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東方夢喰録 〜 Have a sweet nightmare!! 〜  作者: ODA兵士長
東方夢喰録
27/52

第27話 真実 –– シンジツ ––









「––––今回は、どうなるかしら?」


病院の屋上にいる1人の女––––八意永琳は呟いた。







この世界の崩壊条件は、以下の2つのうちいずれかを満たすことである。


1つは、始祖体を喰らう、または殺すこと。


もう1つは、始祖体が博麗霊夢を喰らうこと。

始祖体の捕食対象は『Ym-ki』型のユメクイである。

なぜならそれが、自分の娘への手がかりであるからだ。



––––鈴仙・優曇華院・イナバ、博麗霊夢の2人が"撒き夢"と呼ばれる性質を持つのは、2人とも『Ym-ki』型のユメクイであるが故である。

『Dm-ki』型のユメクイは、『Ym-ki』型のユメクイ––––もとい始祖体から作り出されたコピー品に過ぎない。


そして始祖体の目標は博麗霊夢である。

その目標への手がかりとなるのが、己と同じ『Ym-ki』型の血であった。

それ故に『Dm-ki』型のユメクイは無意識のうちに『Ym-ki』型のユメクイを集めることになるのだ。

従って、2人は"撒き夢"と呼ばれる性質を持つ。


また同様に、八意永琳も"撒き夢"の性質を持つが、彼女は"夢を見られなくする薬"によってその効果を抑えている。











「思えば、この始まりは10年以上前だったわね––––」










今から、10年以上前。

八意永琳はまだ若手の医者であった。

しかし、既にその腕は高く評価されていた。



そんな彼女の下に、1人の女––––博麗操夢が運ばれてきた。

操夢は事故により身体を大きく損傷。

運ばれてきた時点で既に心臓が止まっていた。

故にそれは"遺体"と呼ばれていた。

念のため、永琳は死因の特定を目的に彼女の身体を検査した。

そして、永琳は気づく。

彼女の脳に、"異変"があることに––––



––––彼女の脳は、まだ、生きている。



その異変は永琳の興味を惹いた。

そして彼女は、その知的欲求を抑えることができなかった。

その知的欲求の強さこそが、彼女が天才と呼ばれるまでに大成した所以なのかもしれない。

とにかく彼女は、操夢の脳を研究したいと思い、その遺体を保存することにした。

もちろんそれは秘密裏に行われ、彼女とたった1人の協力者––––鈴仙・優曇華院・イナバのみがそのことを知っていた。



幸い、操夢には娘が1人いるのみで、近しい友人も数が少なかったようだ。

葬儀などは行われることがなく、彼女らの所業が明るみに出ることはなかった。



それから、彼女の研究が開始された。

そして、その研究が実を結んだのは2年前。

彼女は操夢の血液から開発した薬により、『Ym-ki』型のユメクイになることが出来た。

そしてその瞬間、彼女は"あらゆる薬を作る程度の能力"を持つことが出来た。



しかしその後、その能力を用いて作られた"夢を見られなくする薬"によって『Dm-ki』型のユメクイが誕生してしまう。

それを検知したのは、薬を盗み飲んで「撒き夢」の性質を持った、鈴仙・優曇華院・イナバであった。




それから妹紅、アリス、咲夜と共にユメクイの殲滅が開始した。

その殲滅の目的は、窒息死件数の減少だけではなかった。

本当の目的は別にある。

しかし、その殲滅の本当の目的を3人とも知らない。


では、その本当の目的とは––––?







ユメクイが何故夢を喰べるのか?

それは酷い空腹感から、そうせざるを得ない。

しかし、その行為をして空腹感を満たしても、それがそのユメクイ自身の栄養分になるわけではない。

その空腹感は我慢できるものではないが、例え我慢出来たとして、夢を口にしなくとも死ぬことは決してない。



––––では、何故喰べるのか?



