信頼の崩壊 後編(side セドリック)
「取り逃がした…!?」
「はい…。一度は捕まえました。しょせんは魔法の検査も教育も受けていない5歳の子供だと油断し、平民用の牢屋に入れた結果、雷を出されて牢屋が壊されました。その後城のほうに逃げたそうですが行方知れずです」
「死者は?!」
「幸いいませんが、2名が重症です」
「すぐに追え!ここには非戦闘員もいる。魔法をまともに習っていない伯爵家という適性が高い子供が持つには、雷は攻撃力が高すぎる。すぐに緊急警報を…!」
「すぐに!」
なんで城に向かったんだ?逃げるならアジトがある下町に行くべきだ。城に何か目的がある?それとも隠し通路?でもあれは王家にのみ伝わる…いや、違う。エルディアがどこまで知っているか不明なのだからすべての可能性を考えるべきだ。
「そういえば、エルディアの父であるヴェルイシはどうなっているのですか、父上?」
「念のため事情は隠して自宅待機させようと思ったが、今日は風邪らしいのでそのまま自宅にいる」
ふむ、と少し考えようとした瞬間、ざわりと室内に風が吹き込んできた。
「非常事態なので無礼をお許しください、殿下、陛下」
そういって出てきたのは普段は絶対に人前に姿を現すことのない影の一人だ。俺がよく頼る影、アレンの父親らしい。まわりは急に現れた黒ずくめの存在にざわりとしたが、父上は特に気にせずただうなずいた。
「私の愚息がエルディアを見つけました」
その言葉にさらにまわりはざわめき立つ。
「やつはセレーナ・イチアナ様をさらって王城から出て行ったそうです。仲間は5人」
「それは本当か!?」
「はい」
「セレーナ…!」
思わず立ち上がって影に近づく。とにかく早く彼女のもとに向かいたくなった。
「落ち着け、セドリック」
「ですが…!」
「影、さらわれたのは令嬢ただ一人か?」
「はい」
「そなたの息子は今も追跡中か?」
「はい」
「わかった…皆の者、今見たこと聞いたことは他言無用だ。とりあえず待機だ。事態が動くまでゆっくり休め」
「父上!?私に向かわせてください!」
「そなたが行って何か変わるのか?」
「それは…」
「そなたも一度休め。まだ5歳なのだ。あとは大人に任せろ。なあに、心配ない。セレーナは絶対に救う」
「…かしこまりました」
何もできない。何も言えない。自分で決めたことさえ守れない。悔しい、悔しい、悔しい!
「殿下」
「君は…イエレア、だっけ?」
「自分は恥ずかしいです。何も教えられていなかったとはいえ、主人から離れるわけにはいかないところで離れてしまった。今日は私一人だけだったのに…!レドとルウの分も私がしっかりしなきゃだったのに…!」
確かセレーナの従者は今イエレア一人だけで、イエレアもエルディアにはめられてそばを離れてしまったそうだ。エルディアがセレーナを部屋まで守ると、そう言われて。
「殿下、行きませんか?」
「え?」
「お嬢様を助けに、行きませんか?」
「でも、父上からは待機してろと」
「お嬢様がさらわれたのにじっとしてなんていれません。それにいつもなら殿下から提案することですよね?いつもは殿下がエルディアさんに提案して、二人で言いつけを破る。だから乗ってくれると思ったんです。私一人の力だと限界がある。でも殿下なら…魔法適性、生まれた時に調べたんですよね?ちなみに私は護衛したいがために無理行って調べてもらいましたが、土でした。潜入のほうが得意ですが、肉弾戦は普通に地の身体能力で得意です」
「俺は…水だ。そもそも危険が伴う。君はいいのか?」
「じゃあ潜入も攻撃も得意な奴じゃないですか!行きましょうよ!それに、私は7歳ですよ?お姉さんなんで大丈夫です!」
そう言って差し伸べられた手を見る。確かに、こういうことはいつもやっていた。いつもならエルディアを誘って二人で。
「それに、話を聞いた感じ本当にエルディアさんが裏切ってるだなんてわからなくないですか?実際にこの目で確かめなきゃ納得できません」
確かにそうだ。実のところ絶対裏切ってるというわけではないし、不可抗力かもしれない。それに、
「もし裏切ってても、友人が道を外れていたら引きずってても戻すもの、か…。よし、行こう!セレーナを、そしてエルディアを救うために!」
「はい!!」
そうと決まれば話は早い。動きやすい服装に着替え、いつもの冒険用バックを携える。どこかに抜け出したり遊びに行ったりしたときに使っているものだ。
さあ、待ってろよ、エルディア、セレーナ。絶対に助ける。絶対に説得する。もう一度みんなで笑うために。
けっこう後から、今の話の方向的に合わないなと思った設定等は編集しなおしているので、どっかのタイミングで読み直してみてください。ここまでちゃんと書くのは初めてだったので、伏線のはり方とかわかってなかったのです。ちょっとこの章が終わったタイミングでもう一度設定等を考え直す予定なのでご了承ください。(m´・ω・`)m ゴメン…




