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10話 静かな宴、騒がしい宴









―――――――――――――――




「御免下さい、役小角殿は居られますか?」


僕が店番をしていると文官のような人が訪ねてきた。


「はい。どのようなご用件でしょうか?」


「董卓様が先日のお礼を兼ねて城へご招待したいとのこと」


董卓とは先日、賈駆といた女の子らしい。項蘇が言っていた。


「そうですか。生憎、小角は今、出ています。後で伝えておきますが、何分多忙ですのでお伺いできるかは分かりま……」


「幺戯なら喜んで受けるじゃろうからそう伝えておいてよいぞ」


僕が断ろうとすると横から項蘇が邪魔してきた。


「ちょッ。項蘇、何を言って……」


「幺戯は大の宴会好きじゃからの」


クソッ、この爺は。どこまでも僕の邪魔するつもりか。


「では、そうお伝えしておきます」


と文官は店を出ていった。


「何のつもりですか、項蘇」


「幺戯こそ、堂々たる居留守とはの」


余計なことはしない主義ですから。


「まぁ、観念して行ってこい」










「よお、来てくれな」


張遼が門で出迎えてくれた。


「今日はお招き頂き、アリガトウゴザイマス」


「……?まぁ、準備は出来とるで」


今日は僕一人。郢士は項蘇の店で丁稚奉公中だ。


大広間へ案内される。


「小角、来たで」


大広間には董卓を始め、賈駆、呂布、華雄にその他武官、文官の人が集まっていた。


「小角さん、いらっしゃいませ」


「今日はお招き頂き下さって有難う御座いました」


先ずは董卓に挨拶をする。


今日は豪勢な着物で見るからに豪族の娘という感じだった。


挨拶を適度にして宴は始まった。







「小角、飲んどるか?」


「小角さん、これ美味しいですよ?」


「アンタ、楽しんでる?」


「………食べる?」


各々が話しかけてくる。


まぁ、宴だからしょうがないか。


僕はちびちびとやりながら、宴の空気の中にいる。






「ふぅ」


僕は大広間から外に出て、外の空気を吸う。


「項蘇め、本当に余計な事をしてくれた」


僕は一人ごちりながら宴会から持ってきた徳利を一人傾ける。


「……あのぅ」


「へ?」


一人で飲んでいる僕は後ろから声をかけられ、振り返る。


「もしかして……迷惑、だったでしょうか?」


そこには董卓がいた。


心配そうに僕を見上げていた。


「僕はこういったのは苦手でしてね」


「そうだったんですか……」


目にみえて落胆する董卓。


これで暴君として噂が広まるのだから、世間はよく分からない。


「でも嫌いではないですよ、仲頴殿」


頭を撫でてやる。


丁度よい高さにあるから………。


「へ、へぅ~」


なにやら和むな。


仔猫とか、仔犬とかの感覚に近いな、これ。


「仲頴殿も一献いかがですか?」


僕は徳利をかざす。


「あ、はい。頂きます」


少しの時間、二人で静かにお酒を飲む。


「小角さんは………いえ、なんでもないです」


しばらくすると董卓がそう切り出した。


「仲頴殿は外の事を知っていますか?」


「え?……外の事、ですか?」


「えぇ。………反董卓連合のことです」


「―――」


息を飲むのが聞こえた。


「知っているんですね、やっぱり」


「……はい」


「はぁ。受け入れてるんですね」


こんな可憐な娘が残酷な現実を受け入れている。


逃げ出すことも、泣き寝入りすることもしていない。


でも立ち向かっているわけでもない。


「――まぁ、どちらでも同じことか」


「え?」


「いえ、独り言です」


僕は脇に置いてあった、宴で楽団が使っていた琵琶のような楽器を手にする。


「……弾けるのですか?」


「まぁ、さわり程度ですけど……」


ポロン、と弦を弾く。


「―――――♪」


歌ではなく、それは音。


ポロロン。


「―――――♪♪」


弦が響かす音。喉が振るわす音。


互いに響き合い、干渉し合う。波長が合わさり、一つの歌へと昇華される。


それは哀しく、儚く。


ポロン。


それは美しく、純粋。


