第二十七話 大賢者?
ダンジョンを崩壊させてから一週間が経った。
今日はデクス先生とダンジョンがあった場所にやって来た。
「これは完全に埋まってしまったなぁ」
ダンジョンの惨状を見て苦笑いするデクス先生。
「あれからダンジョンコアの声は聴こえたかい?」
「いいえ、何回か話しかけてみたんだけど、うんともすんとも言わなかったわ」
「そうか。じゃあこれ以上の進展は望めないか。わかった事はダンジョンコアがダンジョンの維持、形成を担っているという事だけだ」
残念そうにしているデクス先生と魔法学院へと戻った。
◆◆◆
ステラが知らない間にBランク冒険者になって、B級ダンジョンを踏破して崩壊させた。
兵士に連行されたと聴いて肝を冷やしたけど、無事に戻って来たので安心した。
だけど今回の事は流石に怒った。
下手したら崩壊に巻き込まれて死んでいたかもしれないのだ。
今度から一人で行動する時は何をするか知らせるように言っておいた。
渋々了承したステラは現在、魔法学院の生徒達だけじゃなく、王都の民衆達にも『破壊者』と呼ばれ恐れられている。
どうしたものか。兄として心配だ。
◆◆◆
季節は春。
四月になり、私達は二年生に進級した。新入生が入学し、私達も上級生となった。
それと魔法学院には交換留学制度があるのだけれど、なんとヤーバル王国からチェルシーが留学生として二年Sクラスにやって来た。
「···僕はチェルシー。···よろしく」
かなり簡素な挨拶だが、本人はちゃんと挨拶できたと思っているらしく、私に向かってドヤ顔をしてきた。
授業が終わったのでローナと一緒に学院を一通り案内して寮へと向かう。
チェルシーの同居人は居らず、一人で寮部屋に住むらしい。
寮の案内を済ませてローナと一緒に部屋に戻ろうとするとチェルシーが私の服の裾を掴む。
「···今週の日曜日会わせたい人がいる。···ルートヴィヒと一緒についてきて」
ルートヴィヒと私に会わせたい人って誰だろう?
チェルシーは自分が伝えたい事を伝えられて満足したのか部屋に引っ込んでしまった。
まぁ、日曜日になればわかるか。ローナと世間話をしながら自室へと戻った。
日曜日。
ルートヴィヒは本来なら道場で稽古があるのだけど、予定を空けてもらってチェルシーについて行ってる。
魔法学院を出て五分程歩き、ある宿屋へと入る。
二階へと上り、二○二号室と書かれた部屋をノックするチェルシー。
「居るべさ。入ってくるといいべさ」
変わった方言を喋る女性の声が中から聞こえてきた。
チェルシーがドアノブを回しドアを開けると、ベッドに座る変わった髪型のお子ちゃまが居た。
目立つ白髪をツインテールならぬフォーテイルに結んでいる。
見た目私と変わらなそうな歳の少女は青と緑と黄色が混じった所謂アースアイで私とルートヴィヒを見つめてくる。
「ほほう? 君達がチェルシーが言ってた天才兄妹べさね? 初めまして、チェルシーの魔法の師匠イルティミナ·ホルスべさ」
え? イルティミナ·ホルスって確か大賢者と呼ばれていて十二星王っていうのに名を連ねている凄い人だよね? え、この変な髪型のちみっ子が? ···とても見えない。
「···本当に大賢者?」
「何べさその目は!? 正真正銘あたしがイルティミナ·ホルスべさ!!」
私は胡乱な目でちみっ子を見てるけど、ルートヴィヒは信じたみたい。
「妹が失礼しました。僕はルートヴィヒ、妹はステラと言います。よろしくお願いします大賢者様」
「おぉ、兄の方は妹と違って見る目があるべさ。さぁ、ベッドに座るがいいべさ」
ルートヴィヒは言われた通りにベッドに座る。。
私と違いすぐに信じたルートヴィヒに好感を持ったみたいで、笑顔でベッドに座ったルートヴィヒの膝の上に座るちみっ子。
「よ〜し、このままあたしの頭を撫でるべさ」
「こうですか?」
言われるがままルートヴィヒはちみっ子の頭を撫でる。
「でへへ、良いべさ。美少年の膝に座って撫でられるとか最高のご褒美べさ」
この野郎!! 私のルートヴィヒに手を出しやがった!!
「お兄ちゃんに何させとんのじゃ!!」
スパーンとちみっ子の頭を全力で叩く。
「痛っ!? 減るもんじゃないし別にいいべさ!?」
「良くない!! お兄ちゃんは私のなんだから!!」
ちみっ子とルートヴィヒの取り合いをする。
数分後、私に負けて床にひっくり返っているちみっ子。
ふふん、勝った。しかし、こんな非力な子供が本当に大賢者と言われるイルティミナなのか? 怪しい。
「···ステラ、お師匠様に失礼」
しかし他人に無関心なチェルシーが珍しく怒っている。
本当に大賢者なのか?
なおも胡乱な目を向ける私を見てちみっ子が立つ。
「そんなにあたしが大賢者だと信じられないならば証拠を見せるべさ。ついてくるがいいべさ!!」
ちみっ子について行くと王都の外に出て、ダンジョンがあった森へとやって来た。
「私が大賢者だと証明するにはこれが手っ取り早いべさ!!」
ちみっ子が手を前にかざすと凄まじい魔力が練られていく。
その凄まじい魔力を無詠唱で解き放つ。
次の瞬間、世界が真っ白になった。遅れて凄まじい衝撃波と爆発音が私達を襲う。
私は目を瞑り、耳を押さえる。
数秒後、衝撃波と爆発音が止んだので目を開けると、目の前に広がるのは茶色い大地。
さっきまで森に居た筈なのに、周囲は平坦な大地。緑々しさなんて何処にも残っていない。
私とルートヴィヒが唖然としていると、ちみっ子が胸を張ってドヤ顔を決める。
「どうべさ!! こんな魔法を使えるのは大賢者しかいないべさ?」
自慢げにしているちみっ子の頭を全力で叩く。
「痛っ!? 何で殴るべさ!?」
「いやいや、森を消しておいて何で自慢げな訳? 森を消したら大騒ぎになるって思わなかったの!?」
「あっ。······もしかしてやばいべさ?」
私とルートヴィヒは無言で頷く。
チェルシーは呑気に拍手をしているが、それどころじゃない。
騒ぎを聞きつけて遠くから兵士が五人程やってくる。
私達は連行された。
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