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14話 魏の三大軍師








――――――――――――――




僕は空を見上げております。


何故かというと、夏侯惇との模擬戦の後、僕は文官兼武官として正式に曹操の客将となりました。


はぁ、空が青いです。


僕の心もブルーだぜ。お揃いだな、うふふ。


朝から兵の調練に借りだされた僕は城壁の上でサボタージュ………小休止です。


「あぁ!こんなところに居たッ!?」


ん?


「おや、文若殿。このような所に何用ですか?」


「アンタに用よ。全く、何で私が男なんか探さなきゃいけないのよ」


「そうでしたか。それでは僕はこれで……」


「なんでそうなるのよ!?全く、アンタといい、風といい。一体何を考えているのよ。そうだわ、アンタ。風を見なかった?」


「仲徳殿、ですか?いえ、見ていませんが……」


「なら、アンタも探しなさいよ。稟はすぐ見つかったのだけれど……。見つけたら私の所へ連れてきなさい。アンタも一緒に、よ。アンタにも用なんだから」


荀イクは早口で言うと城壁を降りていった。


「偉い人は言いました。ツンデレ比率が10:0であろうともデレ要素を脳内補完できれば、それは立派なツンデレだと………」


え?今、言うが意味あるのか?


さぁ。ないんじゃないですか。


さて、どこか暖かい場所でも探して、寝まし……程イクを探しますか。









「にゃ~ん」


暖かな陽射しが降り注ぐ小路に、猫と戯れる少女が居た。


「にゃ~」


「なぁう」


少女、猫と会話中。


僕、それを観察中。


「にゃぁう」


「……ぐぅ」


「寝るんかいッ!?」


「おぉう」


思わずつっこんでしまったよ。僕のキャラじゃないのに。


「おぉう。風としたことが麗らかな陽気に、ついつい」


「おはようございます、仲徳殿」


「これはこれはお兄さん。このような場所で会うとは奇遇ですね」


つかみ所のない喋り口調の程イク。


そう言えば初めて会ったとき他の二人が程イクと僕が似ていると言っていたな。


僕もこんな感じなのか?


郢士もそんなこと言っていたな。


「ところでお兄さんは何故、ここに?」


「麗らかな陽気に誘われて……」


「そうなのですか?風はてっきり、桂花ちゃんに言われて風を探しているのかと思いました」


「……知っていたんですか?」


「いえいえ、お兄さんがそんな顔をしていたので……」


「そうですか。仲徳殿はここで何を?」


「この子たちとお話していたのですよ」


この子たち、と言うと猫ですよね?………まぁそんなこともありますね。


「では僕もご一緒させて頂きますかな」


「……え?」


僕は程イクの隣に腰かける。


「知っていますか?猫は涼しいところも暖かいところも知っているんですよ」


だからここは絶好のお昼寝スポットなのだ。


「え?でもお兄さんは風を探しに……」


「あぁ、そうですね。………仲徳殿、文若殿が探してましたよ?……これでよし。それではお休みなさい」


直ぐに寝息をたて始める僕。


「………ふふ。不思議な人。初めて会ったときは不安定だったのに今はなんだか安定してます。見る度に表情を変える月のような人ですね、お兄さんは」


そう言って程イクも目を瞑る。


なんだか今は寝たい気分だったから。


その後、荀イクに見つかり、二人して引き連れていった。










―――ぷぅーーーッ!?


