第030話 - 団欒
―ある連休の最終日。
京都の出雲家に久々におじさんが帰ってきた。
「おとーさん、おかえりっ!」
弟…だけど弟ではない陽三が玄関へ突っ走る。
「あ~ぁ、あいつはほんっとにお父さんっ子なんやから…」
夕食の準備済ませる玲子さんは、ひとつため息が出た。
でも、顔はどこか嬉し気な感じがした。
「…玲子、ホントは嬉しいんでしょ?」
にんまりした顔でサヤが問う。
「う、嬉しくないわっ!あんな五月蠅い男ども!」
―あれから早くも1年半が経った。
京都闇バス転落事故。
そうだ、玲子さん達が私の事を救ってくれたんだっけ…
時と共に、この大きな一大事ももはや「思い出」となりつつあった。
「―なぁ、今年も年越しは京都なんか?」
「…多分ね、どこかに行けるような暇じゃないし。」
玲子さんは高校2年生。
早くも大学受験へ向けての対策が始まっていた。
当の私は、結局高校へは行っておらず、家の事や陽三の世話をしていた。
理由は多数あったが、その中でも玲子さんが「下手な方便を喋ると東の民とみなされいじめられる」という事例が府内でも多数報告されていたからだ。
その「対象」が私と同じ理由で東に戻れない者等だった。
その間、勉強は玲子さんに教わっていた。
記憶は無くても過去に東で習ったであろう勉強などは何故か覚えていた。
学校・部活・バイト…そして私への勉強を教えること。
小遣いも貰っていてむしろ「ボランティア」として動いているに等しかった。
本当に感謝しきれないほど感謝をしている。
「サヤさん、ここの生活はどうや?」
「あ…まぁ、大分慣れました。」
「えぇ~っ、いつも道迷ってるくせに~」
まるでさっきの弄りを手で返すように、またにやりとした顔つきで玲子さんはこう言った。
「ははは、でも、2人ともうまくやれてる様だし良かったわ。」
その夜、寝るまではずっとおじさんと玲子さんと3人で1年分の会話をしていた。
聴きあきたのか、陽三は先に眠りについていた。
寝る前の最後に3人でお仏壇に手を合わせた。
そこには、今亡き出雲家の母の遺影が置かれている。
不治の病で亡くなってしまった玲子さんのお母さん。
ここに来てからずっと玲子さんがお母さん気質だった理由が分かったかもしれない。
「お母さん」は、今頃私の事をどう迎えてくれたんだろうなぁ…
―あんまり深い方に考えを持っていくのは止めよう…
寝る支度を済ませ、いつも通り布団へ入る。
寝静まる京都の町。
その少し端にある家の電気が、またひとつポツリと消えた。
翌朝、まるで姫路のおじさん家を出たときと同じように、おじさんはまた職場へと戻っていった。




