予告された破滅
斜志野 九星という者です。
ある方から頂いた『感謝の言葉、別れの言葉』というテーマを元に書きました。
文章がおかしいところ、誤字・脱字、こうしたら良いというところありましたら、コメントお願いします。
俺たちは空を見上げていた。
俺たちと言っても、俺の親や友達だけじゃない。
全宇宙の生物が揃いも揃って空を見上げている。
今日、俺たちの宇宙が崩壊する。
1週間前、宇宙統一政府が発表した事は、俺たちに衝撃を与えた。
宇宙が崩壊するとは、どういうことなのか?
科学者は、その優れた頭脳を結集し、解明しようとしたが全くの謎だった。
宗教は揃いも揃って、世界の崩壊という言葉を使って信者を集めようとした。
政治家たちは、何とか自分だけでも生きようとあたふたしていた。
だが、それらが無駄なのは彼ら自身も分かっているみたいだった。
何かの間違いなのではないか?
そう言う人もいたが、不安を隠そうとしているだけなのは、明らかだった。
そして、まるで一瞬であるかのような1週間は過ぎ、今日になった。
「ねえ。きっと、大丈夫だよね?」
隣で幼馴染の千穂が言った。
ショートヘアの俺と同じくらいの女子だ。
小さい頃からよく一緒に遊び、よく喧嘩した。
「ああ。大丈夫だ。何かの間違いに決まっている」
1週間前、俺はこれからもこの日常が続くと思っていたし、今も思っている。
そろそろ、宇宙統一政府が発表した崩壊開始の時刻だ。
これで何も起きなければ、俺たちの日常は続く。
頼む……
何も起きないでくれ……
ガチャ……
ワールドクロックの針が、崩壊開始の時刻を告げる。
何も……起きない?
「何だ! 何も起きないじゃないか!」
学友の三郎が騒いだ。
「結局、宇宙統一政府のデマだったんだ!」
「なーんだー」
他の友達も口々に安心の言葉を発した。
俺も胸を撫で下ろす
だが、
ビッキィィィィィィィィィ!!
今まで一度も聞いたことのない音が聞こえた。
聞いたことがないはずなのに、その音に異常な恐怖感を覚えた。
「上を見ろ!!」
誰かが叫んだ。
上を見上げると……
空が裂けていた。
そうとしか形容できなかった。
何もないはずの空が裂けていた。
ビキィィジュバジュバダラジャバー
裂けた空から、得体の知れない液体が落ちてくる。
まるで、呪いか何かのような液体が落ちてくる。
「きゃあああああああああああああああああ!!」
「うわああああああああああああああああああああ!!」
人々に液体が降りかかる。
「ああああいやぁ……」
「ヒッ! いやだーーーーーーーーーー!」
液体に呑まれた人々は跡形もなく消えてゆく。
「逃げるぞ! 千穂! 三郎!」
俺は千穂の手を取り、逃げようとした。
千穂は無言で俺の手を握り返した。
だが、三郎の返事がない。
「三郎!?」
さっきまで、三郎が立っていた周辺は、とっくに液体で一杯になっていた。
返事はなかった。
最後に何か話したかった……。
「そ、そんな……」
俺は無我夢中で走り出した。
直後、液体が俺の立っていた場所に落ちてくる。
ビッキィィィィィィィィ!!
ジュバジュダヴォダァァァ!!
空が次々と裂け、そこから大量の液体が零れる。
「みなさん! 見ているでしょうか!? この地獄を!! 私たちは無事に生き残れブジャバビジャバー」
ビルに設置されているテレビジョンが世界中でこの状況が起こっていることを知らせている。
「こちら宇宙ステーション! 宇宙が今まで見たことのない物に変貌してグギャジャベチャー」
ビルに設置されているテレビジョンが宇宙中でこの状況が起こっていることを知らせている。
今や俺たちの宇宙は、裂け目と謎の液体と生物たちの地獄絵図でのみ構成されていた。
ジュババババババババ!!
目の前の地面が突如として無くなった。
急ブレーキをかけたため、何とか落ちなかった。
シュバギュビジュビジャバー!!
もし、あのまま走り続けていたらと思うとゾッとする。
地面からあの液体が噴き上げた。
それはまるで、この宇宙の物ではないかのように、重力を無視して天高く上がっていった。
「はぁっ……はぁっ……」
走るのをやめたため、気持ち悪くなった。
やばい。
逃げない……と……
ビッキィィィィィィィィィ!!
近くであの嫌な音が響く。
「えっ!?」
千穂の真下にあの裂け目が現れた。
千穂が落ちていく。
「千穂ぉぉぉぉぉぉ!!」
グジョギジョベギョグギャ
ありったけの声で叫んだが、液体の音でかき消されてしまう。
俺は落ちていく千穂をただ見守ることしかできない。
千穂は何かを言いたげに俺を見ている。
いったい、何が言いたいんだろうか?
いつもなら、すぐ聞けるのに……
そして、千穂は奈落の彼方に消えてしまった。
「ちくしょおおおおおおおおおおおおおお!!」
辺りの景色はいつの間にか裂け目と液体の方が多くなっていた。
それはまさに、神話等でよく描かれる世界の終末そのものだった。
「何で! 何で!」
俺はもはや本能レベルで走り出した。
さっきの気持ち悪さは何処かへ行ってしまうほどに走り出した。
「何で! 俺たちが何をしたって言うんだよ! 何で壊されなきゃならないんだよ!!」
泣きじゃくりながら走った。
俺たちの日常は今や跡形もない。
あるのは、人々を引きづり込む裂け目と人々を消し去る液体だけ……
「もっと、みんなと勉強したり、遊んでいたかったのに!! 何で!!」
どうやっても、この崩壊に抗う術はない。
それはもう分かり切っているが、絶望したくはなかった。
いや、絶望を誤魔化そうとしていた。
必死で走り続けた。
もはや、世界は裂け目で覆われ、何とも形容しがたい色になっている。
液体もどんどん辺りを埋め尽くしていく。
そして、
「あっ……」
遂に俺も裂け目に落ちてしまった。
ああ……
もっと、みんなと一緒に居たかった……
せめて、別れるのなら、「ありがとう」とか「さようなら」とか言っておきたかった……
世界が終わることは分かり切っていたのに……
何で、あんなに悠長にしていたんだ……
後悔しか残らない……
ベチョギグチョバチョ……
千穂に、大事なことを言っておけば良かった……
グジョリベチャリゴポ……
千穂……大好きだ……
数多もの宇宙が泡のように存在する空間。
その一つが、泡のように消えた。
中にいる生命が何を思おうと、ただの自然現象に過ぎず、抗えない。
生命に許されるのは、破滅するまでの時間、どのように有意義に過ごすかだけである。
あなたも経験がありませんか?
もっと一緒に過ごしたいのに、
もっと一緒に遊びたいのに、
ルールによって、無理矢理引き剥がされることが……。