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Fake to Here   作者:
1/5

過去と現在(いま)

随時感想お待ちしております。


ついった@utuutuyu_utu

〈なあお前は神さまっていると思うか?〉

【空想上いることになってると思うけど?】

〈いやいや違うんだよ。

俺が聞きたいのはそんなことじゃなくて

お前はどう思ってるかってことだよ。〉

【まあもし神さまがいるのなら言いたいことがあるよ。】

〈全くだぜ。〉


 少年たちは誰に言うでもなく自分に言い聞かせるように呟いた。少しの笑みを浮かべながら。


「「生まれてきてごめんなさい(すんません)。」」





 終鈴の鐘が鳴り授業が終わった後ぼくは独りで家路に着く。

ただのどこにでもいる冴えない高校生三雲空(ぼく)は【ただいま....。】と呟いて家に帰る。

商店街からさほど遠くないところにある三階建てアパート。

帰ってくる声は無い。

しかし帰ってくるものはある。

そう虚しさだけだ。

僕は一人暮らし。

彼女ができたら思う存分いちゃいちゃできる。

いぇーい一人暮らし万々歳!などと下らない感傷に浸っていると....。

けして下らなくはないのだけれど。


「そらたんおっかえりー!おつおつだよ!」


 無駄に元気な声が聴こえる。

雰囲気ぶち壊しだなと心の中で意味不明な八つ当たりをかます。

てか日本語の遣い方合ってないだろ....。

とりあえずぼくはそのまま通り過ぎたのだが....。


「ちょっ!?待ってよ!何かないの?」

慌てる少女。


「ごめん。今日はなんか話があるらしいんだ。

そういや志紀、

お前がこんな時間に起きてるなんて珍しいな。」


 そう言い立ち去ろうとするぼくに

「でしょでしょー。

今日はそらたんを待ってたんだよっ。もう。」

 抱きついた。

ぼくの背中に手を回して力を込める。

いつものことなので特に驚いたりはしなかった。


「じゅーでんちゅー。」


 (充電中)らしかった。

長くのびた淡い紫色の髪が僕の頬を撫でた。

くすぐったいな..。

ぼくに電気なんて通っているわけでもないのだけれど。


「よぉし。もういいよ、そらたん。」


 そういって一頻り充電を終えた

琴浦志紀(ことうら しき)(こと同じアパートの住人兼ぼくの相棒)は自分の部屋に帰っていった。

そう思われたのだが....。

おいおいそっちはぼくの部屋だ..。

追いかけ、部屋に入り周りを見渡す。

1LDKの部屋に佇むベッドの上で志紀はすやすやと寝息をたてて眠っていた。

早い。いや速い、か。まあどちらでも変わらないか。


 ベッドとクローゼット、

テーブル本棚それ以外は何もない。

殺風景な部屋。

もちろん台所やトイレなどはあるけれど

ただそこに少女がいるだけで印象はがらりと変わる。

ぼくははあ..とため息を吐き、ベッドの上で眠る少女に毛布を掛けた。


 さて、と....。

気持ちを切り替え部屋を出る。

志紀が寝ているので一応鍵を掛けておこうと思ったがこのアパートには頼れる人達がいるから大丈夫だろう。

あくまで絶対とは言い切れないが。

アパートから20分ほど歩くと大通りに出た。


 ぼくはその大通りの中にある古風な面構えの雑貨屋の前で足を止めた。雑屋LaLaと描かれた看板。


「凪さん、話したいことって何ですか?」


 雑貨を並べている。青年に話しかけた。


「おぉ空くんじゃないか。」


 凪さんは振り返った。

凪さんの体がこちら側に向くと全体像が露になる。

背は高く、顔は整っており眼の位置まで至らない程度の髪は鮮やかな茶に染め上げられている。

優しそうな青年。

いわゆる世間一般では爽やか系イケメンと言うのだろうか。

歳は確か今年で19歳だったかな。

店の名前が描かれたエプロン。

いやエプロンというよりウェイターの人が腰の辺りに巻いているものを身につけていた。

なんとなくで、その辺の知識はぼくには無いからわからない。

後で調べておこう。



「俺も話したいことはあるんだけどそんな重要じゃなくてね。話があるのは憂なんだよ。」


 少し微笑みちょっと待っててね。

と言うと一人の女の人を連れてきた。

目付きは鋭いが、そこまで悪くはなく背中まで伸びる艶やかで長い黒髪を首の辺りで縛っている。

その黒髪とは対称的な白い肌。

世間一般では美人と言うのだろうか。和を感じる。

凪さんと同様店名が描かれたエプロン(こちらは正真正銘のエプロン)を着けている。

しかしフリルの着いたようなエプロンではなかった。残念。


「おぉー空じゃないか。よく来た。褒美をやろう。」


 褒美という形で投擲されたキャンディをぼくはうまく捕捉できずに顔面に当たることとなる。

あう。

棒の付いたキャンディは意外とキャッチしづらい。

