23/62
一番
いつもより遅い時間、いつもの部屋に戻ってやっと二人きりになれた。
暗い部屋にそっと明かりを灯して夫になったその人を見る。
少し紅くなった頬を指先でそっと撫でた。
ゆっくり、こちらを見る彼の胸にそっと顔を埋める。
「陽愛、これからは自分を一番にしろよ」
そっと包み込むように抱き締められる。
「私は蒼太が一番だよ」
心臓の音が聞こえる。
「じゃあ、俺は陽愛を一番にする」
優しいその声が響いて聞こえる。
幸せを痛感して、涙が零れた。
「こんなに幸せに生きていけるなんて、想像もつかなかった」
小さく呟くと、蒼太が私の頤にそっと指を添えた。
ほんの暫く見つめ合う。
瞳をそっと閉じると、自然と唇が重なった。
そうしてやっと夫婦になった実感がわいてきた。
初めての口付けは、優しい涙の味がした。




