妹
部屋に戻ってからずっと、ぼーっと外を眺めていた。
この景色を雪乃さんは見ていたのだろうか。
一度思い出すと断片的にしか思い出せなかった記憶が溢れるように思い浮かぶ。
ふと、蒼太に会いたくなった。
ゆっくり立ち上がり、蒼太の部屋に足を運ぶ。
「陽愛様、蒼太様は今お出掛けになられています」
部屋の前でショートヘアの小さな女の子に声をかけられた。
「えっと、ありがとう」
瞳の大きな可愛い女の子、今まで見たことがないけれど…
まじまじと見つめていると女の子は笑って言った。
「汐里の妹の香織です。始めまして」
汐里の妹、初めて会った。
一体いくつなんだろうか。
思ったことが顔に出ていたらしい。
「こう見えてもう15歳です」
拗ねたように香織は呟いた。
「えっ、そうなんだ、よろしくね!」
笑ってごまかしていると香織は「それではまた」と言い残し立ち去った。
1つ下だったのね、と軽く驚いてその後ろ姿を見つめた。
汐里とは3つ違いの妹、その姿を見て
陽葵の顔がふっと浮かんだ。
明るくて可愛い笑顔。
私があの子をどう思って見ていたか、何も知らないで私を見つめる。
まだ10歳の、幼い妹。
あの笑顔が憎くて、いつも見ていないふりをした。
きっとこれから先も一生仲良くなどできない、解り合えない妹。
幸せなあの子には私の気持ちはわからないだろう。
蒼太がいないならと、のろのろ自室に戻った。




