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マスコミは慣れてるんだけど実際に目の前だとね···

わたしは自分の部屋に荷物を置いて、階段を駆け下りて村長を探す。どうやら玄関のところにいるようだ。


「あ、心海殿。今すぐ外に出るんじゃ、任務じゃよ任務」

任務?

「任務···ですか?」

わたしはスパイかなんかかい。

「村民等の目の前で自己紹介をするんじゃよ」


へ?


「え、わたし無理ですっ」

「でもな、村民に何も言わないと怪しまれるからのぉ」

当然だ。でもわたしは人前がとても苦手で···


「人前ですか···」

「なあに、大したことは言わなくていいんじゃよ」

人前で何か言うっていうのが駄目なんだよなぁ···


「例えば···何を言えばいいですか?」

「うーん···そうじゃのぉ」


しばし村長は熟考する。


「戦いにおける精神と戦闘力の相関について700字以内で述べる」

大学の小論文かい。

「誰が聞いても面白くなさそうなネタですよ、それ」


「じゃあ自分の名前と身分くらいで良い」

んー、まあそれぐらいでいいなら取り敢えず頑張る。

「あ、はい」


そしてわたしと村長は村のど真ん中にある“なんか建物の密集する場所”に着いた。


見た目は村民達の広場という感じで、ここだけ円形に建物が取り囲んでいた。

ここの建物は人の住居ではなく、機織り機があったり大量の木材や角材がある建物もあったことから、おそらく農業以外で村の生活を支えている人達が使う店舗だったりするのだろうか。


「ここで···その歓迎会的なのをやるんですか?」

「そうじゃよ」

「誰も居ませんけど···」

「時間にルーズじゃからのう」

まあ時計も無いだろうからな。


ゴォォォン··· ゴォォォン···


「四時の鐘じゃな」

そっかこれがこの村の計時機能なんだな。


四時を過ぎてちょっとしてから村民たちは現れ始めた。皆村長の隣に立つわたしを見て口々に何か言っている。何かとてもそれがわたしの不安感を煽ってくる。


初めての学校に来る転校生ってこんな気分なんだな。


結局現れた村民達の数は徐々に増えて百人程になった。どうやら老人は少なく子供が多いようだ。都会とは真逆である。


村長は“そろそろか”と言って集まった人間達の前に立った。そしてマイクも無いのにに随分な大声を出す。

「全員集まったかのう」


村長が口を開くと口々に何か言ってる連中が押し黙った。


「今日は村民の皆に新しい仲間が加わったことを紹介する!」

また村民達が騒ぎ始めた。


「ホレ心海殿、皆の前に出てくるんじゃっ」

う、なんか緊張するわ···


そしてわたしは皆の前まで歩いていき、そして立った。


そうだ、さり気なく拡声魔法使おう。

「ええと、わたしは···今日からこの村で··えと魔法を使った戦い方を教える···」

やべっ、名前ど忘れした···


「心海美心と言います···よろしくお願いします、はい」

あと一言なんか言わなきゃっ!


「ええと、わたしは都会生まれ都会育ちの戦士で···現役時代は魔王討伐パーティーっていう···一流戦士しか所属できないパーティーに所属してました···」


さり気なく村長の方を向くと“あと一言っ!”という顔をしてる。

「ええと···わたしは今までの戦士の経験を活かして···魔法教師を努めあげたいと思います」


言い終わると皆から拍手が湧く。わたしは“皆がわたしを認めてくれた”と思ってとても嬉しく思った。


そしてわたしが一旦皆の前からはけると入れ違いに村長が皆の前に立った。


「心海殿の実力はこの村の戦士全員が感無量になるほどじゃった。どうにか···心海殿の力でこの村を救えると儂は信じてる」

プレッシャーかけないで、マジ。


そう言って村長は皆の前をあとにして会はお開きとなり、みるみるうちに誰も居なくなっていった。


村長はわたしのところへやって来た。

「次は心海殿の学校の紹介じゃな。生徒達にはこのまま集まるよう言っておる、じゃから早く向かうぞ」



学校はその“なんか建物の密集する場所”の近くにあった。ただこれが学校と言えるなら···なのだが。


ここの学校っていうのは、アフリカの砂漠地帯とかカンボジアとかあの辺りの学校を想像しうる建物だった。要するに屋根だけあって黒板も窓も無いというものだった。

村長曰く、いつか直してまあ立派な建物にするんだそうだ。


いつかやると言ったことは絶対やらない···がこの世のセオリーなのだから、おそらく永遠にやらない。わたしはそう思う。


その建物の中に六人の人間が居た。


これ···生徒か?

