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東方夢喰録 〜 Have a sweet nightmare!! 〜  作者: ODA兵士長
東方夢喰録
17/52

第17話 狂気 –– キョウキ ––







「あらフラン、おはよう」

「うん、お姉様」

「フラン、挨拶には挨拶で返すものよ」

「別にいいじゃない」

「この子は本当に……」

「おはようございます、妹様。食事の用意が出来ておりますので、どうぞこちらへ」

「おはよう咲夜。ありがとね」

「なんで咲夜には挨拶するの!?」

「別にいいじゃない」

「お、お前なぁ……」







私はこの日常が好きだった。







「わぁ……!綺麗だね!!」

「ありがとうございます、妹様」

「本当に全部美鈴が育てたの?」

「そうですよ。毎朝こうして水をあげています」

「私もやりたい!」

「ええ、いいですよ」

「やったぁー!」







私、お姉様、咲夜、美鈴……他にもたくさんの人がいるこの日常が、堪らなく好きだった。






















「今日からお前が、この紅魔館の当主だ」

「…………え?」


私は突然、お父様に呼び出された。

普段、仕事でどこかに行っているお父様とこうして話したのは数える程度しかない。

それでも私にとっては、たった1人のお父様だったから、それなりに愛着はあった。


「お姉様はどうしたんですか?」

「フラン、お前は私の可愛い"一人娘"だ。お前になら、この紅魔館を任せられるよ」

「???」


その場は取り敢えず了承しておく他なかったが、私には意味がわからなかった。





「ねぇ美鈴!なんで私が"お嬢様"なの!?」

「なんでと仰られましても……お嬢様は"お嬢様"でしょう?」

「違う!前までは妹様だったじゃん!それにお姉様はどこに行ったの?あんな奴でも、居ないと調子狂うんだけど?」


美鈴は、ただ困ったような表情をするだけだった。


「それに咲夜もいないし……2人ともどこ行ったの?」

「あ、その……え……っと……」


美鈴は何か言いたげだったが、やはり困った表情をするだけだった。


「メイド長」

「ん?どうしたの?」

「少々来て頂いてよろしいですか?お伺いしたいことが……」

「ええ、いいわよ。ではお嬢様。失礼しますね」


美鈴はメイドに連れられ、どこかに行ってしまった。


「え、まだ話は終わって…………行っちゃった」


先日、お姉様と咲夜が紅魔館から消えた。

代わって当主になった私と、メイド長になった美鈴。

そして私は、"お嬢様"と呼ばれるようになった。


「もう……意味わからない……」

















––––これらは、フランドールの知らないこと。




スカーレット家にとって、レミリアは大きな存在ではなかった。そしてフランも。

なぜなら2人は所謂、"妾の子"。

2人はスカーレット卿とその使用人の間にできた子供だった。

そして名目上は"レミリアの意向"で日本に住んでいる2人だが、真実は異なった。



但し、いくら望まれない子供であったとは言え自分の娘は可愛かった。

野晒しにするなんて考えられず、低級な生活をさせることも耐えられなかった。

だからスカーレット卿はもともと持っていた別荘を2人の家にしてしまった。

イギリスでは多少なりとも有名なスカーレット家だが、日本でその存在を知るものは殆ど居なかった。



そして2人は日本に送られた。

"自分の意向である"と小さい頃から言われたレミリアは、それを疑うことなく、また本当に日本を愛し、そこに住むことを願った。




そしてこれらは、紅美鈴の知っていること––––

















「お、お嬢様!?何されてるんですか!?」


お姉様と咲夜が居なくなって、半年が経った。

私は新たな生活に慣れることなく、2人を待ち続けた。

その間、私はお嬢様と呼ばれることも、お姉様の家を私の物として扱うのも我慢していた。


「何、美鈴?」


だが、もう我慢の限界が来ていた。

あの日常を返して欲しい。

私には責任なんてわからないし、こんな館欲しくないし、お姉様のもとで気ままに暮らす方が性にあっている。


「お嬢様……それではまるで––––」




私はあの日常を取り戻したい。

あの頃に戻って、みんなで笑い合うんだ。

美鈴は今でも笑いかけてくれるけど、私にはわかる。

心が笑ってないよ。

だから私は、お姉様に––––レミリア・スカーレットに……!




「––––"元"お嬢様じゃないですか」


私は、レミリア・スカーレットになった。



いや、なりたかった––––























「惨めなものね」

「…………え?」


私は自分の部屋を抜け出して、庭を散策していた。

この花々は、今でも美鈴が育てているのだろうか?

