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第二十四話 免許皆伝


 僕とセシルは今地獄に居る。


 冬休みが始まってから朝の五時に道場へと来て、まず掃除をする。

 掃除が終わると道場の周りを五十周走った後に一ノ型から伍ノ型まで各素振り三百回を行う。  

 それが終わると百人以上居る門下生達と夜になるまでひたすら打ち合う。


 夜になる頃には腕は上がらず、足は引きずる状態になる。


 それが冬休みが一週間経過した現在も続いている。


 今日も掃除をしてから道場の周りを五十周走った後に素振りをし、門下生達と打ち合おうとしたけど、当主メルト先生が立ち上がる。


 「今日からセシルはナーゼと打ち合いなさい。ルートヴィヒ、君は私と地稽古をしよう」


 当主の言葉に門下生達がざわめく。


 中伝のナーゼさんと打ち合うという事は中伝の位を取り得る実力があると認められたという事。グラシウスがセシルを見て悔しそうにしている。


 そして当主自ら地稽古を行うという事は免許皆伝の資格があるか見定めるという事。

 門下生達の羨望と嫉妬の眼差しが向けられる中、僕はメルト先生と向かい合う。


 「世界大会の話を聞いたよ。聖属性の魔法を身体にエンチャントする事で光の如く動けるようになったんだって? 六ノ型瞬光も使いこなしていたみたいだし。僕とエンチャントした状態で打ち合おうか」


 メルト先生の言葉を受けてセイクリッドレイを身体にエンチャントし、身体から白いオーラを立ち昇らせる。


 「ほう、それが噂の光迅化か」


 メルト先生が木刀を構える。全く隙がない。


 「さぁ、本気で打ち込んでくるといい」


 メルト先生の放つ気合いでプレッシャーを感じ冷や汗が出る。


 勝てる気がしないけど、唯一通用しそうな光迅化状態からの瞬光を放つ事にする。

 

メルト先生の周囲を瞬歩しながら駆け回り、移動速度を上げていく。


 スピードを限界まで上げきった所で最速最大威力の突きを放つ。


 「光迅流六ノ型瞬光!!」


 「光迅流六ノ型瞬光」

 

 僕の放った瞬光に瞬光を合わせた!?


 剣先と剣先がぶつかり合うが、僕の木刀は折れ、宙を舞う。


 気付くと僕の首筋に木刀を当てられていた。


 「ま、参りました」


 信じられない。光の如くと言ってもいい程のスピードで放った僕の瞬光に瞬光で合わせるなんて。

 僕には出来ない達人技だ。


 「ふむ、それが光迅化した全力かい?」


 「はい、僕の全力を出し切りました」


 「そうか。···うん、実に見事な瞬光だった。所で何故六ノ型瞬光だけが中伝にならないと教えてもらえないか知ってるかい?」


 そう、不思議だった。一ノ型から伍ノ型までは皆教えてもらえる。でも瞬光だけは中伝の位を持っていないと教えてもらえないし、使う事も許されていない。


 「それはね、瞬光こそが光迅流の唯一の奥義だからだ。光迅流には疾風、激迅、燐閃、光雨、散迅華、瞬光の六つの技しかない。一ノ型から伍ノ型までは光迅流の基本だ。だが、瞬光はその基本がしっかりと身についていないと放つ事が出来ない。だから五つの技を身につけた者には中伝の位を与えている。ナーゼにも君にも瞬光を放つ資格があるという事だね。だけど、瞬光は非常に難しい技だ。中伝の位を持つ者でも使えない者は多い。まぁ使いこなせれば免許皆伝を与えている程の難しい奥義だからね。だけど君はエンチャントの力を使ったとはいえ瞬光を使いこなしてみせた。君には免許皆伝を貰えるだけの資格がある」


 道場がどよめく。それも不思議ではない。十三歳で免許皆伝を得る事は快挙なのだから。


 「与えてもいいんだけど、どうせならエンチャント無しでも使いこなせる様になってもらいたいんだ。そこで残りの冬休みは僕と地稽古をして瞬光を完全に使いこなせる様になって貰う。それで使いこなせれば晴れて免許皆伝だ」


 確かに今までは光迅化の力を借りて、無理矢理瞬光を放っていた。


 素の状態で瞬光を放てれば、更なる飛躍が待っている気がする。

 メルト先生の言葉に頷く。


 「よし。それじゃあ、ルートヴィヒは一週間私と地稽古をする。セシルはナーゼと地稽古を一週間し、私が中伝に至っているか判断する」



 それから一週間が経過し、地獄の地稽古の末、僕は免許皆伝を貰い、セシルは中伝の位を得た。


 こうして僕は光迅流免許皆伝の最年少記録を更新した。


 


            ◆◆◆


 冬休みも終わり、三学期が始まった。


 ルートヴィヒがなんと光迅流免許皆伝の最年少記録を打ち立てた。

 この快挙は王都中に広まり、ルートヴィヒのファンは女性だけでなく男性も増え始めた。


 セシルも十三歳という若さで中伝の位を得たのだけれどルートヴィヒの快挙で埋もれている。

 可哀相だったので私がべた褒めしておいた。


 魔法学院の生徒達からは、ルートヴィヒは『光の君』、セシルは『雷迅』、クルトは『不屈の皇子』、ウリス生徒会長は『黒姫』と呼ばれ人気がある。

 

 私も異名が欲しい。いずれつくだろうと我慢していたけど、他の皆がもてはやされているのを黙って見ておくなんて私には出来ない。

 と言う訳で、私は異名を獲得する為に、偉業を打ち立てます。


 それは何かと言うと、ダンジョン攻略だ。それも単独での。


 王都近くの森にダンジョンと呼ばれている深い洞窟がある。


 自然に出来たのか、人の手によって出来たのかはわからないけど、ダンジョンにはモンスターが沢山居て、お宝も眠っているらしい。


 通常は四、五人でパーティーを組んで潜るらしいんだけど、私は異名が欲しいから単独で潜る!!


 ちなみにダンジョンには等級がFからSまであるんだけど、今回潜るダンジョンは上から三番目のB級ダンジョンだ。


 流石に八歳児がB級ダンジョンを単独で踏破すれば異名もつくだろう。


 ぐふふ、どんな異名がつくか楽しみだ。


 早速ダンジョンへと潜ろうとすると、ダンジョンの門番をしている兵士に止められた。

 なんでも冒険者ランクB以上、もしくはBランク冒険者をパーティーに入れてないと、このダンジョンには潜れないらしい。


 ···ぐぬぬ。ならばまずはBランク冒険者になってやる!!


 私はBランク冒険者になる為に冒険者ギルドへと向かった。

 

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