第三話:再会、日常の朝食
朝が訪れた。
窓から光が差し、小鳥達がさえずっている。
そんな爽やかな朝…のはずだが。
「がぁぁ〜…ひゅ〜…かがぁ〜」
「……はぁ」
この親父のいびきで台無しとなった。
もういつもの事だが、ため息は毎度でる。
うるさくて嫌なので外に出ることにした。
「気持ちいいなぁ…」
心地いい風がふきつける。
やはり、朝はいい。
…ちょっと散歩にでかけてみるか…。
今は翼を使わず、徒歩で出かけることにした。
「…やっぱり、綺麗だな」
昨日来た穴場にたどり着いた。
前にもまして日の反射できらきら輝いて見える。
歩き疲れたので、腰を落とす。
泉はとても澄んでいたので飲んでみた。
「おいしい…」
ここは未だ穢れていないようだな。
身体に染み渡る様な清さだ。
「そうでしょう?ここのお水は絶品ですよね」
「あぁ、とても綺麗で…ってうわぁ?!」
「あ、あぶない!!」
バシャーンッ
「あぁ、落ちてしまいましたねぇ」
「……」
なんでこんな事に…。
急に声がしたから驚いてしまった…。
不覚にも泉に落ちてしまうとは。
「すいません、またご迷惑を…手を貸しましょうか?」
「…いらない」
差し出された手、振り払って自分で立とうとした…が。
「あっ!?」
「あぶないですよっ。無理せず私に捕まってください」
「うぅ…」
水に濡れてしまった為、いつも以上のローブと翼の重さに耐えられず、またよろめいてしまった。
その所をレガートに支えてもらった。
情けない…。
「あはは、結構おっちょこちょいですね」
「わ、悪かったな!」
「あわわ、怒らないでください。
いいじゃないですか?そんな所も可愛いですし」
「か、かか、かかかっ可愛い?!」
「えぇ♪」
な、何てこと言うんだこやつは!!
そんな事さらっという奴、初めて見た…。
「そ、そんな事ない…」
「そうですか?可愛いと思うのですけどね」
「これ以上、言うな!」
言われなれてないせいでもあって、なんだか気恥ずかしい。
第一自分はあまり、女として見られていないからそうは言われない。
「…はい?わかりました。
けど、ずいぶん派手に濡れてしまいましたね」
そう言って、レガートは私に自分の着ていたを上着をかけた。
「!?」
「今は春と言ってもまだ肌寒いですから、風邪を引いてしまっては困りますからね」
うわっと笑ってそういった。
心なしか、身体が温かくなった。
「もっと喋っていたいけど、着替えが先決ですね!
…また、今度会いましょう?」
そう言って、またレガートは自分から姿を消した。
「なんなんだ…いったい…?」
ぎゅっと上着を握り締め、見えなくなるまで見送った。
「くしゅん…とりあえず、帰るか」
やはり、風邪などひいてはいけないと来た道を戻る。
レガートの上着のぬくもりを感じながら…。
家に帰って、誰にも見つからないうちに上着をしまって着替えた。
人間と接触したなんてばれたらただ事じゃすまないからな。
「あぁー…頭いてぇ〜な」
のっそりと親父が起きて来る。
昨日は酔いつぶれるまで飲んでいたらしく頭痛を訴えた。
「自業自得だろう?
まったく…どれだけ酒を飲んだんだ?」
「…うーん、覚えてない!」
「えばるな、馬鹿親父」
「ひっどいなぁ〜お父さんに向かって…」
「近づくな、酒臭い!!」
「ウィ、ウィンちゃんがいじめる〜」
「……」
こんな親父にかまってたら日が暮れてしまう。
もう無視するしかないと思い、泣きまねをする親父を残して朝食の用意をはじめた。
朝食の準備が出来上がると同時に、ひょっこりと現れる人がいた…。
父親と2人暮らしている私だが、その他にも訪問者が現れる。
「ウィンっ飯できたぁ?」
「いつものことだが…なんで毎回来るんだ?」
あたりまえのように家に入ってきて言ったスパーロ。
「だって、親父の飯まずいし…あっ、ウィリーさんおはようございます!」
「おう、はよー」
スパーロと話していると部屋から親父が出てくる。
「なんだぁ?まだ、美味く作れんのか〜あいつは。はははっ」
親父とジャクさんは長と補佐の関係以上に古い友人らしい。
なので気心というか、お互いのことをよく知っている。
けど…それを言うなら、私の親父はどうなる?なんというのかな…?
「自分の事を棚に上げて人の事を言うなんて筋が通ってないぞ」
そうそう、まさにその通り…って、ジャクさん?!…何時の間に来たんだろ?
