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Fake to Here   作者:
2/5

お話こよし

 ぼくたちが商店街を出てから約1日が経った頃、

志紀は暢気に純白のベッドの上でくつろいでいた。


「ふぃーん..そらたんまだ眠いのだよぉー。」


 目をこすりながら言う志紀。

お前は昨日もよく寝てた気がするんだが....


「てか、まだ帰ってこないのか..ここの主人は。」


 ぼくたちは憂さんに言われたとおり、

いや..渡された紙のとおり

ある人に会いに来たのだった。

しかしその日は仕事で帰ってこないとのことだったのでぼくたちは一泊させてもらうこととなった。

外観は至って普通の家だったが中はとても広く隠れ家のようだった。


 憂さんから渡された紙にはまず大きな文字で


「ここを訪ねるのだ。」


 という言葉が書かれ、住所が書かれ、

それに付属の封筒が付いていた。

どうやらこの封筒をここの主人に渡すらしい。

封筒の中身が気になったが....


「ん?ん?そらたん何やってるのかなー?覗き見はいけないよー。」


 とか志紀が言うので止めた。

【ほんのちょっと興味があっただけなのに。】

そんなことを言っていた志紀は

今しがたシャドーボクシングを....いやいや冗談。

志紀はそんなことをできるようなやつじゃない。

窓から外を、そこから見える町の景色を眺めていた。

ちょこんと窓に手を掛けて。

ギリギリの高さだった。

そうすると


「そらたんそらたん!誰か来るんだよー。」


 そんな声を聞いてぼくは志紀の頭の上から中庭を覗き見た。

眼に写ったのは帽子を目深に被ったスーツの男。

こちらに向かって歩いてくる。

ということは


「あの人がこの家の主人じゃないか?志紀。」


ぼくが尋ねると


「そうかもねー。でもでもー不審者の可能性も無いわけではないかもねー。」


 気楽な返事が帰ってきた。

ぼくたちはこの家の主人もしくは不審者を

待ち構えるため二階から階段を下って一階へ。

そうするとガチャという音とともに玄関の扉は開かれた。

男はぼくたちがいることに気づくと


「やあ、いらっしゃい。話は憂と凪から聞いているよ。」


 憂さんと凪さんの名前が出たことから一抹の不安を解けた。

この家の主人だということを再確認してぼくは少しほっとした。

話をするためリビングへ。


「えーと君たちとは初めましてだな。話は憂と凪から聞いているよ。空くんに志紀ちゃんだね?」


 どうやら憂さんたちから話は聞いていたようだ。なら話は早い。


「では本題に移りましょう。」


 ぼくがそういうと志紀が


「本題も何もそらたんたちは封筒を届けるだけで一番の目的は話すことなんだよ。」


 そうだったんだ。失態。


「えーとまず自己紹介からいこうか。俺は来栖涼(くるす りょう)。憂や凪とは昔馴染みの仲間だ。仕事はSPをやっている。」


 涼さんか。SPね。

志紀が聞いたことがないというように


「すぺしゃるぽりす?」


 と言った。その解答に涼さんはハハと笑って


「セキュリティポリスだよ。主に要人警護とかをやっていて映画とかにたまに出てくるあれ。」


 的確な説明をくれた。


「あーあーあれね..うんうんわかった。おーけーおーけぃ....。」


 呟く志紀。

だが全くわかっていない模様。

絶対わかってないな。これは。


「あ、もうひとりいるんだけど、どこに行ったかわからないかな?」


 と聞く涼さんに



ああー、

「真冬ちゃんなら「おやすみなさ~い。」って言ってお風呂に行ったよー。」


 と志紀が答えた。

真冬さんは確かにそう言った。


「お風呂で寝ちゃだめでしょ、危ないですよ。」


 とぼくが言うと


「そうなのぉ~?仕方ないなあ~。」


 と言って寝室へ向かった。

うん、それが普通だ。

真冬さん。本名織部真冬(おりべ まふゆ)

彼女を一言で現すと[天然]だ。

ぼくの直感がそう言っている。

まあ、ぼくの直感なんてものは当てにならないのだけれど。

ごくごく稀に当たる。

それが偶然。誰しも偶然や必然はある。


 涼さんも


「真冬は天然だよ。」


 と言っていた。

だけど....怒るとめっちゃ怖いから気をつけろ。とも....。

本当にな。と何度も念を押して。

本当に怖いというように真剣な眼差しで訴えられた。

涼さんとこんな感じの話をしてぼくたちは帰った。

もちろん封筒は渡した。

渡して中身を見たとき涼さんの頬が少し上がったのをぼくは覚えている。

昔のことを思い出してわくわくするような高揚感を抑えるような笑みだった。




「そらたーん。そらたんたちはいったい何をしに来たのかな?」


そう聞く志紀に

「何なんだろうな。話に来たんだよ。きっと。」


ぼくは曖昧な言葉を返した。


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