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小さな掌
「陽愛…っ」
目が覚めたのは、どれくらい時間がたってからなのだろう。
まず最初に目に入ったのはうっすら涙を滲ませた蒼太の顔。
「蒼太…」
そっとその顔に手を伸ばすと力強いその手が優しく包んでくれる。
「ありがとう、本当に…」
そっと首をふる。
「ありがとうは、私の方だよ」
蒼太がいなかったら私は母親になれなかった。
こんなに幸せになれなかった。
こんなに人を愛せなかった。
「陽太は?」
私たちの名から1つずつとったその名前。
汐里がそっと腕に抱いて私に近付ける。
「…初めまして、よろしくね」
眠っている陽太を見つめる。
「口元が蒼太そっくりね」
「目元は陽愛に似てる」
眠る我が子を二人で覗きこんで、どこがどっちに似てるとか、そんなこと1つをとっても幸せで、この幸せを守りたいと思う。
そっと指先で陽太の小さな指をつつくと、小さな掌がぎゅっと指先を包み込んだ。
…この子はきっと蒼太に似たいい子に育つわ。
零れた涙がどこか温かく感じた。




