0話 運命の悪戯
はい、皆様ごきげんよう。目目連です。
そんなわけで(どんなわけで?)幻(?)の処女作『その空を仰ぎ見る者は………』です!!
改めてみるとこれは…………うん、目目連の成長がよく分かるよね、うん。
ではでは、お楽しみいただければ幸いです。
―――――――――――
…………ここは、何処だろう?
何もない、真っ白な世界で僕は思う。
いや、口に出して言ったのだろうか?
意識と言葉が混同しているのだろうか?
いつまで経っても晴れない霞の中で立ち尽くしている僕。
いや、座っている?
それとも寝転んでいる?
仰向け?うつ伏せ?
何もかもが滅茶苦茶で
何もかもが混ぜこぜで
何もかもがあやふやだ。
『――起きたか』
そんな世界の中で僕は話しかけられた。
いや、直接、脳に響く意思か?
まぁ、どちらでも同じことなのかもしれない。
『うむ。まだ意識がハッキリしていないようだな』
いえ、恐らくこれがデフォルトです。
『そうなのか?』
会話が成り立つ。
『うむ。よく解らんが、気分はどうだ?』
いつもの様に、混濁で平淡です。
『やはり、まだ意識が……』
デフォルトです。
『そ、そうなのか?やはり、よく解らんな』
よく、言われます。
『お主、今の状況はどこまで解っておる?』
2から9まで理解してないです。
『1と10はどうしたのだ?』
それは生まれた時に理解してます。
『ん?……まぁよいか。では取りあえず今の状況を説明しようかの。お主は―――――死んだのじゃ』
……………
『やはり、まだ早かったか』
そうですか。
『――は?』
死んだんですか、僕。それは随分、呆気ないですね。
僕は空を仰ぎ見る。
と言ってもここには空どころか上下の感覚すら無いのだけれど………。
恐らく、気分の問題なのだろう。
『お主、あまり慌てておらぬな』
そうですね。
『うむ』
……………
『…………』
そう言えば前後の記憶が無いです。
『死んだ状況の事か?それはな――』
あぁ、いいです、別に。それほど気になりませんし。
『よ、良いのか?』
えぇ、まぁ。
『うむむ。お主と話しておると何だか不安定になるの』
それは言われたことないですね。
思われたことはあると思いますけど。
『何だか話すタイミングを逃してしまったのじゃが、実は本来、お主は死ぬには早いのじゃ』
死ぬには早い、ですか?
『そうなのじゃ。実はワシの手違いで死なせてしまったのじゃ。すまない』
そうですか。別にいいですよ、それぐらい。
『そうじゃろ。怒るのも無理はない。故にワシはお主の魂にこうして詫びをし………っていいのかいッ!!』
うわ。あまり大声はちょっと……。
『う、む。すまない。と言うかワシの聞き間違いか?今、別にいいと言わなかったか?』
えぇ。言ったかどうか分からないですけど。そうは思っています。
『本当によいのか?』
構いません。
『お主、変わっておるな』
それは頻繁に言われます。
『そ、そうか。そう言えばまだ名乗ってなかったな。ワシは世界を創造した神の一柱の1つじゃ』
そうですか。
『そうじゃな。いきなりそのようなことを言われても信じろと言う方が無理じゃな。しかし、周りをよく見ろ。意識と無意識の混濁したこの何もない、そして全てがある世界を………って信じるのかいッ!!!』
大声はちょっと………。
『あぁ、重ねてすまない。と言うかお主、物分かりが良いと言うか、受動的過ぎると言うか。よく信じたの』
嘘なんですか?
