第23話:『バッテリー(連携)』の崩壊と『逆転(ゲームセット)』
ガルムが、力を凝縮させた斧を振り抜いた。
俺の『監督(の視点)』によるバフが、ガルムの『ミート』と『パワー伝達率』を限界まで引き上げる。
狙うは、『右』の『防御』ごしに、『左』の『肩』を粉砕す、一点。
ガギィィィィン!!
訓練場で『的』を砕いた時とも、コボルドのリーダーを粉砕した時とも比較にならない、凄まจじい金属音と、骨が砕ける鈍い音が広間に響き渡った。
ガルムの完璧な『ミート』による一撃は、『右の頭』が咄嗟に構えた『防御』の腕を浅く切り裂き――その奥にあった『左の頭』の『肩(利き腕)』を、完璧に『芯』で捉え、粉砕した。
「「GGUUOOOOOOOOOAAAAA!?」」
『双頭の巨人』の二つの頭が、初めて同時に、苦痛に歪んだ絶叫を上げた。
『左の頭』は、だらりと垂れ下がった自らの『腕(利き腕)』を見て恐慌に陥り、『右の頭』は、完璧な『バッテリー(連携)』を組んでいた相棒が破壊されたことに、信じられないという表情で硬直した。
「(やった……!)」
「(……『芯』が……『貫通』した……!)」
ガルムは、強烈な一撃の反動に息を荒げながらも、その手応えに震えていた。
「(ガルムさん……!)
「(ルナリアの『緩急』が……『隙』を作った……!)」
「(リゼッタの『エラー(かく乱)』が……『サイン』を盗んだ……!)」
俺たちの『連携』が、Aランクの『格上』の『連携』を、確かに打ち破った瞬間だった。
「(……アホか。ほんまに『ミット』ごしに『利き腕』狙いよった……!)」
ミーナが、俺の『指示』のあまりの無茶苦茶さと、それを実行したガルムの『一撃』に、呆れたように呟いた。
GUOOOOO!!
我に返った巨人が、残った『右の頭』の指示で、傷ついた『右腕』を無我夢中で振り回す。
だが、その攻撃はもはや『連携』ではない。
相棒を失い、『サイン』を出す相手もいない、単なる『パワー(勘)』任せの『大振り(フルスイング)』だ。
「(……『バッテリー(連携)』が崩壊した!)」
俺の『視点』に映る巨人の『ステータス』は、混乱と恐怖で真っ赤に染まり、その数値は急速に下降していた。
「(もはや『ダブルヘッダー』じゃない……! ただの『コントロール』を失った『パワー投手』だ!)」
俺は、まだ息が上がっているメンバーたちに、最後の『指示』を叫んだ。
「リゼッタ、かく乱! ヤツの『目』を散らせ!」
「ルナリア、『緩急』で『タイミング』を外せ!」
「ガルム、『大振り』は禁止だ! 『ミート』で『芯』だけを狙え!」
「「「おおっ!」」」
絶望は、もうここにはない。
あるのは、『格上』を食う『勝利』への確信だけだ。
「(『視点』全開……! 全員の『エラー(疲労)』を『バフ』で制御する!)」
俺の最後の『力』が、パーティ全体に注ぎ込まれる。
リゼッタが『エラー(予測不能)』な動きで巨人の視界を奪い、ルナリアが『3割(遅い球)』で巨人の『大振り』のタイミングを完璧に狂わせる。
「(今だ!)」
巨人が、ルナリアの『緩急』によって、がら空きの『芯』を晒した。
「ガルム!」
「(言われるまでもねえ!)」
ガルムの斧が、三度、重く澄んだ金属音を響かせ、巨人の『芯』を完璧に捉えた。
カキィィィン!
地響きを立てて崩れ落ちる巨人を背に、俺は震える拳を強く握りしめた。
「…………『勝利』だ」




