表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/40

第22話:『バッテリー(連携)』の『癖(サイン)』

ゴ……ゴ……

『双頭の巨人ダブルヘッダー』が、勝利を確信したように、半壊した俺たちにとどめの一撃を振りかぶる。

リゼッタは腰を抜かし、ガルムは吹き飛ばされた衝撃でまだ動けない。

「(クソ……! これが、『格上(Aランク)』……!)」

ルナリアが絶望に顔をゆがめる。

「(……『右』が『左』を見た。……『サイン』だ!)」

俺は、巨人の『右の頭』の目が、一瞬だけ『左の頭』の目を見たのを『視点アイ』で捉えた。

「(次の攻撃ボールは、リゼッタだ!)」

「リゼッタ、右に跳べ! 『エラー(転倒)』してもいい、全力でだ!」

「えっ!?」

俺の唐突な『指示サイン』に、リゼッタは恐怖で固まったまま、それでも俺の言葉を信じて、無様に右側へ転がった。

直後。

ズドオオオオオン!!

巨人の『左の頭』が振り下ろした棍棒こんぼうが、ついさっきまでリゼッタがいた場所を粉砕した。

「(……よし、読み通りだ!)」

「(なんや、今のは……?)」

砂煙の中から、ミーナが俺の隣に着地する。

「ミーナ! 『防御ガード』を! 時間を稼ぐ!」

「(チッ、無茶苦茶むちゃくちゃ言いやがって……!)」

ミーナは文句を言いつつも、俺の『視点アイ』が何かを掴んだことを察し、即座に『千里眼』と防御結界を展開。巨人の注意ヘイトを自身に集め、一時的に距離を取ることに成功した。

瓦礫がれきの陰。俺たちは束のつかのまの『タイム』を得た。

「(ゲホッ……ゲホッ……な、なんだ、今のは……?)」

ガルムが、ミーナの防御結界に守られながら、痛む脇腹を押さえて立ち上がる。

俺は、荒い息を整えながら、全員に『分析アナライズ』結果を叩きつけた。


「あの巨人は『バッテリー』だ」

「「「は?」」」

「『右の頭』が『捕手キャッチャー』で、『左の頭』が『投手ピッチャー』だ」

俺は、巨人の二つの頭を指差す。

「さっきの攻撃ピッチングで確信した。『右の頭』が『見た(サインを送った)』標的コースを、『左の頭』が忠実に『攻撃(実行)』している」

「(……なるほどな)」

ミーナが、結界を維持しながらうなずいた。

「(『右』が『指示サイン』を出し、『左』が『攻撃(実行)』する。厄介なのは、『右』が『防御キャッチング』も兼ねとることや。こっちの攻撃ボールは、全部あの『右の頭』の腕に『防御ブロック』される)」

「ああ」と俺は続けた。

「バルガスの『データ(スコアブック)』通りだ。奴の『パワー(剛速球)』は、あの完璧な『防御ミット』に阻まれ、がら空きになったところを『ピッチャー』に『攻撃カウンター』された」

「じゃあ、どうするんですか!?」

ルナリアが悲鳴に近い声を上げる。

「『サイン』が読めても、『防御ブロック』を抜けなきゃ……!」

「『サイン』を盗む(読む)んじゃない」

俺は、瓦礫の陰から巨人をにらみつけた。

「――『サイン』を、『偽装フェイク』する」

俺は、震えるリゼッタを見た。

「リゼッタ。お前が『走者ランナー』だ」

「わたしが……?」

「お前の『エラー(予測不能な動き)』で、巨人の『右のキャッチャー』の『視線サイン』を誘導しろ。お前が動けば、『右の頭』は必ずお前を『見る(マークする)』」

次に、ルナリアに向き直る。

「ルナリア。『右の頭』がリゼッタに『サイン』を送った瞬間――つまり、『左の頭』が攻撃ピッチングに入る瞬間に、お前の『緩急チェンジアップ』を『左の頭』に叩き込め」

「(『左』に……!?)」

「ああ。リゼッタ(速いランナー)の動きに合わせていた『ピッチャー』の『タイミング(リリース)』を、お前の『緩急』で狂わせるんだ」

そして、ガルムに尋ねた。

「ガルム、耐えられるか?」

「……ったりめえだ。誰に言ってやがる」

ガルムはアックスを肩に担ぎ、獰猛どうもうに笑った。


「よし」

俺は、最後の『指示オーダー』を出す。

「巨人の『ピッチャー』が、ルナリアの『緩急』で体勢を崩す。その一瞬だけ、『キャッチャー』の『防御ブロック』が、『左』をかばうために甘くなるはずだ」

「――お前は、その『右の頭』の『防御ミット』ごと、その奥にある『左の頭』の『腕(利き腕)』を、『ジャストミート』で粉砕つぶせ!」

三人の顔に、絶望ではない、『覚悟』の色が戻った。

「巨人の『バッテリー(連携)』を、俺たちの『連携スモールベースボール』で壊す!」


俺は叫んだ。

「『プレイボール』だ!」

「(もう限界や!)

ミーナの防御結界が砕け散る。

「リゼッタ、行け!」

「はいっ!」

リゼッタが、今度は恐怖ではなく、『役割オーダー』を胸に巨人の懐へ飛び込む。

「(わたしは『ランナー』! 『エラー(予測不能)』に動いて、『視線サイン』を盗む!)」

リゼッタの予測不能な動きに、巨人の『右の頭』が完全に釣られた。

「(見た!)」

『右の頭』が、『左の頭』に「リゼッタを狙え」と『サイン』を送る。

巨人の『左の頭』が、リゼッタ(速いランナー)に合わせて棍棒こんぼうを振りかぶった。

「ルナリア!」

「(いきます!)」

ルナリアが、完璧な詠唱フォームで「3割(遅い球)」の魔力弾を『左の頭』の顔面に放った。

「(グ!?)」

『左の頭』は、リゼッタの速さに合わせていたため、ルナリアの『緩急チェンジアップ』に対応できず、その一撃をまともに浴び、体勢がわずかに崩れた。

「(よし、崩れた!)」

体勢を崩した『ピッチャー』をかばうため、『キャッチャー』の『防御ブロック』が一瞬、雑になる。

俺は、その瞬間を待っていた。

「ガルム、今だ!」

「(待ってたぜ……!)」

俺のバフが、ガルムの『ミート』と『パワー伝達率』に極振りされる。

「『キャッチャー』の『ミット(腕)』ごと、『ピッチャー』の『リリースポイント』を叩けェ!!」

「オオオオオオッ!!」

ガルムが、コボルドのリーダー(宿題)を粉砕した、あの完璧な『フォーム』で、力を凝縮ぎょうしゅくさせたアックスを振り抜いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