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貴族なんかになりたくないんですけど!

作者: リュルク

 何かある日、侯爵令息様から一目惚れをされた!



 正直カッコいいし夢のようだし、遊ばれてもいいから付き合いたいって気持ちは思った。



 でもこの方、素晴らしく真面目な方で、私を平民だと言う事で見下したりせずに、



 本当に家に招待されたのであった……




 そして私は言う「恐れながら身分違いなのですが、平気なのでしょうか?」




 しかし両親の侯爵夫婦も優しくて「私は息子を信じているので、それが良いというのならそなたは良い女子なのだろう!」というお母様と、



「ふん、舐めるでない、我が侯爵家は政略結婚などに頼らずとも生き残るのじゃ!」


 などと堂々と宣言するお父様……カッコいい……




「ということだ、エミーよ、君と僕の結婚に障害が無いことが明らかになっただろう!」




 こう宣言されたのが、え?結婚?


 私はこのマルクス様との結婚なんて一切考えていなかったので、一時の素敵な恋愛としか思っていなかったので、困惑したのであった……





「あの……マルクス様、結婚って私とですか?」





「……当たり前ではないか!私は君を愛している、君もそうであろう?そして両親もこの通り問題にしていない、何の問題があると言うのだ!」




 うん、ぐうの音も出ないもっともである。そして私みたいな庶民を騙したところで何の得も無いのだから、きっとこれは本当なのだろう!



 でも、こんな夢のような話を、私は即答できないのであった……





「あの……考えさせてください!」





「何故なんだエミー……」こう困惑しているマルクス様だが、お母様が言う。



「マルクス、落ち着きなさい、女はいきなりの決断なんてなかなかできるものじゃないの!」




「はっはっはーマルクスよ、お前もワシの後を継ぐのであれば、もっとドンと構えんかい!」



 こう仰るのはお父様……




「……分かりました、エミー私は信じているから!」






 こうして私は一旦家に帰ったのだが、どうして、どうして私は即答できなかったのだろうと悩み続けることになったのであった……





 まず侯爵家でいびられて酷い目に合う?あのお父様とお母様でそんなことはまず考えられない。

 お二人共堂々とされていて、そんなセコイ存在では決してない!



 じゃあマルクス様を信用してないの?

 それはありえない、だって私何て妾ですら過分な身分に過ぎず、将来はそんなに考えていなかったが、私は遊ばれてもいいとすら思っていたのだから……


 だからそんな私にあそこまで誠意を尽くしてくれたのだから、本物なのだろう。




 じゃあ何が嫌なのか、もしかして、私がやっていけるか、これが不安なんじゃないだろうか。


 侯爵夫人……うわー無理があるある!


 なるほど分かった!私は私にはとても無理だと思ったから、すぐに即答できなかったんだ!


 これがマルクス様や侯爵家がどうでもいいと思えるのならば、儲け利用してやるぜ!とかなったかもしれないが、侯爵家の方とマルクス様が素晴らしいからこそ、私は躊躇してしまったんだ!



 なるほど納得が行く……


 私のような図々しい卑しい奴がこんなチャンスに飛びつかない理由にもなったわ!


 うんなるほどね!





 ということで、マルクス様にお会いした時に正直に言うことにした!




「あのですね、私はマルクス様と侯爵家が素晴らしいと思うからこそ、私なんかでは侯爵家の妻になれないと思ったのです!」




「ああ、なんだそのことか、確かに多少大変な要素はあるが、僕がフォローをするし、君も僕のことを愛しているのなら、多少は頑張れるはず。父上も母上もフォローするし、すぐにできなくても、僕が継ぐ頃にそれなりに形になっていれば問題無い。不安なのは分かるが安心するといい!」




 ……なるほど、そこまで無茶苦茶な高難度では無いってこと?




「え……でも私右も左も知らない平民ですよ?」




「……貴族のあれこれなんて子供ですら結構簡単に覚えていくものだ、さも素晴らしいように言ってるがな、それは実体を知らないだけか、無能貴族に限って主張しているだけに過ぎない!」




 なるほど……



「というわけだ、これでもう安心だろう?私と結婚できるよね?」




 はい!とはならなかった……



 何故だろう、この漠然とした不安は……



 こういう時、きっと何か私の中にあるのだ……


 だから申し訳ないがもう一度だけ考えさせてほしい!