いやしづらいとかしやすいとかの問題じゃなく至近距離であれは無理だ。

顔に少しの痛みを感じつつ包みを解いてキャンディを舐める。

グレープだった。

僕の好きな味。まあ何味でも好きなんだけれど。



「ん。」


 と彼女は凪さんにも渡す。

軽くひゅっという音とともに。

それをあたかも普通にキャッチする凪さんはもう慣れたよと言わんばかりにしたり顔をしている。

メロン。憂さんはストロベリー。



 そして――。



暫しの静寂、、、、



 そこにあるのはキャンディの甘い匂い。

【あー…えっとこれは。どういうことなのかな。ひとまずあれなのかな。キャンディを食べ終わるまで待てとか?】

心の中で考える。決断…。



「あのー、憂さん話とはいったい....」


 心配になり尋ねた。


「あぁーごめんごめん、そうだったね。」


 特に悪びれる様子もなく笑って返す。忘れてたのかよ。



そして彼女は言葉を紡ぐ。



「お前に頼みたいことがあるんだ。」







 話は一年ほど前に遡(さかのぼ)る。

ぼくは二人の男女と出逢った。

その日はとても暑く倒れる人もいるぐらいだった。

実際に倒れたのはぼくだったのだが。

ぼくは商店街を歩いていた。


志紀が

「そらたんそらたんっ!!今ちょーアイスがたべたい!」


 なんて言うから来てしまったのだが。頭痛。

【ああーなんか頭がくらくらする…どうしたんだろうぼくは】などと思っていると意識が途絶えた。

目を覚ましたのは見知らぬ部屋。

見知らぬ空間。見渡してもわからない。

どうやらぼくは熱中症で倒れてしまったようだ。

みっともないなあ。とりあえず体を起こそうとすると


「まだ起きない方がいい。」


 と女の人の声がした。

だけど僕は普通に起きた。しかし頭が痛む。


「大丈夫か?」

「まあ、はい。」


その話し声は届いていたようで。


「おっおーいらっしゃい!ようこそ我が家へ!」


 元気に凪さんはやってきて僕に挨拶をした。


「ども。」


 と僕は返したのだが。憂さんは


「凪の家じゃないだろ!お前は一応居候なんだからな」


 とツッコんだ。


「今は居候だけど、居候だけど、いずれは

俺と憂の家に..なブフォッ!!?」


 膝蹴り。鳩尾に膝蹴りをピンポイントで喰らい、床の上に踞っている。


「よくもそんな恥ずかしいことを人前で言えるな!」

 仲睦まじいことこのうえない。


「ゆっ、憂!それよりも、まだ自己紹介してないよ....」


 あ、そういえばと思い出したように凪さんは言った。


「そ、そうだったな。凪が変なこと言うからだぞっ。」


「と、いうことで

レッツ自己紹介ターイム!いぇあ!」


 元気に張り切って言う。

さっきまで床に踞っていたとは思えない。


「・・・・」

「・・・・」


 ぼくたちの反応が無いことを感じてか..


「ん?あれ、みんな気乗りしない感じ?

自己紹介って楽しいものだよ?」


 ドスッ。今度はパンチが鳩尾に。悶絶。わぉ。


「とりあえずこいつはほかっておいて

私達だけで自己紹介を済ませよう。」


「先程も言ったと思うが私の名前は憂。

神河憂(かみかわ ゆう)だ。

雑貨屋をやっている。そしてこいつは凪。

諫早凪(いさはや なぎ)だ。

好きなように呼んでもらって構わない。」

憂さんに凪さん。


「君の名前は....?」


三雲空(みくもそら)です。」


「空か。いい名前じゃないか。」


「うんうん。いい名前だよね。」


 憂さんの言葉に凪さんが合いの手を入れる。

さっきまで踞ってたのに今ではピンピンしてる。


「さあ自己紹介も終わったから仕事に戻ろう!」

「そうだな。」


 と一言。凪さんの意見に賛同する。


「わかってくれた!わかってくれた憂が!」


 凪さんは嬉しそうに言う。

シュッ。風を切る音。

いつのまにか憂さんの拳が凪さんの顔前に。


「お?寸止め?堪えてくれたの?これはもしや愛の証?やったグハッ」



 3度目の鳩尾。踞る。ループトゥループ。

何回同じことを繰り返すのだろうこの人は。




 ふとぼくがそんな過去の夢から醒めた頃にはもう周りは明るくなってきていた。

それにしても熱中症で倒れるとか情けないよなあぼくは。

あの後一応アイスは買っていけたんだけど志紀にアイスよりも帰ってくるのが遅かったことを心配されたんだっけ。


まあ


「そらたんっ!!あいすっ!あいすがおいしすぎるよっ!」


 と言って食べてたから良かったけど。



 さて話は過去から現在へと戻る。

ぼくと志紀は憂さんから頼まれたことをしにある場所へ向かったのであった。

楽しんでいただけたのなら幸いです。

ウェイターさんの巻いているものはソムリエエプロンやギャルソンエプロンというそうです。

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