プロローグ
プロローグのみです。この物語には推理という程のものは出てきません。ジャンル的にはサスペンスかと。話を書くことが初めてなので読みにくいかとは思いますがよろしくどうぞ。
穏やかな日だった。そよ風には芽吹いた花の匂いと土の匂いが混ざり合い、春の独特な香りがした。
私は小さな公園のベンチにいた。目の前では小さな子供たちが駆け回り、それを少し離れたところから母親らが見守っている。平和そのものだ。
しかし、私の心はそうではなかった。今まで『神のお告げ』なんてものは信じていなかったが、私は恐らくそれを体験したのだろう。選ばれた人間にのみ知らされた真理。あまりにも唐突ですぐには理解ができず呆然としてしまったし、混乱もした。だが気づいたからには皆に知らせなければならない。それが私の役目だと確信していた。
昨日もたらされた『神のお告げ』は想像したこともない内容だった。今までの倫理観や価値観、道徳心をも覆してしまう。果たしてこれをどのようにして皆に伝えるべきか。ただ呼びかけたところで理解されないのは目に見えている。真理はあまりにも今の世界の考えとはかけ離れていたのだ。どうすれば、どうすれば。
何かが足に当たった。黄色いゴムボールだ。前を見ると3メートルほど離れたところに小さな女の子が立っていた。
「君のかい?」
女の子は小さく頷いた。私がボールをひろって投げてやったら、彼女は小さく頭を下げて母親の元へと走って行った。
ボールを投げてやった自分の両手を見つめてみる。教師はどうだろうか。まだ何にも染まっていない小さな子供たちなら私の言葉にも素直に耳を傾けてくれるのではないだろうか。
しかし冷静になって頭を振る。いや、駄目だ。時間がかかりすぎるし対象が少ない。もっと多くの人間に、短期間で気づかせなければ世界を変えることは出来ない。
しばらく考えていたら、視界の上に靴があるのに気づいた。先程の女の子かと思ったがそれにしてはサイズが大きい。顔を上げてみると見たことのない少年が立っていた。黒いパーカーにジーンズとスニーカー。どこにでもいる普通の少年だが中性的な顔をしていて見る人によっては可愛らしいと言うだろう。
「お兄さん、火持ってる?」
少年はどうやら青年らしい。煙草のケースをかかげて私に聞いてきた。なるほど、この公園には彼に火を提供できそうなのは私しかいない。私がライターを見せてやると彼は私の横に座った。
「お兄さん、何考えてたの?難しい顔してたよ」
火をつけてやると青年は話し始めた。彼の方を見ると暖かな日差しが彼の黒い髪に反射して、まるで彼自身がキラキラと光っているようだった。暫くの間見とれてしまったのは黙っておこう。
「俺に聞かせてよ、お兄さんの話」
ニコニコと笑いながら青年が言った。それでは手始めに彼に私の教えを説くことにしよう。考えるのはその後だ。
話している途中で気づいたが、彼の瞳はどこまでも黒く美しかった。
物語は次から始まります。ぼちぼち書いていければなと思ってます。お粗末さまでした。