「ごめんなさい!まだ決めきれないんです!弱い私を許してください!」





「……分かったよ、でも僕を疑ってるとかではないんだよね?」




「そんなことはありません!」




「……ならいいんだ、母上に怒られてしまうからね、急かすことはしないよ……」




 ああ、がっかりさせてしまった……



 でも何故私は即答できないのだろうか……




 もう一度家に帰り自問自答を繰り返すのであった……






 うーんもう1回整理しよう、侯爵家の者は私を歓迎している、少なくてもイビることはまずない。


 だからそこを不安に思う必要は無い。



 マルクス様が信じられないかというと、あれほどの恵まれた方が、私なんかを騙した所で何の得も無いし、実際にデートも私が支払ったことは一度も無いのだから、結婚詐欺的なことはありえない。

 もっとも私も流石に遠慮をして高いものを求めたことは一度も無かったが……


 と言う事で本気で私と一緒になりたいのだろう。

 私は何も考えていなくて、一時楽しければサイコー程度だったと言うのに……



 そして私がきっと恐れていた、侯爵夫人としてやっていけるのか、これについても


 将来はまだしも、少しずつ覚えていけばよく、さらにそれもそこまで難しくないと仰っている……


 本当かしら?マルクス様は物心ついた頃からだから、当たり前すぎて難しさに気づいていないのでは?



 でもあれほどしっかりされたご両親が、問題視していないってことはやはりそういうことなのか。



 もしも私と言うか平民に無理であれば、無理であるって言いそうな方々だったし……


 だから大丈夫ってこと?



 マルクス様が後を継ぐ頃と言ってたので、今日明日なんてことではなく、何年、何なら十年以上先であるのだから、それだけあれば大丈夫ってこと?




 じゃあ不安に思う必要は無いじゃない!



 私は何を躊躇しているのかしら!





 こうして次に侯爵家に呼ばれた時に、自分の考えを堂々と言うことにした!






「この度は私が間抜けなのでお時間を頂き申し訳ありませんでした!」



 まずはこう挨拶して、お父様お母様マルクス様に、自分の考えを述べることにした……





「私は、愚か故に1つずつ考えないと物事を理解することができず、一生懸命考えさせていただきました!」




「いい子じゃない」「うむ聞かせてくれ」こうやって歓迎してくれるご両親……



「まず私は舞台劇の類の見過ぎと思うかもしれませんが、何となくのイメージで、平民では貴族にイビられるみたいなことを思って躊躇したのかと一瞬思いましたが、今も暖かい、侯爵家の方々相手に、そんなことを思うこと自体が間抜けであるとすぐに悟ることができました!」




「まぁ……」何てお母様が嬉しそうな顔をされている……



「わっはっはーあんなのはセコイ雑魚貴族共の話を拡大解釈した創作に過ぎない!」


 お父様は相変わらず豪快である!




「次にマルクス様が信じられないのかと思いましたが、そもそも私のような何も無い平民を、侯爵家の方が騙す意味が無く、さらにずっと紳士的であったマルクス様を疑うことのほうがむしろ論外!それにもハッキリと気づいたのです!」




「……うん私は信じてもらえると思っていたからね!」マルクス様が堂々とした顔をされている……





「そしてマルクス様にはお伝えしたのですが、平民である私が侯爵夫人なんてやっていけるのか?これについても、すぐじゃなくてもマルクス様が継ぐまでに形になればいいということで、本当に私にできるのか?と思ったのですが、侯爵様と侯爵夫人様が問題視していないってことはきっとできることなのだろうと、思うことができました!」




「あら貴女賢いじゃない、それだけ考えられるのなら簡単よ貴族のマナー何て形だけだから」



「……そもそもひ弱な奴こそそんなことを気にする、ワシなんて平気で無視しているが、問題なんか無いぞ!」



「貴方はもう少し気にして下さい!」



「すまん!」




 うん、仲の良い夫婦で素敵である……




「ということで、おこがましいのですが、ご結婚、私は受けようと思います!」





 私がこのように宣言をすると、マルクス様が大喜びで




「やった、これで夫婦になれるんだね!私は嬉しいよ!」



 とお喜びになった。私もそんな様子を見て、えいやーと言って良かったと思う。


 多少勇気は要りましたけどね……





「これからは僕と一緒にこの国をよくしていこう!」



 マルクス様にこう言われて……私は気づいてしまった!