穏やかな午後、そんな擬音が聞こえた。


「なんでしょうね、今の音は……」


「さぁ、なんだろね」


朝夜と一緒に昼でも食べようかと思い、廊下を歩いている。


「少し見ていきますか?」


「まぁ、別にいいよ。そんなお腹減ってないし……」


と言うわけで当てずっぽうで探し始めた僕ら。







「興味本意はあまりよくない、と僕は教訓を得ました」


「なに言ってんだよ、旦那」


音の元を探して、歩いていたら、廊下を血で一杯に染め上げた現場にたどり着いた。


「おぉ。お兄さんに郢士ちゃん」


そこにはチョークのような物を持った程イクと血の海で倒れ伏す郭嘉がいた。


「犯人はお前だッ!?」


どこぞの小学生な名探偵のように、もしくはじっちゃんの名にかける高校生名探偵のようにビシッと人差し指を程イクに向ける僕。


「何、してんだよ……」


あ、痛い。蹴らないで。お約束じゃないか。


当の程イクはチョークのような物で郭嘉の周りを縁取っていた。


「って、そんな場合じゃないや。程イクさん、大丈夫何ですか、郭嘉さん?」


「あぁ。気にしないでいいですよ。いつものことですから」


「え?いつもの、ことって……」


「奉孝殿は定期的に血を抜かないと破裂してしまうんだ、朝夜」


「んなわけあるかぁ!?」


おぉ。回し蹴りになりましたよ。日々成長していて、お父さんは痛い、痛いよ。


「いや、実はお兄さんの言うとおりなんですよ」


「えぇぇ!?そ、そうだったのか、アタイ知らなかった………」


「郢士ちゃんは弄り甲斐がありますね、お兄さん」


「あまり弄ってくれるなよ、仲徳殿。僕の分がなくなってしまう」


「………う、うぅ」


事件現場の中心地が息を吹き返した。


「郭嘉さん、大丈夫ですかッ?」


郢士が心配そうに郭嘉に駆け寄る。


「………うぅ、か……りん、さま?……」


「稟ちゃん、大丈夫ですか~。華琳さまならもう行っちゃいましたよ~」


「………うぅ。はっ、これは破瓜の血ッ!?」


起き上がり早々にトンデモ発言を投下しやがる郭嘉。


「旦那、破瓜って何ですか?」


「………」


僕は程イクを見やる。流石にこれは荷が重い。


「稟ちゃん、違いますよ~」


あ、無視だ。無視してやがります。


仕方ない、ここはお父さんとして頑張りますか。


「朝夜、破瓜とは………」


僕は郢士に顔を近づけ、内緒話でもするように耳元で囁いた。


「……ごにょごにょ………ごにょにょ………ごにょ……」


ボンッ!?


↑郢士が顔を真っ赤にした音です。


「……な、なな、なななッ!?――――」


「お兄さんも悪ですね~」


「正直が一番、ですから」


未だ混乱中の郢士。


え?何を教えたのかって?それは勿論、包み隠さず、全てを、ですよ。


「それにしても話には聞いてましたが、奉孝殿、大丈夫なのですか?」


「え、まぁ。慣れてますから」


いや、どう見ても致死量なんですが……。


鼻を押さえながら答える郭嘉に苦笑いの僕。


「はい。稟ちゃん、ちーんしますよ」


程イクが郭嘉の介護をしていた。こちらも慣れたものだった。


「ふむ。お二人はこれから暇ですか?」


「え?」


「良ければお昼をご一緒しませんか?」


「おうおう、兄ちゃん。女性を誘うんならもうちっと雰囲気を出したらどうだい?」


「こらころ、宝ケイ。駄目ですよ、そんなことを言っては」


程イクの頭の上の人形が喋る。


「これは失礼しました、宝ケイ殿」


僕は人形向かって礼をした。


「やはりお兄さんはノリがいいですね~」


「軽薄なものですので。それでどうですかな?」


「風は別に構いませんよ」


「私も構いません」


「では。………朝夜、戻ってきなさい」


その後、四人と一体でご飯を食べた。


勿論、郢士と郭嘉を弄りながら。









ここは大広間。


今、大広間には僕と曹操がいた。


「それで孟徳殿、何故呼ばれたのでしょうか?」


仕事が一段落した時、曹操から大広間に来るように言われた僕。


「ちょっと頼みたいことがあるのよ」


「頼み事ですか?」


「えぇ。貴方が持っている猫耳を貸してほしいの」


「……はい?」


「なんだか前に見たときから気になっていたのよ」


前って夏侯惇との模擬戦の時ですか。


「はぁ。それでしたら構いませんが」


と言って懐から猫耳(トラ模様)を出す。


え?何故持っているかって?


猫耳常備は紳士のたしなみです。


「あら、前のとは違うわね」


「それは僕が作ったものですから。ちなみに前のは原本です」


「そうなの。ふむ、それも中々よいわね」


僕から猫耳を受け取った曹操は隅々まで見て言う。


「華琳さま。荀イク、ただいま参りました」


とそこで荀イクが大広間に入ってきた。


「華琳さま、お呼びで………げっ、小角。なんでアンタがここに!?」


僕を見つけて嫌な顔をする荀イク。


「文若殿と同じですよ」


「丁度いいところに来たわ。桂花、これを付けなさい」


宵・桂『――は?』


猫耳を荀イクの方に向ける曹操。


「えぇと、華琳さま?話が見えないのですが?」


「小角からこれを貸してもらったの。だから付けなさい、桂花」


あ、曹操さん、スゴく悪い顔を生き生きとしますね。


「アンタの差し金ッ!?」


「誤解ですね」


はぁ、とため息を吐く僕。


そんな僕らをニヤニヤと見る曹操。


「あら、桂花、私の命令が聞けないのかしら?」


「あ、いえ。ですが今、ここでですか?」


「えぇ。今、この場で付けなさい」


荀イクが僕の方を気にしながら答えると、更に悪い笑みをする曹操。


「孟徳殿、それは駄目ですよ」


見かねて僕は進言する。


「………小角」


「あら、何がかしら?」


少し不満気になる曹操。





「―――文若殿はこちらの付け耳の方が似合っています」





と僕は手持ちの10組の猫耳を取り出す。


「―――なっ!?」


「あら、まぁ」


「部屋に行けばまだまだありますよ?」


「そうなの?じゃあ何が一番似合うか、全て付けてみようかしら」


「か、華琳さま~?」


「いえいえ、甘いですね、孟徳殿。猫耳とは着る衣装によっても変わるのですよ」


「そうなの?しかし困ったわね、今から用意しようにも………」


「それも部屋にあります」


「あら、用意がいいわね」


「たしなみです」


「ふふふ」


「ふふふ」


二人して笑いあう隣で、荀イクが身震いしていたのは本人しか知らない。


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