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第七話:教会、彼の思い出の場所

「……眠いな」


朝日が顔を差す頃、私はいつものように起床した。

昨日は……寝たのはもう夜が明けていたので今日というべきか。

寝るのが遅かったためか、ちょっと気だるさを感じていた。

けれど、朝食を作るのが私の役目。

それはどんなときでもまっとうしなければな。

昨日なんて、特にそうだ。

自ら出かけたのだから…。



そして…レガートに会ったのだ……。



「ふわぁ〜…ウィン、朝食……」


「はいはい。

 もう直ぐに出来るって」


相変わらず、平和そうにあくびをして朝食をねだる親父。

そんなご要望を早く済ませるためテキパキと進めた。

今日のメニューは、木の実炒め。

ここで取れた新鮮な食材で作ったからきっと美味しいだろう。

それを盛り付け、テーブルに並べていく。

そう、4人分……。


「腹減ったぁ〜ウィン、今日は何??」


「…すいません。またお呼ばれにきました」


ほうら、来た。

ちょうどタイミング良くくるスパーロ。

そして後から続いてジャクさん。


「おーおー、良く来た!

 さ、食ってけっ!!」


さも自分が作った口ぶりな親父に呆れる。

もう日常だからつっこむまい……。


こうして朝食は、わいわいがやがやと過ぎていった。




そして、昨日レガートと約束をした正午へと時間は近づいていった。




「親父、ちょっと出かけてくる」


「昼食はどうするんだ?」


「テーブルにもう作ったの置いてあるだろう」


「俺たちのことじゃない、お前の事だ」


「弁当もったから、大丈夫

 じゃ、行ってくるっ」


「…?

 あぁ、気をつけろよー」


「はーい」


そう、親父に伝えてから

私はあの教会へと向かった……。



慎重に足を忍ばせて、教会へと近づいていく。

草陰から、様子を伺うとそこにレガートが居た。

どうやら、本を読んでいるようだ。

私が出てきても気づかなかった。


「…おい、レガート?」


「……」


あれ…反応がない……?


もう少し、近づいてみると理由がわかった。


「……すぅ」


「なんだ…寝ているのか」


椅子に腰掛けた体制で本を読んでいる途中に寝てしまったらしいな。

本を開いたまま、下を向いて寝ていた。

私と同じく、夜更けに出歩いていたんだものな。


私は、隣に腰掛けて寝顔を伺った。

気持ち良さそうによく寝ている。

確かに、ここは日がちょうど良く当たって心地がいい。

昼寝するには最高な場所だな。


そよ風がすぅーと吹く。

私の髪がレガートの頬にかかる。

…すると、その感触に気づいたのか少し動く。


「…うぅ…ん……あれ?」


「起きたか…」


「う、ウィ…ンさん?!来てたんですかっ

 すいません、僕寝てて…」


「かまわないさ

 昨日、遅かったしな…」


寝ぼけから、慌てふためく表情が面白くて

あやうく、ふきだしそうになった。


「…それにしても、さっそく来てくれて嬉しいですよ

 さぁ、中へどうぞ」


「あぁ」


レガートに促されるまま、中へ入った。



教会に入ってすぐは、少し荒れているが

奥の部屋はキチンと整備されていて綺麗だった。

その事を口にだすと、レガートは説明してくれた。


「ここへは、たまに遊びに来るので

 この部屋だけはと片付けや掃除はしたんですよ」


紅茶や茶菓子をだしてくれた後、レガートは続けてこう話した。


「…この教会は、私の家みたいな物でしたので」


「…家?」


「えぇ、十数年くらい前は教会兼孤児院だったんですよ

 それで僕もここに引き取られて成人になるまでシスターに育てられたんです」


「そ、そうなのか…」


「どうしても忘れられなくて…

 だからでしょうね、時々ここへ足を運んでしまうのは」


レガートは遠い目でそのことを語っていた。

壊れて古びた教会に通う理由はそれだったのか。

なんだか、私まで寂しいような感覚になる。


「まぁ、僕が町で孤児院を引き継いだので

 残った子供たちはバラバラにならずにすんだのが幸いでしたが」


「レガートが、今やっているのか?」


「はい。

 やっぱり、自分と身の上が同じ子が寂しさを感じないためにも

 こういう場は残さないとと、大人になって開いたんですよ」


「…そうか。

 優しいんだな。レガートは」


なんとなく、雰囲気的に良いやつだと思ったが

またこいつの話を聞いて更にそう強く思った。


「いいえ、そんな大した事ないですよっ」


恥ずかしそうに、頭をかいてごまかしたレガート。

うん…やっぱり良いやつなんだな。

そう私が思ったとき……。


ぐぅ〜〜


「……あ」


「…お腹、減ったのか?」


「え、えぇ…」


虫の音はレガートで

また、顔を赤くしてそうだと答えた。


そこで、私はお弁当のことを思い出したので差し出して…。


「よかったら、食べるか?」


「えっ?いいんですか…?!」


「あぁ、たくさんあるしな

 分けてやるよ」


「うわ〜ありがとうございます!!」



そんなわけで、私の作ってきたお弁当でお昼にした。

多めにつめておいて正解だったようだ。

レガートは、美味しい美味しいと絶賛しながら勢いよく食べた。

そのがっつきようは、スパーロにも劣らないだろう…な。


「ご馳走様でした!!」


「お粗末様」


「ホント、美味しかったです!

 ウィンさんは料理がうまいんですね!」


「毎日、作っていれば嫌でも上達するさ」


「そうなんですか?

 でも、すごいですよ!」


「…ありがとう」


ちょっと褒めようが大げさだが

これだけ、喜んでくれれば嬉しく思うだろう。



パッポーパッポー


部屋の鳩時計が1時を知らせた。


「あぁ、もうこんな時間なのですね…

 天使の館に戻らないと」


どうやら”天使の館”というのは孤児院の名前らしい。

なんだかレガートらしいネーミングだなと思った。


「それなら、失礼するよ」


「すいません。 

 なんだか、追い出すみたいで」


「かまわない。

 私もそろそろ、もどらないといけないし…」


あまり、家を空けると怪しまれるからな。

人間のレガートと会っていたなんて知れたら大目玉だ。


「それじゃ、お弁当ご馳走様でした。

 できれば…また、食べたいです!」


「はは、わかった

 また持ってくるよ…」


「わぁ〜楽しみにしてます!!

 それじゃ、またっ」


こうして、レガートと別れた。

なんだか今日一日でかなり仲良くなれた気がした…。



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