「―――♪♪」


周りの宴の喧騒の中でもそれは確固として響く。


いつしか、喧騒は薄れ、皆がその甘美な音に聞き惚れていた。


「綺麗な音色やな」


「誰が弾いているのかしら?」



ある者は盃を片手に、またある者はくつろいだ姿勢で。各々が心地のよい音色に穏やかな時を過ごす。


「――――♪♪――――♪♪♪」


奏でる歌は時に安らかに、時に鋭く、聞く者の脳に直接響かせる。


いつしか辺りは暗くなる。夜の静寂に音は、歌は響く。


空には下弦の月が昇っていた。


「―――♪♪………」


僕は演奏を終えて、琵琶を元の場所に戻す。


後にこの歌は都中に響いていたと言う。


「仲頴殿、時には人を頼るのも良いのですよ。全てを己の内に溜め込んでしまってはいつしか堰が崩壊してしまいます。きっと貴女にも一緒にその責を背負ってくれる人が現れますから………」


「へぅ……」


未だに耳の内に響く残響に心を奪われている董卓にそっと語りかけた。




願わくは、優しき少女に少しの安らぎを………。








とそんなこんなで日は進み、反董卓連合も虎牢関、泗水関という要所を越えて、この洛陽の目前まで迫っている。


えっ?展開が早すぎる?


そりゃ僕が戦に関わりませんから洛陽でのんびりさせてもらいましたよ。


「随分と静かになりましたね」


洛陽の街から兵士がいなくなっていた。


どうやら董卓は洛陽を捨てることにしたようだ。


まぁ、妥当な判断ですね。


呂布に張遼、華雄といった有能な武将を失ってしまったのだ。董卓軍に連合に勝てる見込みは無くなりつつある。


「それもあの娘の天命か……」


なんて嘯く(うそぶく)。


さて僕は散歩でもしますか。戦の最中は仕事があまりないから、暇してるのです。


項蘇は今、虎牢関や泗水関に“仕入れ”に行っている。


……ん、あんな所に兵士が?


「関わるべきか、関わらざるべきか………」


まぁ、暇なので首でも突っ込みますか。


それが駄目でした。まさかあんなことになるなんて…………な~んてねッ。


「やはり仲頴殿でしたか……」


「……へ?……役小角さん」


そこには少数の兵を率いて、董卓と賈駆が居た。


「どうもぉ」


「なんで、アンタが……。さっきの子供といい、兵士はなにやってんのよ」


「どうやら、お急ぎのようですね」


まぁ、すぐそこまで連合軍が来てるからね。


ふむ、何故かな。ここでさらりと行かせてはいけない気がする。


「どちらに行かれるのですか?」


「……アンタには関係ないでしょ」


「――どこに逃げても同じですよ」


「「――ッ!!」」


「連合は貴女たちをどこまでも追いかけて、そして……」


「分かってるわよッ」


ですよね。それでも貴女は董卓を守るために精一杯の悪足掻きをしているのだから。


「それでもボクは月を守る。そのためならどこへでも逃げてみせるんだから」


瞳に決意の光を宿して、そう断言する賈駆。


「――そうはさせないぞッ」


僕ではない。僕の後ろから声がした。


「誰ッ!?」


あぁ。どうしよう、振り返ろうかな?……でも何だか面倒事の予感。振り返らずにこの場から去ってしまおうかな?あぁでもタイミングが難しいな。………う~む。


「お兄ちゃん、早く振り返ってほしいのだ」


「あ、はい。すみません」


先程とは違う少女の声に思わず振り返ってしまう僕。


あ~あ、これだから日和見主義は……。


そこには三人の少女が立っていた。


一人は綺麗な黒髪を靡かせ(なびかせ)、竜の装飾を施した槍を持つ少女。


一人は赤髪に虎の髪飾りを付け、身の丈の倍はある槍を悠々と担ぐ少女。


そして、もう一人は…………。


「おや?誰かと思えば、役小角殿ではありませぬか」


趙雲だった。


「袁、だとッ!?」


黒髪の少女が僕の名前を聞いて驚く。


大方、連合の形式上の総大将、袁紹の血族だと思われたのだろう。


「いえ、袁ではなく役です。役人の“役”と書いてエンですよ、雲長殿」


「何故、私の名を!?」


「綺麗な黒髪にその佇まい、噂に名高い関雲長殿ですよね。そしてそちらは翼徳殿ですかな?」


「そうなのだ。鈴々は張飛なのだ」


おぉ。これで劉備が居たら桃園組コンプリートか?


