュナを放っておくつもりか。あいつはステラの身体で多くの命を奪うつもりだぞ!!」


 ルゥの肩を掴み、ルゥの瞳を見つめるが、ルゥの瞳に生気はない。

 

 俺はそんなルゥの頬を殴る。


 「ルゥ!! 今のお前をステラが見たら悲しむぞ!!」


 殴ってでもルゥの生気を取り戻そうとしたが、ルゥはベッドに倒れたまま動かない。


 そんなルゥを見て目から涙が溢れてくる。


 「ルゥ!! ステラが死んで更にお前にまで死なれたら俺はどうすればいいんだ!?」


 倒れたルゥを起き上がらせ肩を掴み、ルゥの身体を泣きながら揺さぶる。


 「頼む!! 頼むから死なないでくれ!!」


 俺は俯き、ルゥの太ももに涙を落とす。


 すると、ルゥが小さい声で呟く。


 「···親に捨てられた僕にとってステラは大事な妹だったんだ」


 顔を上げルゥの顔を見ると、瞳から涙を流していた。


 「···ステラは僕の全てだったんだ。ステラの為なら世界中を敵にまわしてもいいぐらいに大事だったんだ」


 ルゥは涙を流しながらだんだんと顔を歪ませていく。


 そんなルゥの言葉に俺は泣きながら頷く。


 「あぁ、知っている。お前がどれだけステラを大事に思っていたのかはずっと見てきた俺は知っている!!」


 「···ステラが死ぬぐらいなら僕が身代わりになりたかった!!」


 「あぁ!!」


 「僕は世界中の誰よりもステラを愛していたんだ!!」


 「あぁ!!」

 

 「そんな僕にステラの居ない世界で生きろと言うのか!?」


 「あぁ!! それでも俺はお前に生きていて欲しい!! それは俺だけじゃない!!」


 いつの間にか部屋の入口にローナ、ジアス、チェルシーが立っていた。


 「ルートヴィヒ、私もあなたに生きていて欲しい。ステラもそう思っている筈よ」


  ローナは涙目でルゥに語りかける。


 「···ス、ステラは僕のせいで死んだようなものだ。そんな僕に言う資格はないのかもしれない。でもルゥ兄に生きていて欲しいと僕も思う!!」


 ジアスは涙を流し、鼻水を垂らしながら叫ぶ。


 「···ルートヴィヒ。お願い、生きて」


 チェルシーは頬に一筋の涙を流しながらルゥを見つめる。

 

 俺達の言葉を聴いて、ルゥは俺の胸に顔を埋め大泣きする。


 「うわぁぁぁあっ!! 皆酷い!! 皆酷過ぎるよ!! そんな事言われたら死ねないじゃないかっ!!」


 泣きながら叫ぶルゥを俺は抱きしめる。


 俺達五人はしばらく泣いた。

 そんな俺達をナギさん、イルティミナ様、パラケルト様が真剣な表情で廊下から見つめている。


 さんざん泣いた後、ルゥの瞳には生気が戻っていた。

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