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第三話 フェブレン家の人々


 馬車で一週間かけて旅路を進みヨルバウム帝国フェブレン領都市キプロの街に到着した。

 

 ちなみに旅路の間のステラの食事は、生後五ヶ月ぐらい経っているみたいなので離乳食を与えていた。


 「ようこそ、キプロへ。どうだいキプロの街並みは? 綺麗だろう?」


 フェブレン伯爵の言う通り馬車から見るキプロの煉瓦造りの街並みは美しい。


 「はい、とても美しいです」


 「そうだろう? 私の自慢の街なのだよ」


 嬉しそうに笑顔でキプロの街を語るフェブレン伯爵。


 一週間旅路を共に過ごしたけど、フェブレン伯爵は好々爺というのが相応しいくらい優しく僕とステラに接してくれる。僕はこの一週間でフェブレン伯爵――アルゴ様の事が好きになった。


 「アルゴ様はキプロが好きなんですね」

 

 「ああ、大好きさ。まぁ、キプロだけでなくフェブレン領の街や村は全て愛しているがね」


 にこやかに自治領への愛を語る姿に僕は尊敬の念を抱く。


 この調子で一週間和やかに過ごした。


 「さぁ、そろそろ我が家に着くぞ」


 窓から外を覗くと広い敷地内に大きな屋敷が見える。

 ディスタの街にあった別宅よりもかなり大きい。

 

 馬車は門をくぐり敷地内に入る。庭というよりか小さな森と表現した方がしっくりくる程広い。


 森の様な庭園を抜け、大きな屋敷の前で馬車が止まる。


 一週間共に過ごした執事長のバイロさんが馬車の扉を開く。


 アルゴ様が馬車から降りたので、ステラを抱いてその後に続く。


 バイロさんが屋敷の扉を開くと、執事、メイドがずらりと並んで出迎える。


 「「お帰りなさいませ旦那様!」」


 ずらりと並んだ使用人達が一斉に腰を折る。


 「出迎えご苦労」


 アルゴ様は使用人達の間を進んでいく。その先には、身なりの良い服装をした青髪の二十代ぐらいに見える若い男性と同じく二十代ぐらいに見える茶髪の女性に、僕と同い年ぐらいの青髪の男の子が立っている。


 青髪の男の子はアルゴ様を見るやいなやアルゴ様に抱き付く。


 「お帰りなさいませ、お祖父様!!」


 「おぉセシル、今帰ったぞ」


抱きついてきた男の子の頭を嬉しそうに撫でるアルゴ様。

 青髪の男の子も非常に嬉しそうにしている。


 「ケルヴィ、オリヴィエも出迎えご苦労」


 アルゴ様は若い青髪の男性と茶髪の若い女性にも声をかける。


 「父上、無事の帰宅お喜び申し上げます」         


 「お義父様お帰りなさいませ」


 「うむ。ケルヴィ、私が居ない間何も変わりは無かったか?」


 「はい、何も変わりはありません。ところで父上お連れになっている可愛らしい客人を紹介してくれませんか?」


 「おぉ、そうだな。紹介しよう。今日からフェブレン家で預かる事になったルートヴィヒと妹のステラだ。ルートヴィヒ、紹介しよう。私の息子ケルヴィとその妻オリヴィエ。それから私の孫のセシルだ」


 僕は紹介された三人に頭を下げる。


 「今日からこちらでお世話になります、ルートヴィヒとステラです。よろしくお願いします」


 「ああ、ケルヴィ·フェブレンだ。よろしく」


 「まだ小さいのにしっかりしているのね。ケルヴィの妻のオリヴィエよ。よろしくね、ルートヴィヒとステラ」


 アルゴ様のご子息ケルヴィ様と奥様のオリヴィエ様は笑顔で迎えてくれる。


 だけどアルゴ様の孫のセシル様は、僕とステラをチラッと見るとアルゴ様に再び抱き付く。


 「セシル、失礼だぞ。ルートヴィヒとステラに挨拶しなさい」


 父親のケルヴィ様に注意されるとアルゴ様から離れて僕とステラに体を向ける。


 「···セシル·フェブレンだ」


 「ルートヴィヒと妹のステラです。よろしくお願いしますセシル様」


 「······ふん!」


 挨拶を終えるとセシル様は屋敷の二階に早足であがっていく。


 「こら、セシル! すまないねルートヴィヒ。あの子は人見知りでね」


 ケルヴィ様が申し訳なさそうにしている。


 「気になさらないで下さい。いきなり僕らが来て戸惑ったのでしょう」


 「そう言ってくれると助かるよ。父上、ルートヴィヒはセシルと同じくらいの年齢に見えるのにしっかりしていますね」


 「ああ、そうだろう。利発なルートヴィヒは将来お前やセシルを支えてくれる人間になってくれると思って連れてきた。ルートヴィヒ、セシルとお前は同い年だ。仲良くしてやってくれ」


