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閑話 真・三国大戦







―――――――――――――――





「二人とも、何をしてるんですか?」


僕は数え役満☆姉妹の楽屋の前にいた。


『幺戯こそ何を?』


そう言ったのは曼珠。


「のぞき……?」


そう言ったのは沙華。


「違います。……僕はその、頼まれ事を」


腹の探り合いが続く。というか互いの目的は分かっている。


そして三人は同時に動いた。


―――バン。


「……えっ!?なに?」


張宝が驚きの声を上げる。


『皆さん、猫耳(犬耳)(兎耳)を付けてください』


僕らは三人は同時に付け耳を取り出す。


まぁ、なんというか。


…………バカなのだった。








「ほぁぁぁぁ!!」


三国主催の数え役満☆姉妹のライブは大盛り上がりだった。


ステージの上では張角たちが歌って踊っていた。


その頭の上には…………。


張角は兎耳。張宝は猫耳。張梁は犬耳。


それぞれの付け耳も踊りに合わせて揺れていた。


「ちっ。できれば全員、猫耳なら良かったのだか………」


猫耳帝国の野望は未だに諦めてはいない。


『それはこちらも同じ』


「ようぎが邪魔しなければ」


ライブを観戦しながら僕らはぼやく。







「かんぱ~い!」


ライブの打ち上げで宴会が開かれていた。


「あれ?何故、僕らも呼ばれているのですか?」


『犬耳堂はこの興業に支援している。だから呼ばれた』


「そうなのですか。知りませんで…………って今さらりと犬耳堂って言いましたか、曼珠。猫耳堂ですからねッ!?」


「ちがう、兎耳堂……」


「それも違うッ!?……てか、君らこんな子だっけか?もっと慎ましやかな」


『あれは……』


「……ねこかぶり」


猫耳堂だけにってか。全然上手くねぇよ、ちくしょー。


「あ、いたいた。おーい」


そんなことをしていると僕らの所に張角たち三人がやって来た。


「おや、どうもお三方。興行大成功でよかったですね」


「ありがとッ。この付け耳のお陰でいつも以上に盛り上がったわ」


張宝が自分の頭の上の猫耳を指す。


「うんうん。お姉ちゃんもこれ気に入っちゃった。可愛いもんね」


張角がたゆんたゆんと弾ませて言う。


何がとは追記はしない。


「ふむ。よろしければ差し上げますよ?」


「え?……いいの?」


張梁がそう聞く。


「まぁ構いませんよ。曼珠、沙華、君たちもいいよね?」


『問題無い』


「……(コク)」


「わぁ、ありがとう~。お姉ちゃん、感激~」


たゆんたゆん。


何が?……いや、あえて言うまい。


これでまた、ね『犬耳』帝国への野望が………んぅ?


