第十七話 料理番
S級ダンジョンに潜ると早速モンスターが襲ってきた。
ジアスはCランク冒険者なので、真ん中に居てもらい戦う事になった。
このS級ダンジョンは五十階層まであるらしく、ヨルバウム帝国のGDダンジョンよりも深い。
モンスターも強く、ダンジョン攻略は長期戦になりそうだ。
ジアスは、パラちゃんみたいに足手まといになるんじゃないかと思っていたけど、意外に体力あるし、自分の弱さを理解しているので、変な手出しはしない。
それに無詠唱で回復魔法が使えるので、私は攻撃に集中できる。
守る事前提で連れてきたけど、思わぬ拾い物かも?
パラちゃんは案の定途中でバテてルートヴィヒがおんぶするはめになったので前衛が一人減った。
パラちゃんは体力のなさ以外は万能なんだけどなぁ。
それでもセシルとナギさんと私で問題なくモンスターを倒せているのでいいけど。
問題はボス戦だ。
十階層の扉の前で少し休憩をして、パラちゃんはイルティミナと同じ方針で、私達の戦いには手を出さないので、五人で戦う事になる。
「準備はいい? ジアス?」
「あ、ああ、いつでも大丈夫だ」
ジアスは少し緊張して手が震えている。
そりゃあCランクでS級ダンジョンのボスモンスターに挑むのだから緊張するのは当たり前。
「心配しないでジアス。回復魔法に専念してくれれば、私が守るから」
安心させようと、ジアスの震えている手を握る。
「う、うん。あ、ありがとう」
ジアスは頬を赤らめている。
ん? 私何か変な事した?
でも緊張は解けたみたいなので良しとしよう。
扉を開けると、中央に大きい三つの首がある犬が居た。
ゲーム知識で言うならケルベロスって奴?
なら炎を吐く筈だ。
「炎が放たれます!!」
魔眼を発動させたナギさんが叫ぶ。
私は無詠唱で防御魔法ウォーターウォールを前方に展開する。
私がケルベロスの炎を防いでいるうちに、ルートヴィヒ、セシル、ナギさんは武器にエンチャントしてケルベロスの元へと駆ける。
「「光迅流二ノ型激迅!!」」
「シジマ流蜻蛉切り!!」
三人の斬撃がケルベロスの三つ首を刎ねる。
首を刎ねられたケルベロスは光の粒子となって消える。
残ったのはケルベロスの牙だけ。
ドロップアイテムの牙をアイテム袋に入れて、次の階層に向けて歩を進めていると、落ち込んだ表情のジアスが目に入った。
「何落ち込んでいるのよジアス」
「ステラ。···分かっていた事なんだけど、僕は何も出来なかった。足手まといになっているなと思ってね」
視線を地面に向け、元気なく歩くジアスの背中を思いっきり叩く。
「い、痛っ!? な、何するんだステラ!!」
「辛気臭そうな顔をしていたから活を入れたのよ。だいたいあなたが足手まといになる事くらい私達は分かっていたし、あなた自身も分かっていた筈よ。それでもダンジョンを調べたかったからついてきたんでしょ? なら気にせず前を向きなさい」
「···ステラ。···うん、そうだね。ありがとうステラ。たとえ足手まといになろうとも僕はダンジョンを調べたい」
ジアスは顔を上げて宣言する。
「うん、それでいいのよジアス」
私はそんなジアスを見て満足する。
ジアスがダンジョンの事を調べれば、私についても何か分かるかもしれないし、ジアスには期待しているのだ。
私達は先へと進み、二十階層でボスモンスターと相まみえる。
二十階層のボスモンスターは、鷲の上半身と獅子の下半身を持った所謂グリフォンが待ち構えていた。
空を飛ぶので、近接戦闘組の為に土魔法で足場を作って対処した。
グリフォンはルートヴィヒ、セシル、ナギさんの斬撃を風の障壁を纏って防ぎ、竜巻を生み出した。
私は、グリフォンが生み出した竜巻を風属性上級魔法のサイクロンで相殺して、火属性と聖属性の上級複合魔法クリムゾンレーザーでグリフォンの片翼を焼き、墜落させる。
後は、ルートヴィヒ達の仕事だ。
三人による斬撃でグリフォンは光の粒子となって消えた。
残ったのは、グリフォンの羽根が着いた帽子。
パラちゃんが調べると、使用者が魔力を込める事によって風の障壁を纏えるようになるらしい。
中々便利だ。
これは防御面に不安のあるジアスにあげる事にした。
ジアスは何もしていないのに貰えないと受け取りを拒否していたけど、私が無理矢理被せた。
結構疲れたので、今日は二十階層で野営をする事になった。
野営と言っても、パラちゃんが出してくれる家があるので快適だ。
料理番は交代で作っているのだけれど、パラちゃんが私達の中では一番料理が上手いので、今日はパラちゃんに作ってもらおうとしたら、ジアスが作ると言ってキッチンへと向かった。
食材と調味料を渡して待つ事約一時間半。
家の中に良い匂いが充満する。
ギュルルと私のお腹が鳴る。
恥ずかしくなって顔を赤らめていると、目の前には焼きたてのパンと野菜と肉を煮込んだシチューが並ぶ。
見た目もかなり美味しそう。
手を合わせた後、スプーンでシチューをすくって口の中に運ぶと、野菜や肉の旨味が口いっぱいに広がる。
かなり美味い!!
ホカホカのパンを千切ってシチューに付けて食べると更に美味い。
皆無心で食べ何杯もおかわりしていた。
もちろん私も三回程おかわりした。
そんな私達を見てジアスは嬉しそうに笑いながらおかわりをよそってくれた。
うん、ダンジョンにいる間は料理番はジアスに任せる事にしよう。
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