そんなことを思いつつ、私は歩いていた。

別に私はこうして歩くのが好きなわけではない。

では何故、私がこうしているのか?

それは偏に、しばしばお姉様がそうしていたからだった。

少しでもお姉様に近づく為に––––


「もしかしてそれって、私の真似をしてるつもりなの?全然似てないわ」


散策をしていると、後ろから声をかけられた。

こんな時間に、しかも敷地内に居るなんて誰だろう?

そう思って私は振り返り、問う。


「だ、誰……?」


暗闇から少女が姿をあらわした。

聞き覚えのある声に、見覚えのある姿。





「––––お、お姉様……ッ!?」



それはまさしく、レミリア・スカーレットだった。


「ど、どうして……!?」


それは私の幻覚なのだろうか?

だがしかし、どう考えてもそこに居るとしか思えない。

でもどうして今更になって……?


「久しぶりね、フラン。元気だったかしら?」

「お姉様、今までどこにいたのよ!?」

「質問に答えないのね。身なりは私に似せようとしても、やはり中身はそう簡単に変わらないものね」

「なんでお姉様は居なくなったの!?咲夜をどこに連れて行ったの!?」

「はぁ、全く。相変わらず人の言うことを聞かずに、自分の話ばかりする子ね」

「……ッ」

「まあいいわ。そろそろ貴女が壊れるとは思ってたし。予想以上に参ってるみたいだけど」

「お願い、お姉様……帰って来てよ……」

「ふふっ、何を言い出すかと思えば……今のままでいいじゃない?邪魔な私が消えて、貴女は見事に紅魔館の当主になれたのよ?本来なら喜ぶべきだわ」

「よ、喜べるわけない!!!」

「あら、どうしてかしら?」

「わ、私は……お姉様が好きで……咲夜も好きで……美鈴も他の皆も好きで……あの頃の紅魔館が好きだったの!今の紅魔館じゃない!あの何でもない日々が良かったの!」

「……本当に?」

「え?」

「本当に、それが理由なのかしら?」

「そうだよ、それが理由だよ!」

「ならば、私に憎しみが生まれるはずよ。咲夜を恨んでいるはずよ」

「なっ、そ、そんなことあるわけ……」

「だってその日常を壊したのは、私たち2人なのよ?」

「ち、違う……」

「いいえ、そうよ。全ては私たち2人が消えたことから始まったの」

「……!」

「貴女が壊れる必要はないわ。ただ、私たちを恨めばいいのよ」

「な、何でお姉様が、そんなこと言うの?お姉様は私に恨まれたいの?」

「少し違うわ。私は貴女に嫌われたいの」

「どういうこと……?」

「だって私、貴女のことが嫌いだから」

「え?」

「嫌いな奴に好かれるなんて、それこそ、真似されるほど好かれるなんて––––心底気持ち悪いわ」

「ッ……!」

「信じられない、といった表情ね。でも、私だけじゃないと思うわ。咲夜や美鈴も、貴女のこと、本当はどう思ってるんでしょうね?」

「嘘だ……嘘だ……」

「あら、他人の感情まで否定するのね。本当……憎たらしい子」









「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!!」






私はお姉様に飛びかかった。

お姉様は軽く半身になるだけで、私を受け流す。

そして私のお腹に、拳をめり込ませた。

以前のお姉様は、こんなことをしなかった。

稀に投げることはあっても、殴る蹴るはしたことがない。

やはり、そんなに変わってしまうほど、私が嫌いになったのだろうか?


「うぐっ……」

「馬鹿ね、貴女が私に勝てるとでも?」

「殺してやる……」

「出来ないくせに」

「殺してやる……ころしてやる……コロシテヤル!」

「本気でそう思うなら、いい情報をあげるわ」

「……?」

「この薬を飲みなさい」


私は小さな袋を手渡された。


「……くすり?」

「ええ、私も飲んでる薬よ。効用は……そうね、強くなれるってところかしら?」

「強くなれる……?」

「飲むか飲まないかは勝手にしなさい。ただ、もしそれを飲んで、この先私に会うことがあったら……少しは楽しいかもね」

「え?」


お姉様は再び闇へと向かう。


「ま、待ってよ!」

「バイバイ、フラン。楽しみにしてるわ」

「行かないで!!!」


私はお姉様に飛びついた。

しかし、私は地面にダイブしていた。

お姉様が、消えた……?


「あれ、お姉様……?」


やはりあれは、私の幻覚だったのだろうか?

