第十二話 VS連合軍⑥
現在、敵の攻撃が届かない場所で無事だったイルティミナ先生と一緒に怪我人に回復魔法をかけている。
ステラはアルゴ様の死がショックで寝込んでいる。
そんなステラの分まで僕が治療する。
テントで出来た簡易の救護室を出ると、外は暗くなっていた。
ステラのもとへと向かうと、そこにはセシルが居た。
起きたステラと話している。
ステラは泣きじゃくり、そんなステラをセシルは泣きながら抱きしめる。
しばらく二人にしていた方が良さそうなので、僕は簡易の会議室へと向かう。
会議室の中に入ると、クルトや幕僚達、イルティミナが今後の戦いについて話し合っていた。
「イルティミナ様、あの魔法陣は何なのですか?」
「魔法を無力化する空間を生み出す魔法陣べさ。あの大きさの魔法無力化陣は、恐らく魔法陣制作のスペシャリストが多くの魔術士達に手伝わせ、数日の時間をかけて作ったものべさ。魔法無力化陣自体は珍しくないべさ。でも魔法無力化陣は設置型で作るのに時間はかかるし、魔力消費も激しい。それに一人が使った程度の魔法陣なら一級の魔術士なら瞬時に解除できるべさ。つまり普通は格上魔術士相手の戦闘に魔法無力化陣を使うなんて事はないべさ」
「じゃあ、あの魔法陣も解除出来るのですか?」
「···出来ない訳ではないけど、あの巨大で複雑に組まれている魔法陣は一級の魔術士数十人でも解除するのに数日はかかるべさ。あたしならもっと早く解除できるけど、それでも解除するのに一時間程かかるべさ。しかも解除中は魔法陣に触れてないといけない。その間魔法の使えないあたしは無防備。敵の攻撃の中、一時間も魔法陣を触り続けるのは無理。かといって魔法無力化陣がある限り、魔法は使えず、飛んで砦を襲う事は出来ない。遠距離から魔法を放ったとしても、空間に干渉している魔法無力化陣がある限り魔法は消えてしまう。相手も魔法が使えないのは同じだけど、長距離射程の大砲を揃えて対策しているべさ。」
「つまり相手の術中に見事に嵌まった訳ですか?」
「そうべさ。魔法陣を作る為に、ベストア王国にはすんなり入らせて、王都シャンデラで休むように仕向け、その間に連合軍は急いでこの場に魔法陣を作った。ベストアの要塞の爆破も、少しでも魔法陣がある可能性に気付かせない為の布石だった訳べさ。見事にラライドの掌の上という訳べさ。この戦いでは魔術士は無力。お荷物でしかないべさ。対抗するにはこちらも巨大な大砲で攻撃するしかないけど、あちらは砦に防御魔法をかけられる。大砲の砲弾をかいくぐり近付けても弓や銃で攻撃される。突破は難しいべさ。」
「···確かにそうですね。大砲がない訳じゃありませんが、あちらのような長距離射程の大砲はありません。この世界では魔法での攻撃が当たり前ですからね。だが、今体勢を立て直す為に引返せば、その間にミュルベルト王国は危機に瀕する」
クルトの言葉に皆が黙る中、僕はイルティミナ先生に確認する。
「イルティミナ先生。魔法陣は一時間で解除出来るんですよね?」
「ああ、そうべさ。だけど、さっきも言ったけど魔法陣に触れている間のあたしは無防備べさ」
「なら僕がその間イルティミナ先生を守ります」
「守りますって、相手は大砲を使ってくるべさ。どうやって守るべさ!!」
「斬ります。敵の砲弾を一時間斬り続けてイルティミナ先生を守ります」
僕の言葉に皆が無理だろうという顔をする。
「信じて下さい。僕が必ず守り抜きますから」
イルティミナ先生は難色を示しているが、幕僚の中に一人賛成してくれる人が現れた。メルト先生だ。
「危険ではありますが、光迅流の中伝以上の剣士なら出来ない事ではないですね。その案、私も乗ります。光迅流の中伝以上の剣士達でイルティミナ殿を一時間守りきってみせましょう」
メルト先生の言葉に幕僚達は驚いている。
クルトはしばし思案してメルト先生に視線を向ける。
「光迅流なら守りきれるんだな?」
「無論。必ずや守りきります」
「···わかった。イルティミナ様。イルティミナ様が魔法陣に触っている間、兵士達数人に大盾を装備させてイルティミナ様を守らせます。そしてその兵士達の前で、光迅流の剣士達に敵の攻撃を防いでもらいます。イルティミナ様を危険に晒す事になりますが、引き受けてもらえないでしょうか?」
イルティミナ先生は眉間に皺を寄せ黙り込む。
数秒後、頭をかきながらイルティミナ先生は口を開く。
「···無理難題にしか聞こえないけど、メルト殿とルートヴィヒを信じる。この命預けるべさ」
作戦は決まった。決行は明朝。
会議室を出ると、ステラとセシルのもとへと向かい、作戦を伝える。
「そんな無茶な事しないで!! お兄ちゃんにまで死なれたら私···」
俯くステラの頭を撫でる。
「ステラ、僕は出来ると思ったからやるんだ。僕を信じて」
ステラは心配そうな顔をしながらも頷いてくれた。
次にセシルに顔を向ける。
「光迅流の中伝以上の剣士達で敵の攻撃を防ぐ手筈なんですが、セシルはどうします? アルゴ様を亡くされてショックだろうし、セシルは参加しなくても」
僕が言い終わる前にセシルが僕の頭に拳を落とす。
「あうっ!?」
頭の痛みに呻いている僕を見ながらセシルは告げる。
「いらん気遣いをするな。お祖父様が亡くなった事は確かにショックだったが、俺だって光迅流中伝の剣士だ。それに親友が危険に飛び込もうとしているのに黙っていられるか!! 俺もその作戦に参加させてもらう。いいな!!」
「···ええ、わかりました。頼りにさせてもらいます」
強がっているのがまるわかりなセシルは少し心配だけど、セシルが作戦に参加してくれるのは心強い。
僕の勘だけど、明日の戦いがこの戦争の命運を握っている気がする。
だからこそ絶対にイルティミナ先生を守り抜かなくては。
夜空に瞬く星を見ながらそう決意する。
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