表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

第一話:転住、そして出会い

昔々のお話・・・。

あるところに、眩しいほど純白な鳥がいました。

その鳥は『奇跡の鳥』と呼ばれ、時代を渡ることが出来る鳥でした。

ある時、その鳥は一人の少女と出会った。

鳥はその少女に一目惚れをしました。

けれど、所詮は人間と鳥…結ばれる事などできません。

鳥は悲しみました。

そして、心から神へ祈ったそうです。


『どうかお願いです…。

 人間にならせてください…他は何も望みません。』


そんな一途な願いは、神様に届き叶えてくれたそうです。

翼は残したものの、人間の姿に変えてくれたました。

こうして少女に思いが届き、結ばれることも出来ましたとさ…。





「…めでたし、めでたし。」


「わぁ〜良かったねぇ!」


「すてき〜」


「おれ、かんどーしたっ!!」


「ちょっとー鼻たらさないでよ!」


私がお話を読み終えると

子供らは、それぞれ感想をもらした。


今、私が話したのが私たちの先祖の話を絵本にした物。

そう…私たち、有翼族ゆうよくぞくはさっき話したとおりに人と鳥が交じり合ってできた者。

人間の姿をし、背中には鳥の翼をはやした人間でも鳥でもない中間の存在。

違った存在故にひっそり山奥に住むようにしている。

定期的にばれないよう、移動もしたりしている。


「ウィンお姉ちゃん、ごほんよんでくれてありがとう!」


「たのしかったよ!また、よんでね」


「あぁ、いいよ?また今度」


やった〜と元気に跳ねて喜ぶ。

まったく…子供は無邪気でいいね。

そんな事を思いながら、子供たちを眺めていた。


「おぉい!ウィ〜ン!!!」


空の上から大きな声で呼ばれる。

見上げると、そこには…


「あっ!スゥ兄ちゃんだぁ」


「な、なっ?しごとおわったの??

 これから、あそべる?」


「だめだめ、一度家に帰ってからな?」


「じゃーおうちできたんだね!!」


「おう、完成したぞ?

 だから一度もどんなさい」


「「「はぁ〜い」」」


子供たちは素直に聞いて、家のあるところへ翼をはためかせ飛んでいった。


「お疲れ、スパーロ。

 ずいぶん、早かったな?」


「まぁな。早くやんないと日が暮れるからって急いでやったんだよ」


ふぅとため息をついて、スパーロは腰掛けた。


「…今日はまじめに働いたんだな?」


「そりゃーたまにはやるさ!」


「そーか…明日は雷雨になるかもな」


「し、失礼だな!ウィンは!!」


「あははっ、いいじゃないか。珍しいのは本当のことだろう?」


「確かにいつもやんねぇーけど…」


「ほら見ろ。だから、そう言われるんだ。」


こいつは、サボり癖あるからな。

今日みたいに疲れるまでやるだなんて滅多にない。

幼い頃から一緒にいるが、昔も今も変わるところはなかった。


「ウィンも疲れただろ?子供相手もさ。」


「いや、なかなか楽しいから大丈夫だ。

 それにしても、結構この話はよがられるよな」


「ん?…あぁ、この話かぁ〜そりゃ、綺麗にまとまってるからな。」


スパーロはそう言って、絵本を開いた。


「『想いが届いて』ねぇ〜…夢のある話だわ」


「確かに…でも絵本だからな。

 ”本当”の事なんて書けやしないさ。

 あんなこと…なんてね」



そう…所詮、子供向けに作られた絵本。

本当の、真実は…


「…なんで、私たちは生まれてしまったんだろうな?」


「さぁな…。

 これもまた、運命ってやつなんじゃねぇの?」


「そうだな。」


こんな答えを問いても意味ないことなんてわかってる。

私たちは、ただ…世界に存在するだけなんだから…。


「どーする?俺らもそろそろ、帰る??」


「…いや、ちょっと出かけてくる。

 行く途中で綺麗な泉を見つけたんだ。

 そこに言って、食料になりそうな物があるか見てくる。」


「それなら、俺もいくけど?」


「いや、いいよ。

 スパーロは珍しく仕事したんだ。

 疲れてるだろうから、先かえって休んでいろ」


そう言って、ローブを手に持ち

翼をひらいて飛び立つ。

一気に…空高く。




「…少しは、俺に頼れよ」



そのスパーロの声は、私に届かなかった。


目的地の泉までは、それほど時間はかからない。

さっと地に降り立ち、ローブを羽織る。

…翼さえ隠せば、私たちも普通の人間と見分けがつかない。


「(それだけなのにな…)」


そんな思いにふけってる時間なんて、あまりない。

気分転換もそこそこにして、食料探しを始めた。


「やはり…綺麗な泉があると違うな」


そこは、私が見込んだとおり食料になりそうなものがたくさんあった。

泉には淡水魚たちが気持ちよく泳ぎ、あたりにある木々は美味しそうな木の実をつけている。

その周りに生えている草も食べられるものが多い。

ここは、結構な穴場だった。

後で報告しないとな。

…少しだけ、土産に持って帰るか…。


「(さて、そろそろ日が沈むし帰るか)」



リーンゴーン


リーンゴーーン



「鐘の音…?」


近くに教会でもあるのか?