『いや、本当のことなのじゃが……』
そうですか。
『うむ。それでこれからの話をしたいとおもうのじゃが、よいかの?』
えぇ。
『本当に調子の狂うやつじゃの。本来なら死した魂は輪廻の廻り(めぐり)に還り(かえり)転生をさせるのじゃが。何せお主は未だ死ぬはずのない魂。早々には転生かなわぬ。本来の死期までこの悠久の果てで待ち続けてもらわねばならぬのじゃ』
そうですか。ではその様にします。
『そうじゃろ。いくら物分かりが良いと言ってもこの何も無い世界で待ち続けることは苦に等しい。じゃからワシは妙案を…………っていいの―――』
大声はちょっと。
『あ、いや。すまない。と言うか、お主物分かりが良いのではなく、関心が無いのではないか?』
そう、ですね。そうかもしれません。
『はぁ。お主、本当に人の子か?』
確か、そうだったはずですけど?
『ワシ言うのもなんじゃが、人とはもう少し………いや、良そう。一応、妙案があるのじゃが聞くか?』
では一応。
『そうか。お主には別の世界へ転生してもらうのじゃ』
別の世界?
『うむ。異世界、別次元、平行世界、パラレルワールド。置き換えはいくらでもできる。元の世界には不可能じゃが別世界にならなんとかなろう。どうじゃ?』
僕は別にここでもいいのですけど……。
『いやいや。そうは言うがお主とてこのような娯楽も変化も無い世界ではつまらなかろう』
何故、そこまで勧めるのですか?
『う。………うむ、隠し事はいかんな。正直に話そう。実を言えばお主をいつまでもここへ匿って(かくまって)はいられるのじゃ。ワシは世界を創造した神。そして世界を統治する神はまた別に居るのじゃ。もしワシが手違いでお主を死なせてしまったと知れたら、ワシの権威は地に落ちてしまうのじゃ』
そうですか。それなら仕方ありませんね。別世界への転生も構いませんよ。
『そうじゃろな。ワシの身勝手な理由で………っていいの……いや、もう驚くことも無いの。本当に良いのだな?』
えぇ。
『そうか。転生するにあって何か要望があれは聞くぞ。それぐらいは可能じゃからな』
そうですか。………別にありませんね。
『無いのか?!いや、何かあるじゃろ。天下無双の力が欲しい、だとか。全知全能の力が欲しい、とか』
………そうですね。強いて挙げるなら
元の僕と同じでお願いします。
『―――は?』
僕が死んだ時と同じ年齢、容姿、基礎能力。あとその世界がどのような所が分からないですけど、僕が元居た世界の事を知っていた程度にその世界の事の知識。あぁ、それと今まで僕がその世界に居た記憶、ぐらいで。
『その世界に居た記憶とは何じゃ?』
僕が同じ年齢で転生した場合。知り合いなどが一切居ないのはおかしいですから。もし、僕がその世界に初めから居たとした場合に起こす行動などの辻褄合わせをして欲しい、と言うことです。
『うむ、解った。お主、中々頭がキレるようじゃの』
いいえ、要領がいいだけですよ。
『ではそれだけで良いのだな?あっちに行ってからではワシは関与出来ぬぞ』
えぇ。
『それなら。……………うむ。準備は整おったぞ。では、新たな人生、大いに楽しむが良い』
そこで僕の意識はまた、白濁の中に沈んでいった。
『うむ。無事に転生出来たようだの。それにしても変わった魂じゃったな』
『あ、あの。すみません!』
『ん?何じゃ?』
『この辺りに彼方創と言う人間の魂が居ませんでしたか?』
『うむ。お主は確か……』
『はい。私は人の創造と管理を司っております』
『そうじゃったな。(彼方創とはワシが今、転生さした魂の名じゃったな)………ワシは先程からここに居るが見てはおらぬぞ』
『そうですか。………それでは私は失礼します』
『ふぅ。一足遅ければバレるところじゃった』
『あぁ、どうしよう、どうしよう。まさか、あの魂がこんなに早く死ぬなんて。予定にはなかったのに。それにしても早く探さなきゃ。もし、“あんなモノ”を創ったて知られたら私は…………うわぁ、ヤバいヤバい』