『Dm-ki』型のユメクイは自分のために夢を喰べる訳ではない。

彼らは––––彼らも知らないうちに––––夢を"喰べさせられている"のだ。


彼らが、その口––––彼らのモノとは思えない大きな口––––で喰べた夢のエネルギーは、始祖体に集まる。

つまり、博麗操夢にそのエネルギーが注がれる。


そして始祖体は集めたエネルギーを用いて夢を形成するだけ力を手に入れようとしているのだ。




その事に気がついた八意永琳は、それを阻止するためにユメクイの殲滅を行なっていた。

本来ならば、博麗操夢の脳を破壊すれば良かった。

しかし、操夢の脳を破壊すれば己の能力を失うかもしれない。

自分勝手な理由だが、彼女はその能力により人々を救うことで、自分の非道徳的な研究を正当化していた。

そんな彼女に、博麗操夢を殺すことはできなかった––––



そして、殲滅作戦の結果は失敗となる。

何者かによりユメクイが量産され、操夢は夢を形成してしまった。



いや––––今回も、夢を形成することができた。

そう言うのが正しいだろう。

そうでなければ、このループを終わらせることは出来ないのだから。



「結果的には、貴女は私に協力してくれていたことになるわね––––優曇華」



誰がユメクイを量産したのか、それを"今の"八意永琳は知っている。

そして今回も、皆が揃っているあの場所に姿がないことがそれを物語っているだろう。



「さて、そろそろ決着かしら?」



八意永琳は空を見上げた。





































私と母はぶつかり合っていた。

それは己の体を使った、空中での肉弾戦であった。


––––私の夢想天生は、母の能力と中和し打ち消されてしまった。

そして私も母も、全ての能力が効果を持たず、ただ己の力の限りをぶつけ合う事しかできない。


私は大好きだった母を殴る。

母はたった1人の愛娘を殴る。


先ほどまでは、魔理沙を殺されたという事が私の原動力となり母に立ち向かわせていた。

しかし、幾らか冷静になってしまった。

先ほどの魔理沙の死に、何も意味はないのだ。

この夢の世界で死んだところで、現実世界の魔理沙への影響は一切ない。



もう既に、魔理沙の呼吸は止まっているのだから––––





「––––なんで」


そのことに気がついた私は、もう疑問を唱える事しかできなくなった。


「なんで、こんな事にっ!」


私はそう言いながら、殴りかかってくる母の拳を受け止めた。


「私にも分からない。ただ、お腹が空いてるのよ」

「お母さんを止めるなんて––––殺すなんて出来ないわよ!」

「なら、大人しく喰われなさい!」


母の目が怖かった。


「……私が食べられても、魔理沙達は眠ったままなの?」

「そうね。目覚めるのは私だけよ」

「私が死ぬのなんて、どうでもいいわ。だけど、魔理沙達が目覚めるなら私は……」

「どうするの?私を止めるの?」


母の腕は私の体へと伸びている。

普段なら、絶対に振り払わないだろうその腕を、私は掴み食い止めていた。


私は心の中で天秤にかけていた。

人の命を天秤にかけるなど、本来なら善いこととは言えないだろう。

しかし、今はそうせざるを得ない。













魔理沙や紫を救うか––––














母を救うか––––
























––––私は迷っていた。



























どちらを選ぶべきか、私には分かった。


本来なら、既に死んだはずの母さんよりも……


永遠の眠りにつく必要のない、未来の長い魔理沙たちの方を救うべきなのだ。


そして母の願いも、おそらくそうなのだ。





















でも––––



















私は––––
































「––––ダメ。やっぱり、出来そうにないわ」


私は腕の力を抜く。

いや、抜けてしまった。

母は私の肩を掴む。


「だって私は、お母さんが大好「––––おやすみなさい、霊夢」


母は私の言葉を最後まで聞くことなく、捕食した。



















































「美味しい!美味しいわ!」


私は満足感で満たされていた。

口の中に広がる濃厚な味わいと、この満腹感。

それは何事にも代え難いほどの幸福なひと時であった。


「霊夢、貴女美味しすぎるわ!!」
















––––霊夢?















