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恐怖七十二候  作者: 如月 一
啓蟄(けいちつ)
7/72

蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)

もう、3月。

春ですね~。

 無性に背中が痒く目を覚ましました。

 夜中の3時頃の事です。

 触ってみると肩甲骨の間位から背骨に沿って小さなブツブツができているような手触りでした。

 でも、風呂場で鏡に写して見る限りは、なんともなっていないようにみえる。

 とにかく、むず痒い。

 掻いてみるが、どうも、痒いポイントを掻けていない感じでもどかしい。

 寝ることもできず、朝一番で近くの病院に駆け込みました。

 しかし、医者も首を傾げるだけで原因が分からない。

 取り敢えず痒み止めの軟膏をもらい、塗っては見ましたが、まるで効かない。

 とにかく、四六時中、ムズムズして我慢ならない。

 ろくに眠れない日が3日程続いた、これまた真夜中。

 急に背中全体が火に焙られるような痛みに襲われた。

 とても、夜明けなど待っていられない酷い痛みでした。

 すぐに救急病院にいきました。

 局部麻酔の注射をしてもらい、一息ついたところで不意に、お医者さんの叫び声が背中越しに聞こえてくる。

 続けて、看護師さんの悲鳴を押し殺したような声。

 何事かと、動こうとすると、動かないでと止められる。

 間違いなく自分の背中が原因だけど、見えないので背中で何が起きてるかさっぱり分からない。

 何が起きてるか聞いても、大丈夫ですよ、としか言われない。

 自分の周りでお医者さんや看護師さんが『ウッ』とか『ワッ』とか言いながら、せわしく動き回る状況で、大丈夫と言われても全く説得力がない。

 たまらず、体を起こそうとするところを、ガッチリ、看護師さんに押さえ込まれる。

 大丈夫ですよ、心配いりませんよ、と微笑む看護師さんの目が全然笑っていなかったのが怖かった。

 大騒ぎは2時間程続き、一段落しても帰してもらえず、結局、そのまま入院ということになりました。

 事の顛末を聞かせて貰えたのは、次の日のお昼頃。

 ここからはお医者さんから聞いた話。

 麻酔を射ってもらった時には、自分の背中には直径5ミリ程の発疹が無数にできていたそうです。

 アレルギーでできるものではなく、火傷の水ぶくれにちかい。

 炎症を起こして、少し赤みがかかった発疹の中心に黒ずんだ部分が見える。

 膿が溜まっているのかと思い、試しに一つを切開してみた。

 予想に反して膿は出てこず、その代わり黒い糸のようなものが2本、ニューと出てくる。

 なんだろうと思って見ているとメリメリと皮膚を破って小さな虫が這い出てくる。

 真っ黒な体長5ミリ、幅2、3ミリのカミキリ虫見たいな奴だったそうです。

 うわっ、と思ったところで発疹が一斉にザワザワ蠢き出して、それから、次々、皮膚を破って同じような虫が這い出てくる。

 どうしょうと思って見ていると、その内、一匹、二匹と飛び始める。

 で、大騒ぎ。

 その後、色んな事を聞かれました。

 海外に旅行に行ったか、とか。

 発症する前後で異常はなかったか、とか。

 変わったものは食べなかったか、とかね。

 まぁ、背中から虫が涌いて出てくるような心当たりは全くありませんよ。

 その後も、お陰さまでなにも変わったことは起きてません。

 虫ですか?

 どこかの大学に持ち込まれたとか聞いてますが、それっきりですね。

 え?

 いつ頃の話か、て事ですか?

 確か、3月5日頃ですかね。

 え?!

 丁度、啓蟄た?

 怒りますよ。

 マジで!







2017/03/05 初稿

2018/08/18 形を整えました


次話投稿は3月10日を予定しています。


次話 桃始笑ももはじめてさく

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