探偵の目覚め
僕にとって、それは突然の出来事だった。
大学四年生の春休みの前日、僕のスマートフォンに一通の着信が来た。
父が死んだ。
訃報を聞いた瞬間は弾丸でも撃ち込まれたような衝撃を感じたが、その後のことはよく覚えてない。急いで地元に帰って葬式だけ参加したが、父の死を受け入れられないせいか、僕は逃げるように大学へ戻った。
「ウスイ アオくん、君の父親リュウノスケは殺害された。その犯人は今も捕まらずにいる。」
今後のことを悩む僕の元に、訃報を知らせてくれた老人は再び連絡してきた。穏やかでダンディな低音ボイスとは裏腹に、話している内容は物騒な内容だ。
「彼から君を託された。犯人はアオくん、君ならきっと捕まえられると言っていた。続きを知る気があれば父親の事務所に来てくれ。」
「犯人……」
老人の話のせいで、父を亡くした衝撃は犯人への怒りに変わり始めた。怒りは胸の内側を侵蝕するように、不安となってじわじわと広がっていく。
「父を奪った人間がのうのうと生きていることが許せない。」
「犯人が生きているってことは、ほかの家族に危害を加える可能性もあるのでは?」
「だとしたらこんな所でのんびりしてる場合じゃない!」
老人の話したことは嘘だという可能性もあり得うるが、僕はとても冷静でいられる状態ではなかった。
僕はその日の内に就職先の内定を辞退し、大学のスケジュールを全部キャンセルした。一刻も早く家族の元に戻らねばと、そんな思いに駆られて必要な荷造りをした。
2日後、僕は故郷である見楠街に到着した。