罪人
「…っ、?」
ここはどこ?目の前が…真っ暗?くら、い…。あ、暗い。怖い。寂しい。一人?どこ?なんで?暗い、暗い、くらいくらいくらいくらい!!!
「あ、あああああああ!!!」
どこ!?どこなの!?ここは!?殴られるの?蹴られるの?たたかれるの?踏みつけられるの?また一人になったの?あそこに戻ってしまったの!?なんで!?なんで!
「あ、あああ、いや!いや、やめて!やだやだやだ!!誰か、誰か!いないの、誰か、ねえ!!たすけてたすけ…助けて、騎士様!きしさまあああ!!!」
「セレーナ様!落ち着いてください、セレーナ様!」
その声にはっとして我に返る。エルディアだ。ゆらりと、エルディアが持っているろうそくの火が揺れる。目の前には鉄格子があり、どうやらここは牢屋のようなものなのかと理解した。
「息を吸ってください、大きく。…大丈夫です。はいてください。何があったか思い出せますか?」
「私…いえ、わたくし、は、部屋に戻ろうとしていて。そう、エルディア、あなたは…裏切ったのね?そしてわたくしをさらった」
「…はい、そうです。いや、もうこんな状態じゃ敬語を使ってたって意味がないな。そうさ、俺は裏切ったんだ。セドも、国も、父さんも…そして、セレーナ、君もだ」
「なんでこんなことを!」
「詳しくは話すつもりはない。でも君はこれから死ぬことになる。事情は知りたいだろう。簡単に話すと、君が闇属性だからだ」
「…!」
「俺の母さんも闇属性だ。そして今、儀式で母さんは殺されそうになっている!本当は君まで巻き込むつもりはなかったけど。…母さんを助けるにはほかの闇属性の人間が必要だ。闇属性は希少だからね。見つからなかった。でも、君、闇属性なんだろ?」
「…ええ」
「一応調査書からわかってはいたけど、確証はなかった。よかったよ、無駄骨にならなくて」
「…闇属性だからと言って、死んでいい理由にはならないわ」
「ああ、その通りさ。でも、それを君が言うの?」
「え…?何を言って…?」
「前世、セレーナを殺した、君が言うの?」
目が大きく見開かれていくのを感じた。この人は何を言ってるんだ?前世を、知っている?そして魂が入れ替わっているのも知っている?
「あはは、図星?まあいいや。じゃあね、セレーナ。次会うときは、儀式の直前だ。せいぜい残りの人生を楽しむんだな」
「あ…、ま…」
待って、と、そう言いたかったが口がうまく動かない。一瞥をした後、何も言わずにそのままエルディアは消えていった。目の前には、ろうそくだけが残った。
思考がまとまらない。…落ち着け、落ち着け。胸に手を当てると、宝石が手に当たる。そう、大丈夫。落ち着け。
儀式、と言っていた。つまり何かしらの儀式のいけにえということだろうか?それにエルディアの母が選ばれた。理由は闇属性だから。闇属性の人間をささげる儀式…死者蘇生、とか?いや、推測で語るのはやめよう。そしてその儀式が始まることになり、母を救うために代わりの人間を用意した。それが、私。
ははっと思わず笑いがこみあげる。そうだね。そう。私は前世、セレーナを処刑した。でもセレーナに転生して理解した。セレーナは誰にも愛されていなかった。助けてくれた王子様のセドリックの愛を求めた。でもセドリックはミライを愛した。結果ミライを殺そうとし、その容疑で処刑。ただ誰かに愛されたかっただけなのに。それを理解せず、誰からも愛されていたにもかかわらず、ミライはセドリックを好きになった。婚約者がいると知っていながら、その愛さへも求めた。それにより不幸になる少女のことを微塵も考えずに。
じゃあ、これは私への罰なのかもしれない。いや、そうだ。これは罰だ。
ねえ、セレーナ。謝ってすむことじゃないなんて、わかってはいるけれど。あなたはこの世界にいるの?それなら会いたい。あなたは今幸せ?私はこれから死ぬけれど、あなたが幸せであるのなら、もうなんだっていいよ。
だんだん、眠くなってきた。ろうそくの火はゆらりゆらりと、風もないのに揺れている。まるで私の命の灯を見ているようだった。いつまで生きるのだろうか。それもわからないけれど。これが罰だというのなら受け入れよう。私はもう十分前世で幸せな人生を生きさせてもらった。
でも、一つわがままを言えるのなら。あなたに逢いたい。騎士様、あなたに感謝を伝えたかった…。