「人の思考にまで入ってくるなぁぁぁ!!」


叫び声がこだまする。







「旦那、これはどういうことなわけ?」


「時として人には退けぬことがある」


「……へぇ」


郢士のジト目を受けながらも僕はそこに凛として立つ。


広野に佇む数百万の軍勢。


「相手は強大。しかし臆するな、我が兵たちよ」


僕は僕に付き従って来てくれた兵を鼓舞する。


「我に大志在り。我に野望在り。我が大志を果たすは最早、天命。我が野望を歩むは最早、運命」


僕は掲げる。常に戦いを共にした『中古のとも』を。


「行けッ!?我らが精兵よッ!?偽りの大志を掲げる輩に天誅をッ!?」


『応ぉぉぉ!!』


ここに新たな三国時代が幕を上げる。







「調子乗んなッ!?」


「げふッ」


横腹を思いっきりド突かれました。


「いやはや、小角さんはノリノリですね~」


僕にツッコム郢士を見ながら程イクがクスクスと手を口に当てて笑っている。


はい。ごめんなさい。今は御前試合です。


それも三国の名だたる武将を集めた豪華仕様なのです。


そこに何故、僕らがいるかと言いますと。


まぁとある因縁を断つために。


………ぶっちゃけ犬耳、兎耳をぶっ潰す。


というわけで今、三つの勢力に分かれ、開始の合図を待っているわけで。


暇だったので兵たちとちょっと悪ふざけを………。


兵たちも意外とノリノリだった。


「小角さ~ん。たんぽぽの部隊、準備はできたよ」


そう報告に来る馬岱。


ちなみに武将たちは三国から三つにバラバラに配置されていた。


あ、ちなみに。全武将には各陣営の付け耳を付けてもらっていますよ。


勿論、我が陣営は猫耳だ。


御前試合があると聞いて僕らは曹操の下へ行き、ある提案をした。


曰く、平和的戦争代理の仕方の提案。


その名も……………。


――――『付け耳騎馬戦』


ルールは至って簡単、全武将は付け耳を付け、それを取られたら負け。


まぁ、そんな感じだ。


そして我らが相対するは、犬耳、兎耳なのは言うまでもない。


「ちょっとアンタ、浮かれてないでこっち来て指示聞きなさいよ」


僕が遊んでいるのを見て、荀イクがそう言う。


「えぇー」


「ちょ、なんで、えぇー、なのよ!?」


「いや、だって作戦とか、面倒いし」


「なぁッ!?華琳さまの御前試合なのよ!?もう少しは気合いを入れなさいよッ」


彼女がここにいるのは単に付け耳を付けなくてもいいからだろう。


貴女は猫耳フードがありますものね。


「いいから聞いときなさいッ」


「はいはい」


あ、そう言えば僕がこの軍の大将だったりします。


さぁ、開戦間もなくですよ。







ドーン、ドーン、ドーン。


開始の銅鑼が鳴り響く。


さぁ開せ――――。


「さぁ、裏切れッ!?」


―――へっ?


周りの兵が僕へ得物を向ける。


「……これはどういうことですか、文若殿?」


僕は兵を指揮する荀イクへ視線を向ける。


「これは華琳さまからの指示よ」


あぁ、なるほど。


「ふふふ。面白いことを考えますね」









「さて、小角はどうするのかしらね……」


「本当に良かったんですか?」


曹操が笑みを浮かべながら呟くと隣に座っていた劉備が少し困ったような顔で言う。


「まぁ、いいんじゃない。……小角だし」


「そうよ、小角だもの」


それは理由になるのだろうか?


「……そう、ですね」


まぁそれで納得する劉備も劉備だが。


そして再び試合を観戦し始める王たち。










「はーはっはっはっ」


高笑いしながら僕は愛剣と共に戦場で遊び舞う。


「弱い弱い、弱すぎますよ。どうしました?平和すぎて府抜けているのですか?はーはっはっはっ。一介の商人風情すら捕まえられないとはなんたる怠け、怠惰ですか」


次々に迫り来る剣を弾き、付け耳を取っていく。


そう言えば男性の兵も付けるのでしたね。少し失念してました。


なので回収しましょう。


男性の兵は素早く回収、女性の兵は眺めて回収。


ふふふ、ふはははッ!?


まさに楽園か。猫耳に囲まれたここはパラダイス。…………て馬鹿ですね、僕。


「小角さん。悪いけど、ここから先は通さ―――」


「甘いですね」


立ちはだかる馬岱の横を疾風と化した僕は通り抜ける。


「―――ない。って速ッ!?」


しかし馬岱の猫耳は取らない。


何故かって?それはとても似合ってるからですよッ!?


「はーはっはっはっ。それでは僕は先を急ぎますから」


「ちょっと待ってよぉぉぉ!!」


僕は戦場を駆け抜ける。








「………これは予想以上ね」


「これで商人って言うんだから、困ったものよね」


「スゴいです」


王の三人は感嘆の呟きを漏らす。


数百万を相手に颯爽と駆け抜ける小角。


確かに単身で本陣に乗り込んで来たことはあったがそれは不意打ちと言うこともあった。


たがしかし今は事前に全軍に通達してあるのにも関わらず、小角を止めることは出来ない。


改めてあの規格外を痛感していた。








「はーはっはっはっ。我に天命在りッ!!」


高々と掴んだ数多の猫耳と他二種類の付け耳を掲げる僕。


そして目の前には…………。


「くっ。こうもあっさりとここまで辿り着かれるとは……」


兎耳軍大将、孫権。


「小角殿、やはり貴女はただ者ではありませんね」


犬耳軍大将、関羽。


「ふむ。良き素材を探し当てましたね、曼珠たちは……」


「……?」


「忠義の将たる関羽は言わずと犬耳属性だが、一見、凛々しく泰然とした孫権、だがしかしそれは王族としてのプライドからなるもの。本来は寂しがり屋の兎耳属性であると見たッ!?」


