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第十五話 個人戦準決勝


 Dブロックの戦いが終わり、準決勝第一試合が始まる。


 『準決勝第一試合はヤーバル王国魔法学院一年生チェルシー·モルフェイド選手とヨルバウム帝国シュライゼム魔法学院一年生クルト·ヨルバウム選手の対決です。この対決どう見ますかフェイさん?」


 『そうですね、はっきり言ってチェルシー選手の魔法技術はこの大会トップと言っていいです。更に最上級魔法が使える。一方のクルト選手は堅実な魔法と奇策でここまで勝ち上がってきましたが、正直厳しい戦いになるでしょう』


 解説に耳を傾けながら舞台でチェルシーさんと向かい合うクルト皇子を見る。


 解説者のフェイさんの言う通りこの戦いクルト皇子が勝つのは厳しいと誰もが思っている。


 それでもクルト皇子の目はしっかりとチェルシーさんを見据えている。あの目は勝つ気だ。少しも諦めの気持ちはないように見える。


 審判が試合開始の合図を出す。


 先に動いたのはクルト皇子。手に魔力を込める。


 「フレアレイン!!」


 火属性上級魔法フレアレインを短縮詠唱で放つ。


 チェルシーさんはダークネススフィアを出現させてフレアレインを無効化する。


 「ガイアウェーブ!!」


 間髪入れずに土属性上級魔法ガイアウェーブを放つクルト皇子。


 だがダークネススフィアでガイアウェーブも吸収された。


 ガイアウェーブが無くなるとクルト皇子の姿が上空にある。


 ガイアウェーブを放った後、地面に向けてトルネードの魔法を放ち、自分の身体を空中へと舞い上げたのだ。


 観客はクルト皇子が上空に居ることに気付いているけど、チェルシーさんは身失ってクルト皇子を探している。

 ガイアウェーブが壁となり、クルト皇子が空中へと舞い上がった瞬間が見えなかったのだ。


 クルト皇子は今が好機と言わんばかりに手に魔力を込めて唱える。


 「グランフレアサイクロン!!」


 放ったのは火、風、土属性の上級複合魔法。


 上空からの岩と炎巻き込んだ暴風がチェルシー選手に迫る。


 「ダークネススフィア!!」


 咄嗟にダークネススフィアを展開したが、既に近くまで迫っていたグランフレアサイクロンを吸収しきれない。


 威力は弱まりはしたがグランフレアサイクロンはチェルシーさんを吹き飛ばす。


 二転三転と地面を転がったチェルシーさんはよろめきながらも立ち、自分に回復魔法をかける。


 その間にも追撃出来た筈なのにクルト皇子はしなかった。

 いや、出来なかったのだ。


 三属性の上級複合魔法を使った時点でクルト皇子の魔力は尽きていた。


 グランフレアサイクロンで仕留められなかった時点でクルト皇子の負けは確定していた。


 「これ以上は戦えそうもない。棄権させてもらう」


 審判が試合終了の合図を出す。


 『勝者チェルシー·モルフェイド〜!! 決勝へと進出したのは前評判通りチェルシー選手。しかし、クルト選手の奇策と最後に見せた三属性上級複合魔法は圧巻でした。フェイさんはこの試合どのように見ましたか?』

 

 『大変感動しました。相手が格上にも関わらず勝つ気で策を巡らせ、自分の限界を超えた魔法を使いこなしてみせたクルト選手の不屈の精神には感服致しました』


 『さしずめ『不屈の皇子』って感じですかね。ともあれ素晴らしい試合を観せてくれた二人に大きな拍手を』


 大歓声に包まれる中、チェルシーさんとクルト皇子は握手している。


 「···今回は驚く事ばかり。···あなたの名前は?」


 「覚えていないのか! 呆れたやつだな。クルト·ヨルバウムだ」


 クルト皇子は苦笑いしながら名前を教える。


 「···クルト。···うん、覚えた。···クルトもまた戦おう」


 「ああ!!」


 こうして準決勝第一試合は終わった。


 次は準決勝第二試合。ナギさんと僕の戦いだ。

 

 控室へと向かい、大きく息を吐く。頬を両手で軽く叩き気合を入れる。


『さぁ、次の準決勝第二試合は、ミズホ国魔法学院二年生ナギ·ミヤモト選手とヨルバウム帝国シュライゼム魔法学院一年生ルートヴィヒ選手の対決です。二の太刀いらずのシジマ流免許皆伝者と、その速さ光の如しの光迅流中伝者の対決となりますが、フェイさんはどうみますか?」


 『剣の実力を見ると、ナギ選手が少し上のような気がします。そこに魔眼が加わるので、ナギ選手の方が有利に思えます」


 「フェイさんはナギ選手が勝つと思っているんですね。私はルートヴィヒ選手が勝つと思っています。何故なら美少年だから。それでは準決勝第二試合が始まります」


 ナギさんと僕は互いに礼をする。

 