「星、この者と知り合いなのか?」


「まぁ少し縁があったのだ」


役だけに、と付け加える。


「………。そんなことより、鈴々はあの娘が董卓なのか?」


「うん。多分のあのおっとりした娘の方が董卓なのだ」


「なッ!?ち、違うわよ!ボクが董卓よ」


張飛の言葉に慌てて、自分が董卓だと名乗る賈駆。


「嘘なのだ。お前は何だかドジそうだから違うのだ」


簡単に看破される。


「どうなのだ?」


「はい。私が董卓です」


「ちょっ、月ッ!?」


関羽に問われ、素直に答えた董卓。


「董卓。我らに着いてきて貰おうか。抵抗するなら………」


と得物を構える。


うん?僕は空気?帰れるチャンスでは?


「ところで役小角殿は何故、このような場に?」


趙雲が僕を捉える。


「偶々、ですよ」


「ふふ~ん。偶々、ですか」


顎に手を置き、ニヤリと笑う。


あ、これは悪い顔だ。


僕らの横では何やら関羽が交渉中。


……保護?……助ける?……ご主人様?


話の断片から推測するに、どうやら董卓を保護しに来たということらしいが………。


なんと酔狂なものだろうか?流石は義の王、蜀の大徳と言われる劉備なのか?


我が主に会ってもらおうと関羽が言ったそこに―――。


「その必要はないよ」


桃色の髪に豊満な胸の少女が現れた。


「桃香さま!?何故、このような場所に!?」


「こういうのはやっぱり俺たちが直接会わないといけないと思ってさ」


「ご主人様まで……」


少女に続けて、白い学ランを着た少年が現れた。


あれ?学ラン?


「やはり。大人しく待っていると言った時、来るとは思っていたがな」


と趙雲がうっすらと笑う。


「えぇと、その娘が董卓ちゃん?」


お互い自己紹介をする二人。


どうやら、桃色の髪の少女が劉備。


早くも桃園組コンプリートッ!!次は何をコンプリートするのか?


そして学ランの少年の方は、天の御使い、北郷一刀と名乗った。


ん?日本人?中国の名前ではないような?


どうやら、この二人が蜀の王のようだ。


まぁまだ蜀はないのだけれど……。


そんな最中は話は進んでいく。


うむ。お二人は死んだことにして北郷の待女として側に置くみたいだ。


中々よい策だと思う。


「どうかなされたか、役小角殿?」


「いえ、何でもないですよ?……では、一つ商売といきますか」


久々にキチンと商人しますかね。


「それでしたら良いものがありますよ?」


「え?……えぇと、貴方は?」


唐突に話に参加した僕に劉備は首を傾げた。


うぅん、貴方は犬耳が合うだろう。


「役小角と申します、玄徳殿。通りすがりの商人です」


「役小角、さん?それでいいものってどう言った意味ですか?」


「これですよ……」


と僕が取り出したのは―――。


「メイド服ッ!?」


あ、北郷が反応した。ふむ。やはり彼もここではないところの人なのだろうな。


だってあの服どう見てもポリエステルだよ?


「何でメイド服なんか持ってるんですか?」


「まぁ………偶々、ですよ」

「ご主人様。その、めいど服とは何なんですか?」


「えぇと、侍女の服、かな?」


「はい。作業のしやすさや移動効率を考え、作られたものです。そしてこの意匠は僕が勝手に考えました」


僕は二組のフリルの付いたメイド服を手に持ちながら説明する。


「そして今なら、この猫耳も付いてきます」


僕はお手製猫耳(ぶち猫&黒猫仕様)を取り出す。勿論、付け尻尾も付属です。


「「役小角さん(殿)」」


―――ガシッ!


