現代版 ある人、弓射ることを習ふに
第1話です。あらすじにも書きましたが、全5話を予定しております。この話は大分短いです。
弓道を習っているというある人がいた。その人は二本の矢を指に挟んで的に向かう。
師匠は言う。
「初心者は二つの矢を持ってはいけない。もう一本あることに安心しきってしまって最初に打つときにいいかげんな気持ちが入るからだ。毎回、的に当てることを意識せずにこの矢しかないと思い込むべきだ。」と。
たった二本の矢をしかも師匠の前で射るのだから、その最初の一本をいい加減におろそかにしようかな?とは思わないだろう。
ある人はそう思っていたが、師匠曰く「怠けようとする心は自分で認識していなくても無意識に入っているものだ。俺はわかるぞ。こういうことはあらゆることに通じるものがある。だから一本だけ持って的に向かえ。」
ある人の師匠は思う。
仏道修行をする人は夕方には明日の朝があると思い、朝には夕方があると思うからあとでもう一回ちゃんと修行することを最初に計画に入れておくのだ。
こんな感じの人たちは一瞬のうちに懈怠の心、怠けの心が潜むことを明確にわからない。
なぜ、今のこの一瞬にすぐに物事を実行することはとても難しいのだろうか。