第十三話 尊敬の目
歩いて十分程で、お目当てのE級ダンジョンに着いた。
どうやらあの生意気なジョウとかいう奴のパーティーは先に入ったみたい。
ダンジョンの門番に冒険者カードを見せて中に入る。
このダンジョンは十階層らしい。
ダンジョンをしばらく探索して三階層まで来たけど、E級ダンジョンなだけあって出てくるモンスターは弱く、ダンジョンも単純な作りで罠もない。
これなら十階層まですぐに着きそうだ。
十階層に着くと、あの生意気男のパーティーが十階層の扉から出てきた。
防具のあちこちに傷があり、かすり傷も負っているが、無事にボスモンスターを倒せたらしい。
私達が向かってくるのに気付くと、ドヤ顔を決めて私達に近付いてくる。
「ふん、随分と遅かったな。お前達が苦戦している間にボスモンスターは倒したぞ!!」
「あら、そう。良かったわね。じゃあさっさっと地上に戻ったら?」
驚くとでも思ったのかしら。E級ダンジョンのボスを倒したくらいでは何とも思わないわよ。
ジョウはそんな私の態度が気に食わなかったみたい。
「なっ!? 言われなくてもそうする!! お前達はボスモンスターに殺されるかもしれないから助言してやろうかと思ったが、やめた。せいぜい苦しむといい」
そう言うとジョウとその仲間達は階段を上って行った。
「さぁて、私達もボスモンスターを倒しますか」
扉を開けると、中央に巨大な猪が居た。
ほぉ〜、あれがボスモンスターか。楽勝だな。
私は杖に魔力を溜めて中級水属性魔法のアイシクルランスを三つ展開して、突っ込んでくる巨大猪に放つ。
「グモォォォォッ!!」
鳴きながら大きな巨体が地面に沈む。
巨体猪は大きな牙を残して光の粒子となって消えた。
うん、やはり楽勝だった。
猪の牙をアイテム袋に入れて、お目当てのダンジョンコアを吸収する。
ホエセダンジョンと名付けたダンジョンのコアを吸収したけど、新たな能力の解放はなく、ダンジョンを作れる回数が増えただけだった。
肩を落としながら転移で脱出しようと思ったけど、ルートヴィヒから待ったの声がかかった。
「今までダンジョンに潜った時は、他のパーティーが居なかったから転移してダンジョンから脱出していたけど、今回は他のパーティーが潜ってる。僕達が先に脱出したら怪しまれるかもしれないから転移は使わずに戻ろう」
「···う〜ん、わかった」
確かにあのジョウとかいう奴は変ないちゃもんをつけてきて面倒臭そうだ。
手間だけど、転移は使わずにダンジョンから出る事になった。
モンスターを蹴散らしながらダンジョンを上り、ダンジョン入口へと戻って来た。
ジョウ達のパーティーとは会わなかったので、村へと戻ったのだろう。
私達はこのまま村に戻らずに次の目的地へと進んでも良かったのだけれど、私達に向かって血相を変えて走ってくる冒険者ギルドの受付嬢を発見した。
慌てた様子で近付いてきた受付嬢は息を切らしながら私達に視線を向ける。
「た、大変なんです!! む、村にはぐれドラゴンが現れました。い、今は村に居る冒険者達が戦っていますが、新人冒険者ばかりで手に負えない状況です。どうかお力をお貸し下さい!!」
必死の形相で頭を下げる受付嬢。
返事はもちろんイエスだ。
「わかったわ。パラちゃん、魔導自動車を出して」
「わかったなのね」
魔法陣を描き魔導自動車を出すパラちゃん。
その光景を見て驚く受付嬢を魔導自動車の中に乗せ、一緒にホエセ村へと向かう。
魔導自動車のおかげですぐにホエセ村に着いた。
と同時に、赤いドラゴンが火を吐き村を燃やしている光景が目に入った。
「皆、行くわよ!!」
「「「おう(なのね)!!」
赤いドラゴンの近くには血を流し倒れている冒険者達が。
ドラゴンはルートヴィヒとセシルに任せて、私は怪我人達に回復魔法をかけていく。
パラちゃんは水魔法で燃えている家々の火を消している。
ルートヴィヒとセシルに目を向けると、それぞれ光迅化と雷迅化をして赤いドラゴンにとどめを刺す所だった。
「グギャァァァアッ!!」
赤いドラゴンは大きく咆哮した後、地に沈み目から光が消えた。
ふぅ〜、終わった終わった。
流石はルートヴィヒとセシル。大して苦戦もしていなかった。
それに死者もでていないみたいだし運が良かった。
パラちゃんが燃えた家々を土魔法で修復し、私とルートヴィヒがまだいる怪我人に回復魔法をかけていると、見覚えのある冒険者達が近付いてきた。
「ド、ドラゴンを簡単に倒すなんて。···あ、あんた達本当にAランクやSランクの冒険者だったんだな」
顔は煤で汚れ、防具や武具はボロボロになっているけど、あの生意気なジョウで間違いない。
気まずそうな顔をしながらジョウは頭を下げる。
「い、色々と失礼な事を言って悪かった。あんた達が居なかったら俺達だけじゃなく町の皆も死んでた。ありがとう!!」
ジョウに追随して頭を下げるジョウの仲間達や他の冒険者達。
ほう、あれだけ啖呵をきった相手に素直に謝り、感謝するとは。
腹は立っていたけど許そうじゃないか。
「別にいいわよ。弱き者を助けるのは強者の務めだもの」
そう言うと、ジョウは身体を震わせ俯く。
弱き者と言って怒ったか?
だがそうではなかったみたいで、顔を上げたジョウはキラキラとした目を私に向ける。
「あれだけ失礼な事を言ったのに、気にもしないで助けてくれるなんて!! あんたは···いやあなたは俺の目指している冒険者そのものだ。俺はあなたみたいになりたい。お名前は何と言うんですか?」
「ス、ステラ」
あまりの変わり様に少し引いてる私を気にせず、キラキラとした純粋な目で見つめてくる。それはジョウだけじゃなくジョウの仲間達や他の冒険者もそんな目をしている。
「ステラさんって言うんですね。···ステラ師匠!! 俺を弟子にして下さい!!」
ジョウは土下座しながら懇願する。
あ、暑苦しい。尊敬されるのは嬉しいが、ここまでされるとちょっと引く。
なので返事は···。
「え? 無理 だいたい私魔導師だし。あんたは剣士みたいじゃない」
「魔導師でもいい。冒険者としての心構えを教わりたいんです!!」
「ごめん、本当に無理」
「そこをなんとか!!」
その後、ジョウだけじゃなく他の冒険者達にも弟子にしてくれと頼まれたが断った。
まぁ、尊敬されるのは嬉しかったから、建物を土魔法で修復して、怪我人を治しきった後に、倒したドラゴンの肉で村の皆と宴会をしたけどね。
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