「口に出ているぞ、小角殿……」


「うなッ!?僕としたことがつい……」


「わ、私は別に、寂しがり屋では………ゴニョゴニョ」


「ふふふ」


「わ、笑うなッ!?」


「さておふざけはここまでにして。お二人の付け耳頂きますよ」


僕は手をワキワキとさせる。


「な、何だか手つきがいやらしいぞ、小角」


孫権が少し引きつった笑顔をする。


「あぁ、それは気のせいです」


「嘘だッ!!」


見開きカラーページッ!?


あ、分からない人は華麗にスルーで。


「じゃあ、その通りで」


「開き直ったッ!?」


「あはっ」


僕、物凄く良い笑顔。


「この変態旦那ぁぁぁ!!」


「ぐふッ!?」


くの字に曲がる僕。勿論、横にだが。


「全く、何してんのさ、旦那」


「だから人は横には曲がらないと言ってるじゃないですか、朝夜」


僕は『何も付けていない』郢士に文句を言う。


あ、衣服のことじゃないですよ?今、エロいこと考えた奴、………千切るよ?


「それで…………朝夜はどっちなのですか?」


無印の郢士に僕は言う。


「アタイは旦那の丁稚だよ?」


郢士は笑う。


まるで月のような笑み。


僕のような笑み。


「そうですね」


僕は剣を構える。


そして郢士も双剣を構える。


「無色透明の商人」


「どの国にも属さず」


「どの主にも媚びず」


『我が身の為にのみ戦う』


そして僕と郢士の剣が交差する。


僕は僕の為に。郢士は郢士の為に。


剣は交差する。


自分の為に。


ただ、己の為に奮う(ふるう)剣技。


「旦那はアタイの攻撃避けれたことないの忘れたの?」


「それは避けたことが無いだけですよ」


『ふふふ』


二人は同時に笑う。


小角の戦闘スタイルは大振りなものだ。


小角自身、力はそれほど強くない。それは一般的なものだ。


だからこそ体のバネを存分に使って打ち出す剣撃は体全ての重みを持ち合わせる。


かと言って軌道が分かりやすいわけではない。


しょうと思えば剣筋を180度急回転させることも出来る。


要は力の流し方が上手いのだ。


一方、郢士の戦闘スタイルは小さな双剣の苛烈な連撃だ。


武器の大きさも相成って、それは張遼の神速にも近いものがある。


しかもその連撃の僅かな合間すら無いのだ。


それも力の流し方だ。


謂わば二人の戦い方は両極でありながら、同じなのだ。







「……凄い。まるで二人で演舞を踊っているかのようだ」


二人の戦いに孫権が声を漏らす。


それは隣で見ていた関羽も同感だった。


いや、この戦いを見ているもの全てが二人に魅せられていた。






「旦那、そろそろ疲れたんじゃない?降参してもいいよ?」


「ふふ。いえ、まだまだ行けますよ?それより朝夜の方が少し動きが鈍くなってますよ?」


ここで勝敗を決めるのは体力だろう。


その分では小角が有利と言えた。だが――――。


(ん?何かを狙っているのか?)


郢士の目には未だに光が消えていない。


そして時は動いたッ!?