「あ……すみません、だから結婚無理だと思ったのだと思います!」




「え?」



 3人に驚かされてしまったが、素敵な方々なので正直に言うことにした……




「あのですね、私は自分の事しか考えていない平民そのものですから、だから結婚は無理なんだと思ったのだと思います!」





「な……何を言ってるんだ!僕を愛しているのではないのか?」





「ええ……マルクス様は愛しています、でもそれと、貴族として国を思ってみんなのために尽くす、これが私にとって無理なんだと今分かりました!だから恋愛ならば遊ばれててもマルクス様とお付き合いできて嬉しかったのですが、だからこそ結婚に躊躇した、今分かったんです!」



 私は涙が溢れてきた……



 そうなのだ、私とマルクス様では生きている世界が違いすぎた。



 だから恋愛はできても、結婚と言う同じことをする行為が無理だったんだと……





「そんな……」



 マルクス様も絶句する……




 そう私は貴族になれないし、なりたくないんだ!




 さようならマルクス様、今までありがとう……




 そう言って失礼しようとしたら思わぬことを言われたのであった!




「いや貴族もそうは変わらないぞ」



 このように言うのはお父様であった!



「そうね、認めたくはないけどそんなものなのよ」


 お母様もあっさりと言う。




「どういうことですか!?」



 私とそしてマルクス様まで同時に反応したのであった!




「マルクスそなたはまだ若いな、先代陛下の頃の経験が無いからそう思うのも無理ないのかもしれないが」



 こうしてお父様が語り出した……




「先代陛下はお前も歴史で少し習ったと思うが、きっと貴族学校では生々しいから端折られたのだろうな、酷い陛下だった、平民からどれだけ取り立てようが当然と思っていて、貴族に税を重くして酷使するように命じていた」




「それは聞いたことがあります!」




「その時に無能な貴族ほど媚びて王に貢ぐために増税を繰り返して問題になったが、私の父、お前の祖父は違った。もちろん王に逆らうことはできない。貴族は家臣なのだからな!だが、領民のため、いやもっと本音を言おう、自分達のために、取り立てを厳しい振りをして、誤魔化していたのだ」




「自分達のためってどういうことですか?」




「馬鹿が!単純に考えろ!そんな増税をしまくったら領内が成り立たないではないか!そうなったら貴族としても終わりだろうが!」




「そうでした!」




「そして適当に誤魔化していたら、息子である今の陛下が、問題であった父王を引退させたことで、今はまともな国になったから、我々は陛下に忠誠を誓っているのである!」




「つまりどういうことですか?」




「話が見えない奴だ!貴族なんてのは陛下が素晴らしいから従ったほうがいいと思っているだけで、国を良くしたいとかどうでもいいんだ!領民に気を配るのも、貴族として困らないようにするためだ!お前は何も分かっていない甘ちゃんだ!」




「そんな!貴族の誇りは無いのですか?」




「あなたそんな建前を信じているの?このお嬢さんのほうが、ちゃんと現実が見えてるから賢いじゃない、貴方のほうこそ、教育が必要じゃないかしら」



 お母様に指摘されてマルクス様は絶句している……




「誇りで飯は食えない、領民から税を取ることで我々は生きている、そしてその領民が求めるものは、誇りではなく生活だ!それが分からないとは思わなかったぞ!」




「ということで、いいお嬢さんを持ったわね、あなたも真の貴族を理解なさい!」



 何と、ご両親に叱られたのはマルクス様なのであった……






「まぁつまりだ、貴族も平民も、いや簡単に言えば、エミー嬢よ、君達平民は正直に言えば、貴族が見ていない範囲なら平気でサボったりするだろう?」



「……そうですね……」




「同じなのだ、陛下が見ていない範囲ではサボることもあるし、そうでなくても無理難題を言われたらやった振りをする、ようは結構変わらないのだ!」




「認めたくはないけどそういうことなのよ、貴族の実態なんて……だから貴女がビビる必要は無いのよ……」




 何て素敵な両親なのだろうか、こうも飾らない方の家ならば、私もやっていけるかなと思って、


 やはり結婚を決意したのであった……



 そしてむしろ勉強しろと叱られたのはマルクス様なのであった……



 ()()()頑張りましょうね!


 私だって未熟なのだから!

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