お姫さまと人形
あるところに、小さなお姫さまがいました。
お姫さまはいつも、お城の奥でひとりぼっちで過ごしていました。
お姫さまはときどき、お城の外に出たい、と願います。
けれども、王さまは決して許しません。
お城の外は、危険なことで溢れているからです。
だからお姫さまには、友だちが一人もいません。
寂しい時は、土で作った人形に話しかけて気をまぎらわしていました。
ある日、お姫さまは土で女の子の人形を作りました。
丁寧に髪をとかし、花を飾り、めいっぱい可愛くしてあげました。
すると、どういうわけか、人形の口が動き出したのでした。
「こんにちは、お姫さま。わたしはあなたの優しい心から生まれました」
お姫さまは、目を丸くしました。
でもすぐに笑顔になって大喜びしました。
二人はまもなく、友だちになりました。
お姫さまは人形のことが大好きで、人形もお姫さまのことが大好きでした。
だから人形は、お城で侵入者を見つけた時、まっさきにお姫さまを守ることを考えました。
わたしがお姫さまのふりをすれば、騙されてくれるかもしれない。少しくらい時間稼ぎができるはずだ、と思いました。
人形はたちまち姿を変え、お姫さまの生き写しになります。
それに気付いた十の影が、一斉に人形を襲います。
人形はひらひらとかわしながら、姫さまに状況を伝えます。
二人には心のつながりがありましたから、姫さまにはきっかり伝わりました。
姫さまはすぐに王さまの元へ駆けつけると、人形を助けてくれと訴えました。
それを聞いた王さまは、
「わかった、すぐに兵を準備しよう」
と言いました。
けれども心の中では、
「これは、あの怪しい人形の忠誠心を確かめる良い機会だ。しばらく様子をみてみよう」
と考えていました。
だから、お姫さまがいくら急かしても、まだ時間がかかる、もう少し待っておくれ、と繰り返すばかりでした。
そのうち、お姫さまが泣き始めました。
人形の声が聞こえないの、と言うのです。
それを聞いた王さまはようやく腰を上げ、兵を連れて人形の元へと向かいました。
お姫さまも、小さな足で懸命に王さまのうしろをついて歩きます。
そうして、やっとのことでその場所についた時、人形はほとんど生き物の形を取ってはいませんでした。
頭と胴体はぼろぼろ。
腕はなくなって、代わりに無数の長い石棘のようなものが生えています。
棘はそれぞれ、黒装束を捕えたり突き抜けたりしていました。
あたりは真っ赤に染まっていて、十一の人影は最初からそういう彫像だったかのように、いびつな形のままぴくりとも動きません。
お姫さまは、泣きくずれました。
「ああ、わたしが助けに来なかったから、この子は絶望して心を失ってしまったんだわ」
王さまは、満足気に笑っていました。
……という夢を見たので、文字に起こしてみました。
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