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大輪の紫陽花
晴れることはなく雨が降り続ける。
私のお腹も少しずつ大きくなっていく。
「陽愛、無理してるんじゃない?」
汐里は私の腰に手を当てて心配そうに言う。
「大丈夫よ。少しくらくらするだけ…」
言いつつ自分の顔がひきつっているのがわかる。
「顔色が悪いわ、少し横になりなさい」
少し怒ったように汐里は私を寝かしつける。
「目を離したらあなたは起き上がるでしょ、あなた一人の体じゃないのよ」
その言葉に甘えて眠りにつく。
夢を、見た。
幼い蒼太があの庭園を駆けている。
大輪の紫陽花の中を元気よく駆けている。
蒼太に声を掛けようとすると、違うところから声が掛かった。
「危ないぞ」
…蒼太?
蒼太が二人?
違う、これは夢。
もしかして、あの蒼太そっくりの子は私の子?
「父上、母上は…」
幼いその子は何かを言おうとしていたけれど、
そこで目が覚めてしまった。
私は、どうしてあそこにいなかったのだろう。
あの子は何を言おうとしたの?
どうしてもよくない方向に考えてしまう。
窓から庭園を見下ろすとあの夢のように、大輪の紫陽花が溢れんばかりに咲いていた。