思わずそんな感想が飛び出そうになる。


彼らの殆どは二十歳を超えてるという姿だったからだ。特に一番右の男というのは顔の肌の感じでは三十路を超えてそうだ···

左から数えて二番目の女は若そうには見えるのだが、顔の雰囲気はもう大人の女性という出で立ちだった。


でさ···一番左の人はなんなんだ?

十歳超えてない子供じゃないか、年齢感覚どうなってんのよ。


そういえば真ん中の長髪の男はオーク相手に戦っていた銀蔵じゃん。それにしても後ろに何を担いでるんだ?銃か?


うう、疑問点が多い···


「心海殿、心海殿」

へ?

「自己紹介するんじゃよ、自己紹介」

え、また?


「えっと···」

これでも一年かけて育成しなければならない重要メンバーなのだから、しっかり自己紹介しなくてはいけない。


「わたしは···首都の方で戦士をしていた心海美心です。今日から皆さんの先生となります。えーと皆さん初めまして···」

雑だな〜。

皆軽く会釈をする。この感じ、なんかグダってるよな···


「えーと···何か質問ありますか?」

絶対無いね。断言できるよ。


「······」

皆誰一人として何も言わなかった。


「お主ら何か質問はないかのぉ···」

村長ナイス!


お、一人手を挙げたぞ。右から二番目の男だ、若干少年っぽさが残る外見である。


「えっと···心海先生でいいんですよね?」

「ええ、良いわよ」


「先生って首都の方では強かったのですか?」

自分で強いって言うのか、気が引けるなぁ。


「うん。なんて言ったって“魔王討伐パーティー”だからね」

なんか魔王討伐パーティーと言ったとき、わたしにはこの青年の目が鋭くなったような気がした。


「ふーん、凄いんですね」

魔王討伐パーティーって言ってわかったのか?


彼らの質問はそれで終わった。


「質問は以上かのぉ、もっと聞いたほうがいいんではないかと儂は思うのじゃが···」

多分聞きづらいんでしょ、だって初対面だし。


······


「質問は無いようじゃな。じゃあ心海先生とお前たちや、明日から授業じゃぞ!頑張るんじゃ」


「ええ、頑張ります···って、え?」

明日?

いやわたしまだこの村に来て一日経って無いんですけど。


「明日ですか!?」


生徒達も驚いて村長に聞き返す。


「善は急げじゃ」

善とか依然にやるべきことが多そうかと思われるが···


「それじゃ心海先生、挨拶も程々にして長旅でお疲れでしょうからここで自由時間とするかのう」


「そうですね」


「自由時間にする前に言っておくが、夕食を準備してるから六時の鐘が鳴ったら部屋に戻ってくるんじゃ」


「あ、はい」


そう言ってわたしは学校っぽい建物を後にした。




さっきの建物がひしめく広場に戻ってきた。さっきより日が傾いてきていて空は紅に染まっている。


戻ってきても誰もいなかった。


不思議なことだがこの村はそんな人の少ない村ではないのに、外を出歩いている人間というのを見ることがない。みだりに外に出歩いてはいけないような法律でもあるのだろうか。


ひしめく建物を覗き込むと部屋の中がほんのり明るい。おそらく電気やガスはあり得ないから、恒常性魔法の類で明かりを点けているのだろうか。


家の中もそうわいわいがやがやという雰囲気ではなく、なんとなく閑散としていて何か寂しさを感じる。


何気なく広場から村長の家に通じる道を見てみた。


そこに一軒扉の開いた店舗を見つけた。木でできた昔ながらの平屋の建物で中の引き戸を開け放っている。

わたしはちょっと行ってみようと思って歩きだした。


「すいませーん、開いてます?」

中から女性の声がする

「開いてませんが、自由に見ていいですし注文してもいいですよ」

じゃあ開いてるってことじゃ無いのだろうか。


どうやらこの店舗は衣服の店らしい。たったの二三着だったが陳列棚に飾られていて、それはまるでRPGのゲームを思わせるようなファッショナブルなものだった。店主だと思われる人は店の奥にいるのらしく、そっちから声が聞こえた。


店の奥まで行ってみる。

そこに何かの図案とにらめっこし続ける美女が居た。


そしてその美女はゆっくりとこちらを向きこう言った。


「あ、あなたは昼間の戦士の方?」


わたしが“はい、そうです”と答えると、何も言わずに“やっぱりね”と言うようにニコッと笑う。


わたしは凄いな···と思った。肩口を越すように長い淡くて白っぽい金髪、色っぽい目元、何しろこの赤というより紅に近くて包み込むような唇、そして···高級感を感じさせるような格好。


それがこの女に神のような神聖な印象と、包み込むような感覚を生み出すのだろうか。



そしてその女は静かに口を開いて言った。

「あなたの希望通りの服をお作り致します、何か着たい服のイメージはついてますか?」

只今絶賛改稿中のため多少構成がおかしくなっております。

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