趙雲と北郷とガッチリ握手する。


「何、馬鹿なことをしてるんですか……」


関羽が呆れた声で言う。


「そんなことより、早くしなければ袁紹たちが来てしまいます」


丁度、関羽の言葉に重なるように……。


「ご主人様ぁ~大変です~」


帽子を被った少女が走ってきた。


「朱里。どうしたの?」


「はぁ、はぁ。袁紹さんと袁術さんが門を突破して宮中に進行してきちゃいました」


「なんだってッ!?」


どうやら袁紹たちがこちらに向かって来たようだ。


「早く二人を陣営に連れていこう。朱里、この二人を天幕まで案内してあげて」


「は、はい」


「俺たちは袁紹の足止めを………」


「それなら僕がやっておきますよ?」


「――え?」


「なので御使い殿は仲穎殿を、お願いしますね」


「え、でも……」


「まぁまぁ。時は金なり、光陰矢のごとし。ここはお任せ下さい」


「何でそこまでしてくれるんですか?」


君が言うかな。お人好しで董卓を助けようとした貴方が。


「うぅん………簡単に言えば仲穎殿の猫耳メイド姿が見たいからですね」


さぁ、早く。と付け加えて僕は袁紹たちの元へと向かう。








「ありゃりゃ。これは噂以上にスゴいですね」


そこでは金ぴかの兵と銀ぴかの兵が争うように進軍していた。


その進軍の巻き沿いを食らい、町が滅茶苦茶だった。


項蘇が居たら、稼ぎ時だと喜んだ、だろうか?