「うおっ、ジャクか…驚かせるなよ!」
「俺はちゃんとノックをして入ってきた。だから、そう言われる筋合いはないな」
そういったジャクさんは、いつもより砕けた感じで
呆れて言ったが少し楽しそうだっ呆れて言ったが少し楽しそうだった。
「なんだよ、親父も食べに来たのかよ?」
「…こほん、息子に当てられて情けないがその通りだ。
ウィンちゃん、すまないけど私にも食べさせてもらえんだろうか?」
恥ずかしそうにジャクさんは言った。
「いいですよ」
私は快く言った。
ジャクさんには色々おせわになってる。
今更人数が増えたところでたいした事はなかった。
「あー…でも、一人分ないなぁ。“お父さん”は抜きにしないと!」
「ひ、ひど過ぎるぞ!
いくら実の親子だってっ!!」
今度は本気で泣いて言った親父。はっきり言って引いた…。
「そーだぜ?、ウィリーさん可哀想だって」
「じゃ、スパーロが遠慮するか?」
「えっ?!マジ?!」
「ははっ、冗談」
なんだよって感じでスパーロは私を睨んだ。
…だけど、すぐ元の顔に戻った。
「ほら、冗談だって言っただろう?」
ジャクさんは隅で落ち込んでいる親父をフォローしていた。
はぁー…すぐに拗ねるのだから。
「本当ににあげないよ?」
「そ、それだけは勘弁!!」
私が言った言葉にすぐさま反応して、席についた。
「ははっ、やっぱりウィンちゃんの言う事は良く聞くなぁ」
「女房に尻敷かれてる人っぽいですよ」
「まったくだ!」
ジャクさんとスパーロは大声で笑った。
それに続いて親父も「まったくだぁ!」と言って笑った。
恥知らず…。
心の中で思ったが、それは置いといて後2人分の用意にかかった。
メニューは至って簡単なものでチーズトーストを焼き、野菜スープを作っただけである。
それでも、3人は喜んで食した。
「ご馳走様。
いやぁ、ウィンちゃんは作る料理は上手いなぁ」
「いえいえ、お粗末様です」
でも、言われてとても嬉しかった。
「マジ、美味かった!ありがとなっ!!」
スパーロはそう言い残し、この場を去ろうとした…が。
「こらっまちなさい!
食べさせてもらったのだから、皿くらい洗ったらどうだ?」
「えぇーっ!?」
行くところを遮られたうえに厄介事を言われたので嫌そうだった。
「えぇじゃない。手伝って来い!」
「親父だって食ったじゃんか!ズルいぜ!!」
「私は色々とすることがあるのでな。はぁ〜お茶がうまいな」
「ひきょーものっ、自分だけ茶のんでゆっくりしやがって!!!」
毎回、よくやるなと思う。
自分と親父ではやる気すらおきないからな。
この親子の言い合いが耳を通り過ぎる最中、私は皿を洗い場まで運んだ。
人間みたいに定住するわけではない私たちの家には台所などと言う部屋は存在しない。
なので川などで調達してきた水を使う。
外に出てたらいを持っていき、水を汲みあげといた容器で流し込む。
これが、冬先だとかなり大変な思いをする羽目になる。
幸い、今日は日和が良いし春先なので辛くはない。
がたっ
後ろからドアが開く音が聞こえた。
「あれ、スパーロ?」
「俺も手伝う…」
さっきまであんなに嫌そうだったのにな。
いつのまにやら、気が変わったのか?
スパーロは何故かガシャ、ガシャとなんだか割れそうな勢いで洗い出した。
「スパーロッ、あまり乱暴にやるな。皿が割れるだろ?!」
「割れないから、平気だよ!!」
そういわれても説得力がない。
それにしてもなんだか…機嫌が悪い。
ジャクさんに、キツくどやされたのか?
皿洗いは犠牲者(犠牲物?)が出ずにすんだ。
洗い終わるとスパーロは、「自分が持っていってしまうからいい」と言って
さっさと部屋に戻っていってしまった…。
一体何なんだ?
もしかすると私が怒らせることをやったのだろうか?
でも心当たりがなく、いっそう頭を悩ませた。
「あっ、ウィンお姉ちゃん!あそぼー」
「いいだろー」
「…あぁ、うん。いいよ」
「「やったぁ!!」」
子供達に誘われて
別に後はすることもなかった私は子供達の遊び相手になることにした。
…スパーロのことは気にかかるが、まぁ大丈夫だろうと思い
他の子供達が待つであろう場所へ向かった。