 「はい僕で良ければ」


 「じゃあ私はケルヴィとオリヴィエと仕事の話があるので執務室に行く。バイロ、ルートヴィヒとステラに部屋をあてがってくれ。それと別館の説明も頼む」


 「かしこまりました」


 アルゴ様とケルヴィ様、オリヴィエ様は二階に上っていく。

 

 アルゴ様達の姿が見えなくなると、ずらりと並んだ使用人達は自分達の仕事場に戻っていった。


 残されたのは僕とステラと執事長のバイロさん。


 「それじゃあ今日から君達が住むことになる別館を案内しよう、付いておいで」

 

 バイロさんは別館に向かいながらこの屋敷について説明してくれる。

 フェブレン伯爵家の皆様が住むのが本館、使用人や僕やステラの様な立場の子供が住むのが別館との事だ。


 僕やステラの様な立場の子供は現在三人居るみたいだ。


 本館と別館は細い通路で繋がっている。


 通路を抜ければ別館だ。本館に比べると豪華な装飾品などは飾ってないけど、機能美な作りで美しい。


 まずは僕とステラの部屋へと連れて行ってくれる。ステラの面倒を見ないといけないから同じ部屋をあてがってくれた。

 部屋に入ると机、ベッド、が置いてあり、クローゼットも付いている。最低限の物は揃っている。荷物を置いて別館を案内してもらう。


 まず食堂。本館の食堂とは別に別館専用の食堂があるなんて驚きだ。

 次に大浴場、図書室など、恵まれた環境が整っている。

 

 最後に修練場を案内された。


 今ちょうど僕やステラと同じ立場の子供達が剣の授業を受けているらしい。

 修練場を覗いてみると、先生らしき大人が一人と僕よりも年上に見える子供達三人が木刀で素振りをしていた。


 バイロさんが修練場に入っていくのでついていくと、僕達に気付いた四人は素振りを止める。


 「あれ? バイロさん、もしかして新しい子達ですか?」


 剣の先生らしき人がバイロさんに話しかける。


 「ああ、新しくここで生活するルートヴィヒとその妹のステラだ」


 「ルートヴィヒと妹のステラです。これからよろしくお願いします」


 四人に向かって頭を下げる。


 「ああ、よろしく。俺っちはここで剣の指南をしているシェイドだ。俺も元々はここで育った子供だから何か分からない事があったら聞いてくれ」


 茶髪で後ろ髪を伸ばし束ねている男性はシェイドというらしい。


 「シェイドは十八歳の若さで剣の四大流派の一つ光迅流(こうじんりゅう)の免許皆伝をもらい師範になった男だ。師範になってから七年間フェブレン家の剣術指南役をしてくれている。それと、フェブレン家で生活している修練生のマルタ、レベッカ、ダスマンの三人だ」


 「修練生のマルタ十二歳よ。将来は魔導師になるのが夢なの、よろしくね」


 「修練生のレベッカ十歳です。将来はこのフェブレン邸でメイドとして働くのを目標にしています。よろしくお願いしますね」

 

 「修練生のダスマン八歳。将来は執事になるのが夢。よろしく」


 バイロさんに促されて修練生の三人も自己紹介してくれた。


 「シェイドさんに、マルタさん、レベッカさん、ダスマンさんですね」


 「おいおい、俺っち達にさん付けはしなくていいぜ。これからここで一緒に暮らす家族になるんだ」

 

 「じゃあシェイド、マルタ、レベッカ、ダスマン。これからよろしくお願いします」



 こうして僕とステラのフェブレン邸での生活が始まった。




             ◆◆◆


 フェブレン伯爵家に着いた。赤子の身で一週間の馬車での旅は中々しんどかったけど、なんとか着いたわ。


 フェブレン伯爵邸に入ると使用人がずらり。

 

 アルゴ様の息子のケルヴィ様とその奥さんのオリヴィエ様はアルゴ様と同じく優しそう。


 でもアルゴ様の孫のセシルは私とルートヴィヒが気に入らないのかすげぇ睨んできた。


 髪は父親譲りだけど、顔は美人のオリヴィエ様に似て可愛らしい容姿をしている。睨んできても可愛い。生意気ショタも良いものだ。


 

 私達が住むらしい別館は食堂に大浴場に図書室と至れりつくせりだ。

 私的には図書室で本を読みまくって知識チートになりたい。


 最後に修練場へ向かうと後ろ髪を紐で縛った茶髪イケメンが子供達に剣を教えてた。 


 イケメンはシェイドというらしい。イケメン剣豪も良いものだ。


 それから魔導師が夢と語る黒髪が綺麗なマルタ。


 将来メイドになるのが目標の緑髪のレベッカ。


 執事になるのが夢の将来イケメンになりそうな眼鏡男子ダスマン。


 中々のイケメン率だけど、それよりも気になるワードが。


――『魔導師』だと!?


 つまりこの世界には魔法がある?


 つまり魔法チートが出来るの?


 ヤッフゥ〜!! 


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