「それはそれとして………」


その中心で金髪のくるくる頭の女性と同じように金髪の長髪の少女が何やら言い争いをしている。


あれがそうか。うわぁー物凄く行きたくねぇ、関わりたくねぇ。


「……そうも言ってられない、世知辛い世の中だ」


僕はその中心へ重い足を向ける。






「ちょっと美羽さん、邪魔をなさらないで下さるかしら?」


「麗羽姉さまこそ、邪魔をしないで下さい」


なんだろう。途中からしか会話の内容を聞いてないけど、物凄く二人が頭の悪いことが分かる。


側に控える三人も止めることはせず、むしろ一人は煽っているな。


「あの、袁本初殿と袁公路殿ですか?」


あまりに見るに堪えないので強引に割り込む。


「なんですの、貴方は?わたくし、今忙しくてよ。後になさい」


金髪くるくるが高飛車にそう言う。


軍の中心部に部外者、しかも見るからに怪しい人間――自分で言うのもなんだが――が入り込んだのにこの対処、胆が据わっているのか、ただの無能か。


後者だろ、これは。


「え、え。貴方、一体どこから入ってきたんですか!?」


取り巻きの一人。比較的常識ありそうなおかっぱの娘が僕の存在に反応した。


「いえ。世にも名高き、名門袁家の方が洛陽に入らしたと聞きまして、少しばかしの歓迎を………」


大きく息を吸い。深呼吸。


アカペラはあまり好きじゃないのですけど。


ここはこの言葉の力を借りますか………。


「俺の歌を聞けぇぇぇ!!!」


―――♪♪♪♪♪―――♪♪――♪――――――♪♪


突然の歌。初めは思いっきりシャウトして辺りに響かせ、気を引かす。


「――――♪♪♪」


喉を振るわせ、声帯を酷使する。


「「―――」」


言い争いをしていた二人も、取り巻きの三人も唖然と僕に注目する。


「―――♪♪。………」


歌い終える僕。


長時間歌ったら、これ喉潰れるな。歌姫ってスゲェな、やっぱり。


「あら、下等な身分にしては中々ですわね」


「うむ。妾の次に上手いかの」


二人はやはり上から物を言う。


「では公路殿もご一緒にいかがですか?」


「何故、妾がそのようなことを……」


プイッとそっぽを向く袁術。


あ、猫耳付けたい。


「それは勿論、洛陽の町に名門袁家が来たことを知らせるためですよ」


「うむ?どういうことじゃ、七乃?」


「美羽さまがここに来たことを美羽さまの甘美な歌声で庶民たちに大々的に教えてあげるんですよ。そうすれば皆さんもろ手をあげて美羽さまを歓迎してくれますよ」


「うむ。そういうことか。それなら、七乃」


「は~い」


と女性はどこからか弦楽器を取り出し弾く。


「では妾の歌を聞くのじゃ」


歌い出す袁術。


うむ。中々に上手いですね。


「きぃ~。美羽さんのくせに生意気ですわ。斗詩、猪々子、わたくしたちも歌いますわよ」


「えぇ!?嫌ですよ、姫。文ちゃんからも言ってあげてよ」


「そうか?なんか楽しそうだしいいんじゃないか?」


袁紹組も歌い出す。


あは。なんか愉しいことになりましたよ。僕も負けられませんよ。








「何なのだ、この状況は………」


董卓たちを自分達の天幕に無事保護し、戻ってきた関羽が見たのは、ある意味惨状。


兵たちが暴れているわけでなく、むしろ大人しく中心を見守っている。


問題はその“中心”だ。


そこでは六人の男女が思い思いに歌っていた。


袁紹にその側近たる顔良、文醜。袁術と張勲。そして………。


「……役、小角殿?」


三者三様。別々の歌を歌っているにも関わらず、それらは一つの歌のように聞こえるのは何故なのだろう。


周りの兵たちは最初こそ戸惑いとしたものの、しばらくするとその歌に乗り、あるものは歌い、またあるものは踊りだしていた。


「愛紗ぁ~。どうしたのだ?」


後から来た張飛は立ち尽くしていた関羽に声をかけ、それにより関羽も意識を戻した。


「いや、あまりの惨状にな……」


「そんなに酷いのか?あのお兄ちゃんは大丈夫かな」


いや、その中心にいるのだが、と心で妹分に答える関羽。


ひょいッと見る張飛。


「にゃにゃ?なんだか楽しそうなのだ。鈴々も混ざりたいのだ」


「いや、それは……」


「おや、雲長殿に翼徳殿。お二人もどうです、ご一緒に?」


僕が二人を誘う。


「いや、我らは………」


「モチロンなのだッ!」


「こ、こら。鈴々ッ!」


関羽が止めるのも聞かずに張飛は中心地に駆けていく。


「あら、関羽さん。貴女もいらっしゃいな。名門袁家と共に歌えるなんて滅多にできないことですわよ。お~ほっほっほっ」


袁紹に引っ張られ、騒ぎの中心地へ連行される。


惨状と言うより、まるで宴だった。





ちなみに張飛はノリノリで歌い、関羽はヤケクソで歌っていた。


関羽たちを呼びに来た北郷たちも喧騒の宴に巻き込まれたことをここに記しておこう。








「ふぅ。中々に楽しかったですね」


僕はあの宴?からこっそりと抜け出し店に戻る途中だった。


「もうそろそろ項蘇も帰ってきますし―――」


―――シュッ!


そんな僕に後ろからいきなり攻撃を仕掛ける者がいた。


「………と言うか誰ですか?」


「なにッ!?避けただとッ」


「そりゃ避けますよ。なんの言われもなく攻撃を受けるほど被虐趣味じゃありませんし……」


「チッ。外史の異物のくせに生意気な」


見ると短髪の少年だった。導士のような格好をしている。


鋭く睨むと拳法の構えをとる。


えっ?導士なのに徒手空拳?


「一応、何故僕を狙っているのですか?」


「異物の分際で余計なことをするからだッ!」


拳法の構えから鋭い鎌のような蹴りが繰り出される。


それを見切り、避ける。


「チッ」


「はぁ~。誰かと聞いて答えてくれますか?」


「これから死ぬものにその必要は、無いッ!」


繰り出された拳を鞘で防ぐ。


持ってて安心、中古の剣ッ!?……なんてね。


「じゃあいいや。今日は気分がいいので―――」


ニヤリと笑う。宵にかかる半月のように。


「―――本気で相手をしてあげますよ、少年Aくん」













「く、くそぉ」


少年は地面に伏しながら悪態を吐く。


「大丈夫ですか、左慈くん」


「……于吉か」


そこにもう一人の少年がいきなり現れる。


「私の白装束でも駄目でしたよ」


「あれで本当に人間なのか?」


「さぁ、分かりませんね。ただ………私たちが手を出すにはまだ早いのかもしれません」


そして少年二人は霧のように消えていった。


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