極度のストレスが、私に幻覚を見せていたのかもしれない。

そう思いながら、手の中に違和感を感じた。


「あれ、この薬……」


お姉様に貰った薬が握られていた。


「……」


私は薬を見つめた。


「んっ…………」


私は一気に飲み込む。

体に見た目の変化は見られない。




「…………お腹、すいたな……」




強いて言うなら……空腹感が私を満たしたくらいだが–––















––––––––––ザワッ––––––––––






次の瞬間、私は見知らぬ世界へ入った。

だが私は、その世界に入った瞬間に思った。

ここは私の世界である、と。




そこからの記憶は、酷く曖昧だ––––





























「––––邪魔したら、コ ロ ス 」



私は咲夜に、冷たく言い放つ。

もはや私は、自分がユメクイになった経緯などどうでもよくなっていた。

とにかく自らの欲求を満たすために行動していた。

踊り狂う人を見ることや、怯え惑う人を見るのも好きだし、それを食べるのも好きだった。



だから私は今も、こうして笑っているのだ。



「キャハハハッ!すごい声ね!もっと出して!!」


両膝を破壊された者たちが、私の目の前でのたうちまわる。

それが滑稽で愉快で堪らない。






「おいおい、随分と酷いことをしているが、そんなに楽しいのか?」


突然、肩を叩かれた。


「……え?」


振り返るとそこには、先ほど綺麗な炎を見せてくれた人がいた。

でもこの人、私が破壊したはずじゃ……?


「ははっ、驚いてるようだな。まあ、当然か。私は死んだはずだからな」

「そ、そうよ!どうしてここに……?」

「悪いな、フランドールとやら」




目の前の人は綺麗な笑みを浮かべていた。







「私は、あの程度じゃ死ねないんだ––––」













*キャラ設定(追記あり)


○十六夜咲夜

「まあ、1番早いのは、私がユメクイを殺すことでしょうね」


19歳になる程度の年齢。

冷静沈着、才色兼備………を装っている。

実力、容姿共に十分だが、自意識過剰。

しかし結構他人想いで、世話焼きな面もある。

また家事全般を余裕でこなせる為、嫁にしたい女子No. 1である。(作者調べ)


【能力 : 時を操る程度の能力】

時間を加速、減速、停止させることができる能力。

巻き戻すことや、なかったことにする事はできない。


武器としてナイフを具現化させる。

その数に制限はない。




○レミリア・スカーレット

「すぐに貴女を消してやってもいいのよ?」


14歳になる程度の年齢。

ルーミアに喰われるも、咲夜の懸命な搬送により一命を取り留めた。

しかし昏睡状態で意思を持たない為、呼吸すら自分で行うことはない。



○フランドール・スカーレット

「今の紅魔館じゃない!あの何でもない日々が良かったの!」


9歳になる程度の年齢。

謎の失踪をしたレミリアの代わりとして、紅魔館の当主になったレミリアの妹。

現在は、突然の環境の変化により、精神的に不安定な状態にある。


【能力 : ありとあらゆるものを破壊する程度の能力】

全ての物質に存在する"目"を手の中へと移動させ握り潰すことで、あらゆるものを破壊することができる。

ただし、魂や善悪などといった形のない概念的なものを破壊することはできない。


武器として炎を纏った災いの杖『レーヴァテイン』を具現化させることができる。




○紅美鈴

「私はメイドながらも、腕が立つので。適材適所というやつです」


28歳になる程度の年齢。

元門番の現メイド長。

精神が不安定なフランドールのことを、陰ながら支えている。

彼女が裏の事情をフランに話さないのは、フランの親の圧力によるものである。



○藤原妹紅

「私はその程度じゃ死ねないんだよ」


16歳になる程度の年齢。

強気で男勝りな性格の少女。

その口調は、魔理沙とは違い自然に出している。

しかし、ちゃんと女の子である。


【能力 : 老いることも死ぬこともない程度の能力】

不死身の肉体(のようなもの)を持ち、"死"に相当するダメージを負うと肉体が再構築され、完全復活する。

魂を消滅させられない限り、負けはない。


武器として炎を出現させる。

出現させた炎に限り、自在に操ることが可能。

(何かに燃え移った炎などは、操ることができない)



○鈴仙・優曇華院・イナバ

「ひ、酷いです師匠!私が師匠を裏切るわけありません!!」


18歳になる程度の年齢。

永琳を師匠と慕う少女。

真面目で陽気な性格。

本来は臆病者だがユメクイ化の影響で少し強気になった。

人は力を手に入れると変わるのである()


【能力 : 波長を操る程度の能力】

光や音の波長を操ることで幻覚や幻聴を起こす。

相手の五感に干渉できる。


武器として弾丸を発射することができる。

自らの手で拳銃のような形を作り、発射する。

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