転生
「……で!あぁきも………い子。お前は…………!」
何?なんなの?ええっと確か、私は天寿を全うして…どうなっているの?
だんだん声が、聞こえt「気持ち悪い」
…え?今なんて?
「なんて悍ましいの!?」
…………は?私は王妃であり大聖女よ?本当に私に向けて言ってるの?
「奥様!しっかりなさってください!」
「早く、早くこの怪物を捨てて!」
「…でも…っ!?旦那様…!?」
「…なんだ、これは?闇属性…だと?」
「…っ…はい、そうですね」
「…奥に閉じ込めておけ。名前は…まあ無難にセレーナとしとこう。この公爵家の恥晒しが!」
セレーナ?公爵家?…まさか。
「てん…しぇい…?」
「っひ!?!?呪われるわ!!近寄らないで!!!」
…拝啓、今は亡き田舎のおばあちゃん、おじいちゃん。正確には今は生きているのかもしれないけど。
私は天寿を全うした後に私をいじめたセレーナ公爵令嬢に転生したようです。
んで、私は闇属性だから家族に嫌われているらしいです。時代遅れすぎるでしょ!
…まぁ、でも、田舎の暮らしよりも贅沢な暮らしができそうだね!いくら嫌われているといってもやっぱ公爵令嬢だもんね〜。暖かい家ではないかもしれないけど、贅沢な食べ物やキラキラした服を子供のころから楽しめるだなんて!
と思ってた時期が私にもありました。
でも、私の服はぼろ雑巾のようなごわごわとした布でぐるぐると巻き付けられただけだし、ベッドとかはなく、大きな机の上にただ布団のように藁などが無造作に置かれ、その上に布が置かれているような形だった。田舎の村でさへももっとふかふかとした布のようなものに赤ちゃんをくるんでいたというのに…。ため息をついたって仕方ない。まずは状況整理から始めよう。
いま私はどこか薄暗い塔の中に閉じ込められているようだった。周りには誰もいないが、どうやら別の部屋に二人ほどいるようだ。メイドのものと思われる声が二つほど聞こえる。
「はぁ、本当についてない。公爵家のメイドだなんてみんなに自慢できる職業なのに。まさか闇属性の人の世話をしなければいけないだなんて。この離れの塔もなんかじめじめしてて薄暗いし、気味が悪いわ。お屋敷から少し遠いしわざわざ往復するのも面倒。私たちも呪われてしまったらどうしましょうね」
「冗談でもそんな風に言わないのよ、エレナ。そういうのはただの噂でしょ、う、わ、さ!今時信じている人なんてここイチアナの人々だけよ」
「アリアは外からやってきたから実感はないかもしれないけど、ここでは闇属性の呪い子に関わる人なんて石を投げられても文句は言えないんだから!それにおばあちゃんの世代の人で実際に呪い子に呪われて亡くなった人がたくさんいたの。それで今でもおばあちゃんの世代の人たちはこの手のことに敏感なのよ」
「あら、それならエレナは家に帰ったらたいへんね。でもそんなに気にしなくてもいいと思うわよ。お嬢様が死のうが生きようがこの家は気にしないだろうし。むしろ醜聞をおそれて生かしているのだから、事故や病気で亡くなったほうがお嬢様にとっても公爵家にとっても都合がいいんじゃない?」
「そうね、お嬢様がどうなっても私たちにはあまり関係ないし、気が楽だわ~」
「あのメイド長にいじめられにくいだけ最高の職場よ、この塔は」
メイド2人はどうやらどこかへ行ってしまったようだ。でもいくつかわかったことがある。
・ここはイチアナ
・メイドの名前はエレナとアリア
・エレナは闇属性に偏見はあまりなさそう 別の領地?から来たようだ
・アリアは少し偏見がありそう イチアナに昔からいるようだ
・どちらもセレーナ自身にはあまり興味がない
・公爵家はセレーナの生死はどうでもいい
にしても、イチアナ、か。確かほかの領地とは山と海によってさえぎられていて閉鎖的。国の中でも北のほうにある大きな領地で、不毛な土地もあるが肥沃な土地も多くあり、多くの他領地へ農作物を輸出している。最近急に技術革新がされているためか工業面で大きな影響力がある。
王妃である私、今となっては前世の私は何度か足を運んだことはあるが、基本的に王家とイチアナ公爵家は敵対的だ。理由は稀代の悪女であるセレーナの故郷であるからだ。確か、あの時はすぐにセレーナのことを見捨てたイチアナ公爵家だったが、セレーナ処刑後に莫大な慰謝料を請求してきたのだった。曰く、セドがセレーナと婚約中に私と浮気をしたとか云々だ。でも一応一線は守ってはいたのですぐにその請求を取り下げさせたが。もともと当時のイチアナ公爵の性格には難があったため人望がなく、イチアナ公爵家に味方する家はほとんどいなかった。
結果として王家との仲はあまりよくないままになった。その後確かセレーナの義弟が当時のイチアナ公爵の事故死後に公爵家を継いだはずだ。
さすがに一領地の詳しい情報などは知らないけれど、感覚的には70年ほど前の記憶にしてはよく覚えてるんじゃない?ちなみにここまででうまれてから一週間は過ぎている。どうやらまだ完全には脳が発達できていないせいなのか、少し考えるだけで脳が限界を迎えてしまうのか、いつのまにか寝ているのだ。前世の記憶はあれど結局わたしはただの赤ちゃんでしかないらしい。
それにしても、静かだな。メイドたちは朝昼晩の三回しか来ない。それまではおなかがすこうともトイレに行きたくなっても放置される。恥など捨てて泣こうが喚こうが誰も来ない。まず誰もこの塔にはいないのだろう。しんと静まり返った部屋の中で、時計の秒針の音だけがコチコチと響き渡っていた。
……寂しいなあ。
こんなことを思うのは、久しぶりだった。思えば、前世で本当の意味で一人になったことはなかった。村から離れた時も、おばあちゃんやおじいちゃんから絶えず手紙が来ていた。そのあとすぐにセドたちと友達になったから、寂しさとは縁遠い生活であった。
そういえば、とふと思った。あの時、前世でセレーナを断罪したとき、彼女は叫んでいた。
「ただ、ただ、愛されたかった、それだけなのに…。わたくしにはそれが許されないのですか?神様!」
あの言葉を頭の中で反芻した。ねえ、セレーナ。あなたは寂しかったの?




