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21話 諜報員の彼女と……








――――――――――――――




「ふぅ~こんなものですかね」


只今、僕細工中。


もちろん自作猫耳です。


―――トントン。


「はい」


「陸遜です~。ちょっとよろしいですか~?」


間延びした声が扉から返される。


と扉が開き、陸遜が部屋へ入ってきた。


「どうも伯言殿、何かご用でしたか?」


「はい~。少し小角さんに聞きたいことがありまして~」


うん?聞きたいこと?


「この帳簿なんですけど~……」


と竹簡を一つ開いて見せる陸遜。


「ん、これが何か?」


「ここのところをちょ~と削りたいんですよ~」


と示すのは呉の予算案だ。


「うん?………それは無理ですね」


「ですよね~。どうしましょう。呉もまだまだ再興には資金も要りますし、ここら辺なら削っても構わないんですけど~」


うんうん、と唸る陸遜。


「何もそこから削らなくて………」


と僕は机の上にある僕への書簡の中から一つ取り出す。


「ここならもう少し削れますよ?」


「……え?」


「あといくつか不審な流れがありましたからこちらに書き写しておきました。これらから必要分だけ削ればたぶん補えるんじゃないでしょうか?」


陸遜は僕の手渡した書簡を眺めて、パァッと明るい顔をする。


「すごいですよ、小角さん。これならなんとかできそうです~。それにしてもよく分かりましたね」


「商人ですから。お金の流れはある程度把握できますよ」


と僕は細工を再開する。


「ところで小角さんは何をしているんですか?」


「これですか?ちょっとした趣味ですよ」


「へぇ。器用なんですね」


作業を覗きこむ陸遜。


……にょわっ!?


背中越しに伝わるこの感触は………。


呉の発育、恐るべし……。


「どうしたんですか~?」


「いえ。なんでもありませんよ?」


というかわざとなのか?なんだかさっきより圧迫が強………。


「え、えぇと。伯言殿も作られますか?」


僕は意識を逸らすためにそう提案する。


「え?いいんですか~?あ、でも私あまり細かいの得意じゃないんですよ~」


「大丈夫ですよ。わりと簡単なんです」


「そうですか~?じゃあちょっとだけ……」


と陸遜は余っている部品で作り出す、が………。


「これはここで……あれ?上手く付かないです~。小角さん、これ難しいですよ~」


「いや、もう少し近づけないと見えないですよ?」


「ヤダな~小角さん。これ以上近づけたら見えないですよ」


と手元を体に近づける陸遜。


「………」


あぁ、なるほど。その豊満な双丘が邪魔で手元が見えないのかー………ってどんだけやねんッ!?


「ふぅ~、やっぱり私にはあまり向いていないのかもしれませんね~」


「……そうですね」


僕は人体の不思議を垣間見た気がした。


「あ。そうだ、小角さん、午後から暇ですか?」


「まぁ、仕事はもう片付けたので……」


「……え?」


と机の上の書簡の山を見る。


「あれって今日割り当てられた分ですよね?」


「えぇ。だから午前中に片付けました」


「………」


唖然と書簡と僕を見比べる陸遜。


「それで、昼からなにかありましたか?」


「えっ、あ。ちょっと訓練に付き合ってほしいんです」


「訓練ですか?」


「はい。本来なら祭さまとご一緒にするはずだったのですが、急にご予定が入ったとかで……」


「それで僕が代理ですか?」


「はい~。お願いできませんか?」


「別に構いませんよ」

「本当ですかッ。良かったぁ~。私一人ではどうにもならなくて……」


喜び跳ねる陸遜。


……上下たゆんたゆん。何がとはここでは追記しないのであしからず。


と言うかなにがどうしたら訓練がどうにもならなくなるのだろうか?









