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恐怖七十二候  作者: 如月 一
立秋(りっしゅう)
39/72

蒙霧升降(ふかききりまとう)

Yさんのおじいさんは若い頃漁師をやっていた。

そのおじいさんからYさんが聞いた話だ。

おじいさんが漁をやっていた土地は、丁度今時分の8月の中旬頃、たまに深い霧がでた。

一度霧が出ると牛乳を流したように真っ白になり、伸ばした自分の手すらよく見えなくなる程酷くなる事も多かった。

当然、出港前に霧が出れば船を出すことはなかったが、船を出してから急に霧が立ち込めることもあった。

そうなると大変だ。

他の船の位置はおろか、自分達のいる位置さえ分からなくなるのでいつ浅瀬に乗り上げるか知れない。

そんな時はみんなで船べりに張り付いて霧が晴れるまで見張ることになった。

その時もおじいさんは左舷の舳先に一番近い位置に陣取り、他の船や浅瀬がないかを見張っていた。

何十分もそんなことをしていた時、おじいさんは女のクスクス笑う声を聞いた。

勿論、船に女の船員は一人もいなかった。

最初、おじいさんは空耳かと思ったが、すぐまた聞こえてくる。前よりも近い。

もしかして、他の船が近くにいるのかと目を凝らして笑い声のした方を見る。

舳先の方だった。

霧が深くなにも見えない。と思った時、突然霧の中から女が現れた。

髪が長く、白い服を着た女。下半身は無かった。

女は音もなく滑るようにおじいさんに近づき、そのまますり抜ける。

びっくりして、おじいさんは声を上げてのけ反る。

そのまま船から落ちそうになるのを懸命に堪える。

ちょっと間を置いて、後ろから同じような叫び声が二度して、さらに水音がこれまた二回した。

誰かが海に落ちたということで、浮き輪を投げたり、大声で名前を呼んだりとその後、大騒ぎになった。

霧が深かったが海は穏やかだったので泳ぎが達者な若い漁師が二人とも溺れるなどあり得ないはずだが、結局、二人は帰らぬ人となった。


海じゃ、たまにな。

起こるもんだ


おじいさんはYさんに最後にそういったそうだ。




2017/08/18 初稿

2017/08/18 後書き補足。

久しぶりに実話怪談風です。

昔、お化け屋敷に行った時、部屋中にミストが撒かれていて何だろうと思っていたら突然、女の人の姿が現れるとスーと近づいて来て非常にビックリした事が有りました。部屋の反対側から映写機で画像が投影されていました。ミストがスクリーンの代わりになったんですね。目の前まで来られましたよ。女の人。

これは実話です。


次話投稿は8月23日を予定しています。


綿柎開わたのはなしべひらく

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