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真夏のリハビリ企画のもです。

夏が来た……。

今年も去年以上に暑い日が……。



毎年僕が住んでいる町では『川添祭り』を行っている。

その行事で小学生から高校生まで地元の子供たちが寄り集まってお囃子を披露することになっているのだ。


僕は中学2年。


もうこのお囃子に参加してから5年になる。

小学3年にこの街に父の転勤で引っ越してきたのが初めだった。


その日も今日と同じくらい暑い夏の日だったことが思い出される。

みーんみーんと蝉が忙しくなきわめきながら暑さを助長させるのだ。

額に溜まった汗が頬をつたりTシャツの胸の当たりにぽつんと落ちる。

体全体からも暑さで汗が噴き出ているのが分かるくらい不快な気分だった。




今年も毎年恒例のお囃子の稽古が始まったのだ。

同じメンバー、同じ大人たちが指導して同じことを繰り返し繰り返し行う。

その毎年のルーチンのような行動に何も疑問を持たずに黙って黙々と笛を吹き、太鼓をたたく音が境内に鳴り響いている。


稽古の場所は近くの神社の境内を使わせて貰っているのだ。





ああ、なんて詰まらない青春を送っているのだろう、僕はそう思いながら太鼓を叩く。

周りの子供や僕と同じ年の連中が眼を閉じながら必死に演奏をしている姿を見ると嫌毛がさしてくる。

暑さでイライラしながらやりたくもない太鼓叩きに飽き飽きしている僕は、やっと中休みの号令が掛かって境内の裏にある自販機でジュースを買ってそのそばで座って飲んでいた。



「はぁ……マジだり~……」



ふと口から出た言葉は誰にも届かないだろう、そう思いながら呟いた一言だった。



「疲れちゃったの? 大丈夫?」


「え……!?」



僕の目の前に現れたすらっとした素足が見えたと思ったら僕の頭上でそう声が鳴り響いた。

慌てて顔を上げると白いワンピースを着て頭には麦わら帽子をかぶり手には黒の日傘をさした女子が心配そうな表情で僕の事を見つめていた。


知らない…誰だろう、この女子。



僕の呟きを拾った女子の顔をまじまじ見入ってしまった僕。

目元はぱっちりしてて鼻筋がすらっとして口元は何とも可愛らしかった。

何だこの気持ち……。

どきどきして気持ち悪くなってきた。

自分の鼓動と気持ち悪さで今にも飲んだジュースを吐き出しそうになった。



「ねぇ……大丈夫なの? 顔色悪いわよ?」



また声が掛かった。


やっぱり僕の事を言っているのだろうか。


それにしてもかわいい子だな。


こんな子がこのあたりに住んでいたんだっけか……。

僕は無言のまま飲みかけのジュースを飲み干すと缶をゴミ箱に投げ捨てた。

僕の顔ってそんなにげっそりしているように見えてるのだろうか。

確かに嫌々やらされてるお囃子の稽古にはうんざりしているのは確かなのだが……。



「ねぇ、此処で何をしているの?」



無言のまま立ち上がった僕にまた声を掛ける。

僕は彼女を見つめながら答えた。



「………お囃子の稽古………」


「へえ、凄い事してるんだね。もうすぐお祭りでもあるの?」


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