…いや、ここは山奥で町からかなり離れた所。

そんなところに人が住んでいるとも訪れるとも思えない。

それに空にいた時は見えなかった。



リーンゴーン



でも、確かに聞こえる。

鐘の音が…。

私の足は迷わず音が聞こえる場所へ向く。

何故かその音色がとても心に響いたから…。




鐘の音が聞こえた場所に着くまで、それほど時間がかからなかった。

私が予想していた通り、教会はそこにあった。

木に囲まれて、隠されたように存在する教会。

古びてはいるが鐘が鳴っているということは誰か居るのだろうか?

本来ならば、人間がいる場所へ自ら赴くのは危険な事…。

それでも私の手は教会の扉に手をかけた。


キィィー…ッ


高い音を立てて扉は開く。

最初に目に入ったのは夕日に照らされて輝くステンドグラス。

少々欠けてはいたが、それが気にならないくらい綺麗だった…。

見入っていた私は、しばらく立ち尽くしていた。


そんな時だった…。

扉から、突風が吹き込んできた。

被っていたローブが宙に舞う。


「あっ…」


偶然にも取れてしまったローブ。

隠された翼がひらく。


ガタンッ


教会の奥の扉が開く。

出てきたのは金髪の青年。

私は油断をしていたせいか心臓が止まりそうなくらいドキッとした。

まさか、こんな…思わない事態になるなんて…。

人間に私の翼が見られようとは。


「あなたはっ?!」


「っ…!?」


やばいっ…。

そう思った私は翼をひらき飛び立とうとした。



「やっと見つけた…天使様、待ってください!」


「えっ!?…うわぁっ!!」


ドサッ


予想外の私への呼びかけに

じゅうたんに足を滑らせて転んだ…。

我ながら、情けない…。


「だ、大丈夫ですかっ天使様?」


私が転んだのを見て、慌てて駆け寄ってきた。

顔から見事に転んだ私は顔をおさえて、起き上がった。


「す、すいません。僕が声をかけたばっかりに…」


「い、いや…」


何なのだろう?この人間は…??

普通は驚き逃げるか、捕まえようと追ってくるかしかない。

なのにこの人間は私のことを天使様だとか呼んで

両方の行為どちらもせず、本気で私を心配しているようだった。

正直、拍子抜けして逃げる事も忘れるほど間が抜けた…。


「おでこが赤くなってる…。本当にすいませんっ、天使様にこんな…」


「いや…え、えっと…お前、驚かないのか?」


「えっ?」


「私の背にはこの通り、お前らにはない翼があるのに…」


「驚くわけないじゃないですか。天使様とは前にお会いしたのに」


その言葉に、驚くとともに疑問が芽生えた。

私はこの青年とあった記憶がない。

…というか、生きてきてこの方人間と接触はしたが

一度たりともばれた事はない。


「お前に…?会った覚えはないが」


「えぇ!忘れちゃったんですか?!

 ぼ、僕ですよ!レガート=アクセントです!!」


「ぜんぜん、覚えないけど…」


「がーん!!ショックですよっっ」


効果音まで口に言ったレガート?はかなりのオーバーリアクションだった。

そんな事を言われても、知らないものは知らないし…。

なんだか、かなり落ち込んだ様子だった。

悪くないはずの私が罪悪感を覚えるほどに…。


「そ、そんな落ち込むなよ。人違いだろう?」 


「いえ、絶対間違いありません!!

 だって……」


勢いで行っていたレガートが急に黙った。


「だって…ってどうしたんだよ?」


「なんでもありません…。

 ともかく、あなたと昔…10年前会ったんだ…確かに」


最後のほうは、聞こえないくらい小さな声で話した。

さっきの落ち込んだ顔とは変わり、かなり悲しんでいる顔つきになった。


10年前…そうすると私が2つの時の話になる。

その時は、この大陸にも居なかった頃。

事実だとするには、到底無理な話だ。

そんな強く力説されても困るもの…。


「いや…本当に違うと思うぞ?」


「あぁ、そうか!

 10年前ですから、きっと忘れているんですね!!」


「えぇっ??」


「しょうがないですよね。よく考えてみたら!」


「あの、ちょっ――」


「今日は…遅いですから、また会えますよね!

 もう一度この場所に来てくれたということは。

 きっとたくさんお話をすれば思い出しますよ」


勝手にどんどん話が進められている。

そのペースに押し流されていく。


「もしよければ、明日にでも会いに来てくださいねっ天使様!

 それでは、さようならですっ♪」


バタンッ


また奥の扉に消えていった。


「なんなんだ?いったい…??」


ポツンとまた、教会に一人取り残されてしまった。

まるで嵐が去ったという表現が正しい気がする。


この事は、とりあえず皆には黙っておこう…。

そう思った。




連載は初めてなので、緊張しますが

自分なりに精一杯頑張って書き上げたいと思います!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