「あっ、美以ちゃんがベトベトの液体に絡められてるッ!?」


そう叫んだ郢士。


『……は?』


戦いを見守っていた全員の頭に?が乗っかる。


「ふふ。朝夜、姑息な手ですね。そんな手に引っか…………」


小角が勝ち誇った笑みをした、その時。


「べとべとだじょ~」


「――何ぃ!?」


振り向いた。思いっきり後ろを振り向いた。


そこには――――。


「嘘だじょー」


あっかんべーした孟獲が立っていた。


「しまっ…………!!」


「隙ありッ!?」


小角が振り返った時には郢士が既に小角の猫耳に触れていた。


「敵大将、役小角。郢士が討ち取ったぁ!!」


「な、何てことだ。この僕が敗れるとは………」


こうして三国一アホくさい対戦は幕を閉じた。












「よくやったわね、郢士。誉めてあげるわ」


今日の功労者、郢士は王たちから激励の言葉を貰っていた。


「ありがとうございますッ」


「うぅー。あんな子供騙しに引っ掛かるとは………」


その横で僕はぐるぐるに縄で巻かれていた。


………何故?


「それじゃ、早速褒美をあげなくちゃね」


「へ?」


なにそれ?初耳ですけど、僕?


「模擬戦の前に全部将に通達しておいたのよ。小角を討ち取った者には望みの褒美を与えるってね」


僕の疑問に孫策が答える。


「で。郢士、何か欲しいものはあるかしら?」


「じゃあ、旦那。宵月の旦那が欲しいです」


はいぃ!!なにそれ?朝夜さん、何言ってんのよ!?


「そ、そう。分かったわ。(こうも真っ直ぐ言われるとは思わなかったわ)」


いやいや、何やら僕を取り残して話が進んでますけど………。







だからどうしてこうなった?


僕と郢士は一つの寝室に運び込まれた。


「……あ、朝夜さん?」


何も喋らない郢士に僕は語りかける。


「とりあえず、縄を…………ってうわッ!?」


いきなりの浮遊感の後、ボフッと柔なか感触が僕を襲う。


「痛ッ、いきなり何を―――」


―――ドサッ。


抗議しょうとした時、僕のお腹の辺りに重さを感じる。


見ると………。


「………旦、那」


郢士が僕に馬乗りしていた。


「よ、郢士さん?」


「旦那、旦那、旦那旦那旦那………」


顔を真っ赤にしながら、旦那と呟く郢士。


「朝夜……」


「旦、那……だ、んな。―――宵月」


―――ドクン。


僕の名を呼ぶ郢士に僕の心臓は跳ね上がる。


「………宵月」


「………朝夜」


僕らは薄暗い部屋の中で見つめ合う。












えっ、それから何があったかって?


それは…………。


言わせないで下さいよ////。


「あっ。朝夜、おはようございます」


「……ひゃっ。だ、だだだ、旦那ッ!?」


僕の顔を見るや否や、顔を真っ赤にして走り去っていく郢士。


「おや?元気がいいですね。何か良いことがあったのかい?」


僕が1人呟いていると。


『――幺戯』


曼珠が後ろから現れた。


『郢士に何したの?』


「うん?いや、まぁ、なんと言いますか………」


『×××』


「ぶっ!?……な、何をいきなりッ!?」


『×××で××を××して×××なのか』


いや、いきなり伏せ字を連打しないで下さい。


『それから―――』


「もういいからッ!?」


『ふん。―――郢士だけズルい』


「……は?」


『今日は私の番ね』


「………はいぃぃぃぃ!?」


「じゃあ、あしたは私ね」


どこからか沙華まで現れてトンデモ発言投下する。


『じゃあ、今日、三人ですればいい』


「うん。いい」


「よくねぇよッ!?」


なんだコイツらマジでキャラ崩壊してやがる。


『仕方ない。じゃあ、諦める』


「分かってくれ……」


「ようしもいれて四人でする」


「分かってねぇぇぇ!?」


こんなことをこれから続けなくちゃいけないのか……………。





ふふふ。楽しすぎるじゃないかッ!?





「――旦那ぁ!曼珠ちゃん、沙華ちゃん!お店、手伝ってぇ!」


郢士に呼ばれて僕らは店に出る。


まぁ、僕が望んで手にいれた未来だもの。存分に楽しむとしましょうか。






『そして今夜は………』


「四人で…………」


「まだ言ってんのかッ!?」


以上。『その空を仰ぎ見る者は………』の再投稿はこれにて終了です。


皆様が楽しんでいただけたのであれば幸いです。


では、またご縁がありましたら……。

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