 「まさかあなたも大会に出てて、こうして戦うことになるとは思いもしませんでした」


 「ええ、僕もです。ですがあなたと戦えるのを楽しみにしてました」


 「私もワクワクしています。シジマ流免許皆伝ナギ·ミヤモト参ります」


 「光迅流中伝ルートヴィヒ参ります」


 構えをとり、試合開始の合図を待つ。


 数秒後、審判が開始の合図を出した。


 ナギさんは剣にトルネードブレードをエンチャントした。


 僕は最初から全力で行く。


 「聖なる光よ、瞬く閃光よ、我が身に宿りて全てを穿け!! エンチャントセイクリッドレイ!!」


 僕の身体と剣から白いオーラが立ち昇る。


 「···全力を出した方が良さそうですね。魔眼開放!!」


 ナギさんの灰色の瞳が淡く光り五芒星が浮かび上がる。


 光迅化状態で瞬歩をし、背後に回り込むと見せかけて正面から斬り込む。


 だけどナギさんは正面から斬り込む事を最初から分かっていたみたいに躱す。


 くっ、ならこれはどうだ。


 「光迅流四ノ型光雨!!」


 しかし光速の連突きはひらりひらりと躱される。

 まるでどこに突きが来るかわかっているかの様に。


 躱しざまナギさんから斬撃を放たれた。


 「シジマ流雲切り」


 横薙ぎの一撃を後方へと飛んで躱したつもりが、お腹から血が出る。


 「決めきれませんでしたか。よく躱しましたね」


 確かに傷は浅い。


 次は多方面から一ノ型疾風を繰り出すけど、全部躱され、更に傷を負わされる。


 それの繰り返しで気付けば僕は血塗れになっていた。


 「もうわかっていると思いますが、私の魔眼は少し先が視えます。なのであなたがどう動くか、どう攻撃をするか手に取るようにわかります。光の如き速さで動けたとしても無駄です」

 

 無駄? 本当にそうだろうか? 確かに僕の動きは分かっているのだろう。


 でもだとすると一つ疑問がある。


 分かっているのに何故一撃で僕を沈めないのか。

 二の太刀いらずのシジマ流らしくない。

 雷迅化したセシルは一太刀で斬られたのに。僕は立っている。


 僕とセシルの違いは何だ?

 ···恐らく動きだ。雷迅化したセシルは直線的な動きしかしていなかった。だから攻撃も合わせやすかった。

だけど、僕は変則的な動きを取り入れている。だから決めきれない。

 恐らく分かっていても光の如き速さで変則的に動く僕を捉えきれていないのだろう。なら戦いようはある。


 もう魔力も限界が近付いてるし、身体もボロボロ。


 変則的な動きをしつつ、捉えきれない全力の一撃を叩き込む。


 ナギさんも魔眼使用で魔力が切れかけているのか息が荒い。


 「これで終わりにしましょう」

 

 お互いに全力の一撃を放つ為の構えをとる。


 先に動いたのは僕。光の残像が生まれる程のスピードで真っ直ぐ駆ける。


 お互いに剣を放つモーションをとるが、ナギさんの斬撃が放たれるタイミングで足でブレーキをかける。


 超スピードの動きを足で無理矢理止めようとするのだ。右足から骨が折れる音が聴こえる。


 それでもブレーキをかけ続ける。


「シジマ流奥義桜花一閃!!」


 僕の胸から血が吹き出る。


 だがやはり浅い。ブレーキをかけた事でタイミングがずれたのだ。

 僕はそのまま身体を回転させて渾身の一撃を叩き込む。


 「光迅流二ノ型激迅、応用技螺旋激光迅!!」


 咄嗟に刀で僕の横薙ぎを防ごうとするが、その刀ごと斬った。


 刀は折れ、ナギさんの身体はくの字に曲がり吹き飛んだ。


 全身は傷だらけで右足は折れている。魔力も使い切って光迅化も使えない。これで立たれたら僕の負けだ。


 審判がナギさんに近づくがナギさんは動かない。


 審判が戦闘不能を確認し、試合終了の合図を出す。


 『試合終了〜!! 勝者はルートヴィヒ選手!! 速すぎて何がどうなったのかは相変わらずわかりませんでしたが、魔眼を破り勝ったのはルートヴィヒ選手です。ですが、ルートヴィヒ選手の身体を見ればナギ選手の凄さがわかると思います。二人に惜しみない拍手をお願いします」


 アナウンサーの声で拍手が巻き起こる。


 ナギ選手と僕は審判に回復魔法をかけてもらって向かい合う。


 「あそこでブレーキをかけて減速したのには驚かされました。見事な一撃でした」


 「ナギさんこそ素晴らしい剣を見せてくれてありがとうございました。大変為になりました」


 握手をしてお互いの健闘を讃えあった。



 準決勝第二試合が終わり、大会三日目は幕を閉じた。 

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