忘却の鎮魂歌 After story:秋
秋だ。秋は良い。陽射しが強すぎないし、寒くもないし、風がひんやりしていて気持ちいい。屋上へ行くにもちょうど良い季節だ。
中学最後の大会も終わり、俺たち3年は部活を引退した。この学園の高等部に進学する生徒は、入学時に行われる試験に向けて――― 一部の例外となる生徒は高校入試に向けて勉強に打ち込む。
そんな中、俺と櫛ヶ谷は屋上通いを続けていた。
「今日も晴れたね・・・」
「んー・・・」
スナック菓子やチョコを適当にかじりつつ、屋上からぼーっと景色を眺める。こうして最終下校時刻ギリギリまで時間を潰すのが、俺たちの日課になっていた。
「チョコ、食うか?」
「ん、食べる」
会話は短く、ほとんど話さない日もある。それでも彼女の傍は居心地が良く、俺にとって大切な場所だった。
時折思い出したかのように歌を口ずさむ彼女の声が、俺の耳に優しく触れる。真っ青な空に歌声が溶けていく。
騒がしい街を眺めていると、この屋上だけ時間の流れが緩やかになっているかのような―――そんな幻想さえ抱く。
・・・だがしかし俺は今、この停滞した時間の流れをぶち抜いてやろうと決めていた。今日こそは、必ず。
「・・・櫛ヶ谷」
「~~♪ん~?」
鼻歌の間に適当に押し込められた返答に、思わず気が抜けた。げふん、と軽く咳払いをして気合を入れ直す。
「あのさぁ・・・」
「な~に~?~~♪」
・・・強敵だ。俺はへこたれずに続ける。
「俺、さ・・・」
「なんなの~?~~♪」
「惚れたかも」
「~~♪何に~?ていうより誰に~?」
「お前に」
「~~♪・・・へ?」
ぷつん、と鳴り続けていた旋律が止む。櫛ヶ谷は何かを確認するように俺をまじまじと見た。
「私・・・?えーと、あ・・・」
停滞した時間が再び流れ出す。古びた戸を開くように軋んだ音を立てて。ゆっくりと―――確実に。
「・・・嬉しい、です」
俺たちは今、終わらない時の輪廻から抜け出す。
いかがでしょうか。なんとも微妙~な終わり方ですがwwこの2人にはこのくらいがちょうど良いかと。
気が向いたらちょこちょこ更新しますのでこれからも宜しくお願いします。