「––––え?」


私は目を疑う。

ここに居るのは私の可愛い可愛い娘、博麗霊夢だ。

しかし、首から上が存在しない。



それを喰い千切ったのは––––




「あ––––」


その時、私の脳内に電流が走った気がした。

そして私は、全てを思い出す。

私は、"また"やってしまったのだ。


「ぁぁぁあぁぁああぁあぁあぁぁあぁぁああぁぁあぁぁああああああああああ!!!!!!」


私は大声で泣き叫んだ。

狂ったように、ただひたすら。



































「––––霊夢が」


魂魄妖夢は呟いた。

少女たちは全員、唖然として見ていた。

霊夢がどれほど強力であるか知っている妖夢や咲夜、紫はもちろん、妹紅達も目を見開いている。


––––空が、割れ始めた。




「私は……何も、出来なかった」





































「––––やはり、繰り返すのね」


空が割れている。


「今回はいつもと、色々と違っていたから、期待していたのだけど」


八意永琳は空を見上げる。

そこには1人の女が頭の無い娘を抱きしめながら、大声で泣いているのが見えた。

永琳はその光景を、今までに何度も見ている。


「また、やり直しましょう。私にはそれを手伝い、見届ける責任がある」

















































––––博麗操夢の夢は崩壊した––––







































「……ッ!」


十六夜咲夜は病院内を歩いていた。

そしてそこには、いつもと同じ光景が広がっている。

先ほどまでの騒がしさは、そこにはなかった。


「あの規模の夢でも、やはり誰も覚えてないのね」


そう呟き、窓の外を眺めた。

そして咲夜は目を見開く。





「––––空が…………割れてる?」



それは現実のものとは思えなかった。

いや、現実ではないのだろう。

でもこれじゃあ、まるでここが夢の––––



















































































––––博麗霊夢の夢は崩壊した––––




















































––––––––––ザワッ––––––––––

















*キャラ設定(追記なし)


○博麗霊夢

「私は勘で動いただけよ」


年齢 : 17歳くらい

他人に無関心なところもあるが、人との関わりを避けているわけではない。

楽しいことも美味しいものも普通に好き。

勘が鋭く、自分でも驚くほどの的中率を誇る。


【能力 : 空を飛ぶ程度の能力】

文字通り空を飛ぶことができる。

この能力を発展させた技が以下の2つ。


・夢想封印

攻撃技。

武器として出現させた御札に特殊な効果を持たせる。

その札が貼り付いた者は光に包まれ捕食され、跡形もなくなる。

痛みもなく、存在が消える。


・夢想天生

防御技。

ありとあらゆるものから"浮く"ことで、実体を持たない"夢"の状態となる。

相手は攻撃を当てることも出来ず、ただ防ぐ手立てのない御札をその身に受けることになる。

また、その御札は追尾性能を持つ。




○十六夜咲夜

「まあ、1番早いのは、私がユメクイを殺すことでしょうね」


19歳になる程度の年齢。

冷静沈着、才色兼備………を装っている。

実力、容姿共に十分だが、自意識過剰。

しかし結構他人想いで、世話焼きな面もある。

また家事全般を余裕でこなせる為、嫁にしたい女子No. 1である。(作者調べ)


【能力 : 時を操る程度の能力】

時間を加速、減速、停止させることができる能力。

巻き戻すことや、なかったことにする事はできない。


武器としてナイフを具現化させる。

その数に制限はない。




○八意永琳

「また、やり直しましょう。私にはそれを手伝い、見届ける責任がある」


37歳になる程度の年齢。

若くして名声を獲得した医師。

色んな薬を作っている(らしい)。

彼女の人柄に惹かれて病院を訪れる者も多い。


【能力 : あらゆる薬を作る程度の能力】

簡単な材料から不思議な薬を作ることが可能。




○魂魄妖夢

「私、もう迷わないよ」


17歳になる程度の年齢。

真面目で義理堅い。

ただ、自分に自信がなく、他人に流されやすいTHE日本人気質。

……に見えるが、実は意思がしっかりしている……ようでしてない。


【能力 : 剣術を扱う程度の能力】

具現化した二本の刀を自由自在に操ることができる能力。

だが、いつも長い方しか使ってない。


武器として二本の刀と半霊を具現化させる。

半霊は実体を持たせることも持たせないことも可能。

また、妖夢と同じ姿になら変身することができ、妖夢の声を半霊の口から出すこともできる。

つまり、同時に喋ることは出来ないが、半霊だけが喋ることは可能。




○博麗操夢

「––––楽しくなりそうね」


40歳になる程度の年齢。

始祖体と呼ばれ、全てのユメクイの(はは)となる存在。


【能力 : 夢を操る程度の能力】

夢の中ならば、全ての現象を操ることができる。

また、夢を現実にすることも可能。

この能力を発展させた技が以下の2つ。


・夢操封印

攻撃技。

相手の存在を消し去る。

そこには光も音も痛みも存在しない。

一瞬で消えて無くなる。


・夢操天生

防御技。

ありとあらゆるものを"操る"ことで、実体を持たない"夢"の状態となる。

相手は攻撃を当てることも出来ず、ただ防ぐ手立てのない操作をその身に受けることになる。


夢想天生と夢操天生が対立した場合、他の能力等が武器とならず、二人の闘いはただ力の限り殴り合うだけの赤子の戦いと化す。


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