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薄紅の蕾

柴咲家で起こった事件は重臣にのみ開示され伏せられた。

蒼太が私を少しでも傷付けまいとしてくれたことだった。

汐里も蒼太も前と何も変わらない態度で私に接してくれる。

「陽愛、少し散歩に行かない?」

汐里が部屋に籠りきりな私を気遣ってくれる。

それでも、外に出るのは怖かった。

どんなに酷い人達だったとしても大切な命を奪った。

今でも夢に出てくる雪の中に浮かぶ梅の花。

自分で選んで罪を背負ったはずなのに、いつまでも苦しいまま時は過ぎていく。

「外には…行かないわ」

窓から見える外の世界は白銀で美しかった。

今はそれで充分だと呟く。

ずっとこのままではいけないとわかっているから、あと少しだけ、この安全な空間に閉じ籠っていたかった。


「陽愛、ちょっと来てくれ」

部屋に顔を覗かせた蒼太が強引に私の腕を引く。

「どうかしたの?」

久しぶりに部屋から出た。

風が優しく吹いている。

「見てくれ」

庭園の隅にに連れてこられて驚く。

溶け出した雪の中、小さな膨らみがあった。

鮮やかな明るい薄紅の蕾。

私が部屋に籠っている間に季節は進んでいたらしい。

「陽愛、これからも一緒にこの庭の景色を見ていこうな」

そっと繋がれた手が優しい。

「蒼太…ありがとう」

溢れる涙を蒼太が優しく指先でぬぐう。

「やっと、笑った」

私が何をしたとしても、蒼太は私を愛してくれる。

そして、私は何があっても蒼太を愛して守り抜いて見せる。

背負った罪に囚われていてはいけない。

私は、前に進む。

繋いだ手が、私を前向きにしてくれた。

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