と言うわけで少数の部隊を引き連れて森の中へと来た僕と陸遜。


「あぁ、ところで何の訓練なのですか?」


「それは……対工作員の訓練です」


「へぇ。だから………」


一人減ってるんですね、と付け加える。


「―――えっ?」


陸遜は部隊の人数を確認して青ざめる。


「み、皆さん。密集陣形をとってくださ~い」


慌てて各兵に指揮を飛ばす陸遜。


「ふむ。ところで工作員は誰が?」


「明命ちゃんです。と言うか小角さんも気をつけてください」


「あぁ。はいはい」


周りを一応警戒。


「……幼平殿か」


それにしてもなんたる早業か。


―――ドサッ。


また一人減っていた。


そして倒れた者の顔には………。


『一番にやられました』


『最近サボり気味でした』


落書きされていた。


「なるほど。大体把握しました。それで伯言殿―――」


………………。


あれ?だれもいない。


「あぁー。BGMはひぐらしかな?」


………笑えね。


「さて、と。降参は………無しだろうな。となると」


僕はダッと走り出す。


とりあえずは見晴らしのいい所へ。





「後は小角さんだけですね」


周泰は茂みに隠れながら残った一人を見つめる。


すると小角が走り出した。


「見晴らしのいい所へ行くつもりですね」


それを追いかけていく周泰。







「この辺りなら……」


僕は少し行った所で腰を下ろす。


少し、罠を張ってみましょうか………。








少し追いかけると小角は腰を下ろし、何かをしていた。


「罠でも張っているんでしょうか?」


周泰の長年の工作員としての勘がそう告げていた。


「ならば………」


罠を張り終わる前に………。


周泰は小角の背中に忍び寄り、そして………。





「うむ。来ましたか」


(気取られたッ!?)


僕は周泰の攻撃を間一髪で前に転がり、かわす。


全然気配が感じ取れなかった。流石は呉一番の工作員。


―――スルスル、シュパンッ。


罠が発動し、対象が逆吊りになる。


「ふふ。どうですか、幼平殿」


「えぇと。小角さん………大丈夫ですか?」


逆吊りの僕を気遣う周泰。


はい、僕が罠にかかりました。


「あぁー。頭に血が昇ります。いや、この場合、下がりますと言うべきですか」


「えぇと………ご自身の罠にかかるのはどうかと思いますけど……」


はうっ!?物凄く可哀想な目で見ないで、周泰さん。


「まぁ。なんと言いますか、仕方がないのですよ」


「はぁ。……では罰は罰なので」


と筆を取りだし、顔に落書きをしようとする周泰。


「まぁそれでも成功しましたから、よしとしましょう」


「――へ?」


―――シュルシュル、スパッン。


――ブラブラ×2


「……え……えぇぇぇ!!」


逆吊り仲間ですね、周泰さん。


「……よっと」


そして僕はスルリと罠から脱け出す。


「え?え?どういうことですか、小角さん」


「まぁ、簡単に言ってしまえば僕自身をエサに幼平殿を吊り上げてみました」


字は間違ってませんよ。


「これで僕の勝ち、ですかね」


ニカッと笑ってみるテスト。


「あぅ。負けましたぁ」


敵将、討ち取ったり!?


「と言うわけでほどいて下さい、小角さん」


「あぁ、はいはい。右手をおもいっきり引っ張って下さい」


「こうですか?………て、うわわっ」


素直に従って、右手を引っ張る周泰。


「余計に絡まったじゃないですか~」


亀甲的な縛りになる罠。


「あぁ。すみません、間違えました。左でした」


「本当ですか?」


なんだか、疑いの目を向ける周泰さん。


「はい」


おもいっきりいい返事をする僕。


「……えいッ。………うわわっ!?」


今度は逆吊りから仰向け、しかも開脚状態でぶら下がる周泰。


「敵の言葉を簡単に信じては駄目ですよ、幼平殿」


「わ、わわ!み、見ないで下さい!?」


露になる下着、というか褌を隠そうと手を伸ばすが届かず、シタバタするだけの周泰。


「ふむ。幼平殿は褌派ですか。興覇殿もそうでしたかね。なるほど……」


「なるほど、じゃないですよ、小角さん!?降ろして下さい!?」


「いや、しかし万が一にもそれが虚言だというかもしれませんし」


「本当の本当に降参ですから、降ろして下さい!?」


涙目になりながら、懇願する周泰。


あ。苛めたい。


「う~む。仕方ありませんね」


と僕は周泰を吊しあげる紐を軽く引っ張る、と………。


「あわわ!?」


スルリと下に落ちる周泰。


「いたたた」


お尻を擦りながら起き上がってくる周泰。


「ふふ。掛かりましたね、小角さん」


と僕に向かって突撃してくる周泰。


「あ、幼平殿、待った……」


「問答無よ………にゃわっ!?」


と再び吊し上がる周泰。


今度は駿河問い。


知らない人はググってね。………ん?誰に言ってるんだ、僕は。


「うぅ。不覚……」


ガクンと頭が垂れる周泰。


と言うわけで一件落着、と。


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